2-11 待ち焦がれた再会と、一つの恋の結末
エピローグと同時更新しています。こちらが本日の一話目です。
それではどうぞ!
一歩一歩、翔太は階段を上っていく。
――私のとっておきの場所なんだ!誰にも言っちゃダメだよ?
初めてこの階段を上った、小学生の日が思いだされる。
優衣に教えてもらったあの日から、この場所は翔太にとっても特別な場所となった。
階段を上りきると、そこには小さな公園が広がっている。
と言っても遊具などが置かれているわけではない。芝の緑が優しく広がる展望台のようなスペースだ。見下ろすとそこには下町の情緒ある街並みが広がり、遠くには河を望むことが出来る。夕暮れ時ともなれば、川面に夕日が反射しキラキラと光る様子が美しい。
辛い時や苦しい時、翔太はここに来てこの景色を眺めた。何も考えずただ景色を見る。それだけで心が少し安らぐ気がした。優衣が翔太の元を去ってから、何度一人でこの景色を見ただろうか。
そして翔太は背中を見つける。
何年も会っていなかった、それでも決して見間違うことは絶対ない背中を。
「優衣姉……」
夕日に照らされた優衣の顔は、少し大人びた、しかし翔太の知っているものであった。
※
あの日の夜、優衣はスマホを握りしめたまま長い時間葛藤していた。
画面には黒岩から告げられた、翔太の電話番号が映し出されている。しかしその下に表示された電話機のマークをタップする最後の勇気がどうしても出なかった。
一度深呼吸をして、目を閉じる。
瞼の裏に、綾香の真剣な瞳が映った。
(そうだよね……。逃げちゃダメ!)
覚悟を決め、画面を叩く。
数回のコール音の後、聞こえてきたのは不信そうな声。
それでも優衣にとっては、涙が出るほどに懐かしい声だった。
「翔ちゃん……?」
「……っ!?」
電話の向こうで翔太が息を呑む音が聞こえる。
「その……。久しぶり。優衣です」
沈黙。
それは電話であるため、とても長く感じられた。
そして小さな、本当に小さな声が聞こえて来た。
「……優衣姉」
………
……
…
久しぶりの会話は当然ぎこちないものとなった。
話したいことは山ほどある。
しかしそれは電話で伝えられるようなことではない。
ゆえに、優衣が電話で伝えた事はただ一つ。「会いたい」ということであった。
そして二人は再会を果たした。二人の思い出の地で。
二人の家から自転車で行ける距離にある、秘密の展望台。
優衣がこの場所に来るのは母を亡くしたあの日以来だ。
「久しぶり……翔ちゃん。来てくれてありがとう」
明るい声とは裏腹に、優衣の表情は涙を堪えているように見えた。きっと自分も似たような顔をしているのだろう。
そしてその表情は翔太が一番好きなものへと変わる。
「翔ちゃんも高校生か……。制服、似合ってるね」
イタズラっぽい優衣の笑顔。
思わず目を反らし、眼下に広がる景色を眺めるフリをする。夕日が顔を照らしてくれて本当に良かったと翔太は安堵の息を漏らす。
二人は並んでベンチに腰かける。少し大きな正方形のベンチには簡易的な屋根がついており、寛げるスペースとなっている。ここで過ごした時間は、いつの間にか翔太の方が長くなっていた。
「ゴメンね……急に電話して」
言った直後に、「ううん、違う」と優衣は言葉を取り消す。
最初に謝らなければいけないことは、こんなことではない。
「急に出て行って……何も言わずにいなくなって本当にごめんなさい」
頭を下げる優衣。
その姿に翔太が感じたのは、怒りと悲しみと喜びの混じった、今までに経験したことのない感情だった。
「本当だよ……本当に、心配したんだからな」
声に涙が混じる。いや、翔太は泣いていた。
それにつられて優衣も涙を流す。しばし二人は、ただ泣くことしか出来なった。
※
十二分に涙は流した。
その涙が二人の間に出来てしまった小さな壁を流してくれたのかもしれない。「伝えなきゃ」という思いはいつの間にか「聞いて欲しい」へと変わっていた。
「それでね、綾香ちゃんが私の背中を押してくれたの」
なぜ急に翔太に会おうと決心したのか、その経緯を優衣が説明する。
綾香が優衣を訪れたことに驚きを見せた翔太であったが、静かに優衣の話に聞き耳を立てていた。
優衣は語る。翔太の前から去ったあの時、自分に何があったのかを。
「お母さんが死んじゃって……私が家族を守らなきゃって思った。もう大人なんだからって」
「うん」
「でもね?私じゃ力不足だった。お父さんはどんどん怖い顔が増えて、自分を傷つけるみたいに仕事をするようになった。卓也の将来のことを考えると、不安でいっぱいになった」
「……」
「だから私は……逃げたの。『私だってお母さんがいなくなって辛いんだ!』って。……自分のことしか考えてなかったんだ」
「そんなこと……」
翔太の口から出た否定の言葉はとても弱々しかった。
彼は知らなかったのだ。
いつでも自分に笑顔を向けてくれていた“優衣姉”の弱い姿を。
否、知ろうとしなかったのかもしれない。それを自覚した翔太は、己の罪に茫然としていた。
「AV女優になったのは……自分への罰のつもりだった。」
本当に失礼な話だよね、と優衣は自嘲する。
「そのくせ建前だけはしっかり用意してるの。借金を返すため、卓也の学費のため……本当に卑怯だったと思う」
翔太に宛てて書かれた手紙。あれは優衣の心の残骸であった。
身も心も『西園寺あおい』になろうとしていた彼女が最後に守った、優衣としての感情。それは優衣自身を守るものではなく、ただただ翔太に嫌われたくないという願いであった。
「今はね?本当にこの業界に入ってよかったって思ってる。無礼で卑怯で、なんの覚悟もない私を、AVの世界は受け入れてくれた。それどころか、新しい人生を与えてくれた」
太陽が地平線に沈む。
それを見届けると優衣は身体を翔太の方向へと向ける。その動きに翔太も優衣の瞳を見つけた。
「私はちゃんと頑張ってます。心配かけたけど……ちゃんと元気に生きてます。辛い事も多い仕事だけど、毎日楽しく生きています」
しばし翔太は言葉に詰まる。
揺らぎのないその瞳を前に、自分の感情を表す言葉が見つからなかった。
そして彼は気付く。
優衣を待ち続けた自分の時間が、ようやく報われたのだと。
「おかえり……優衣姉」
「……ただいまっ!」
急激に夜へと向かう暗闇の中、その笑顔ははっきりと翔太の瞳に映った。
………
……
…
冬の夕暮れは、あっという間に夜へと変わる。
「どこかに入ろうか?」という翔太の提案に、優衣は首を横に振った。
気温もかなり冷え込んできているが、不思議と寒さを感じなかった。もう少し、この場所に居たかったのだ。
会えない時間が長かった分、会話の種は尽きない。二人は夢中で話した。
――卓也のこと。
「手紙でもいいから、仕事のことは優衣姉の口から教えてやったほうがいいと思う」
翔太の口調は真剣だった。
インターネットを使えば簡単にAVに関する情報が検索出来る時代だ。思春期を迎えた卓也が姉の職業に気付くのも、もはや時間の問題であろう。下手をすれば既に事実を知り、一人で抱え込んでいる可能性すらある。
また自分で気付かなくとも、他の誰か、例えば同級生の誰かが気付いてしまう可能性だってある。何も知らない卓也がそれを他人から知らされた時、どれだけ深く傷つくかを翔太は知っている。
それでも翔太は、それを優衣に手紙で伝えることが出来なかった。
それを書くことで優衣を苦しめるかもしれない。追い詰めるかもしれない。それが怖かったのだ。
「そうだよね……。いつまでも小さいままのイメージだったよ」
優衣は自分の薄情さを恥じた。家を出た時、卓也はまだ小学生だった。
その後、仕事に没頭し『西園寺あおい』として生きていく中で、心の中で笑っている卓也の姿は成長しないままだったのだ。
「お姉ちゃん失格だね。……うん。まずはちゃんと……手紙を書いてみるよ」
卓也に会うのは、翔太に会う以上に怖い。それが本音だった。
まだ小さい弟を自分は見捨てたのだ。恨まれていて当然である。
だからこそまずは手紙で、会ってくれるかを確認しようと優衣は決めた。いきなり卓也の前に姿を現すことは、きっと双方にとって良くないだろうと優衣は考えたのだった。
――優衣の父親のこと。
工場が潰れ、妻を亡くした直後から何かに憑りつかれたかのように仕事に没頭していた優衣の父親であったが、優衣が出て行ってからもそれは変わらなかった。
ある意味では仕事に逃げたのだろう。結局のところ親子で似たようなことをしてしまっていたのだ。
しかし最近は少し、表情に余裕が出てきたように見える。
それは、辛い環境ゆえに卓也が精神的に自立してきたこと。それでも父を見捨てず、父の支えになろうとしていることが大きいと翔太は思う。
「卓也はすげぇよ。年下だけど……俺はあいつを尊敬してる」
そんな翔太の言葉に、優衣は涙した。
弟が立派に成長していく姿を自分は見ることが出来なかったのだ。改めて、自分が捨てたものの大きさを思い知らされる。
――悠斗のこと。
翔太が知る悠斗と、優衣が知る悠斗はまるで別人である。
優衣が知る悠斗は、有名なAV監督の息子にして実力のある脚本家。まだ子供であるために公には出来ないものの、業界を代表する仕事人という印象だ。
なぜ子供がこんな業界に?という疑問はあったものの、黒岩を筆頭に多くのスタッフから『事情があるから内密にしてやってくれ』と言われたために、心に閉まっていたのだ。
「田島先生……そんな辛い思いをしたんだね」
その呼び名は、良い脚本を書く悠斗への敬意を示すと同時に、悠斗が子供であることを第三者に知られないようにするためのカムフラージュでもある。それを聞いたところで、翔太にとっては面白い呼び方であるのだが。
――綾香のこと。
「綾香ちゃん……友達になってくれるかな」
優衣にとって綾香は、『西園寺あおい』という結界を壊してくれた存在である。出来ることならば関係を深めたいと願っていた。
これからはもっと友達を作ろう。『西園寺あおい』として今まで付き合ってきた業界の友人にも、ありのままの自分を知ってもらおう。優衣はそれを望んでいた。
「綾香ちゃんを絶対に放しちゃダメだよ?あんないい子、他にいないんだから!」
高校生の女の子が、見ず知らずの人に会うためにAV女優の事務所に出向く。それがどれだけハードルの高いことか優衣には分かる。
それでも綾香を突き動かしたのは翔太を思う気持ちなのだろう。自然、綾香の恋心に優衣は気付いていた。
「……そうだね」
翔太にとって綾香は大切な友人である。
自分を好いてくれ、自分のために必死になって動いてくれた大切な存在だ。しかしそれでも、翔太の好きな人は今、目の前にいるのだ。
「綾香ちゃんを泣かしたら、承知しないんだから!」と冗談めかす優衣の姿に、翔太は覚悟を決めた。
自分の初恋に蹴りをつけるために。
大切な、そして自分のために奔走してくれた綾香に恥じない男であるために。
「俺が好きなのは……優衣姉だよ」
その声は、まるで夜闇に消えていくかのように感じられた。
「ずっとずっと好きだった。いつから好きなのかも分からないくらいに……ずっと」
想いを告げる時が来るならば、どれほど緊張するだろうかと翔太は想像したことがある。緊張のあまり、言葉なんて出てこないんじゃなかろうかと。
しかし実際は、驚くほど自然に想いが言葉となった。ずっと大事にしてきた想いを伝えるのに必要だったのは、シンプルな言葉であった。
「それはこれからも変わらない。なにがあったとしても……俺は優衣姉が好きだ」
その想いを優衣は静かに受け止める。
驚き、喜び、感謝、そして罪悪感。様々な感情が一瞬にして沸き上がる。
しかし、そこに混乱はなかった。
家族を除けば誰よりも大切な人だからこそ、答えは決まっていたのかもしれない。
「……ごめんなさい」
静かな、それでいて凛とした声であった。
「翔ちゃんは……私にとって大事な弟なんだよ。本当にダメなお姉ちゃんだけど……それでも大切な弟なんだ」
「……うん」
「だから翔ちゃんの気持ちには応えられない。……本当にごめんなさい」
自分の顔に浮かんだ微笑みの理由は、翔太にも一生分からないのだろう。
ただ事実として、翔太は穏やかな笑みを浮かべていた。
「うん。……ありがとう」
………
……
…
「フラれた後に言うのもなんだけどさ……これからも弟でいさせてよ」
階段を下りながら、翔太がおどけたように本心を言う。
せっかく戻った関係が、再びぎこちないものになることには耐えられそうに無かった。そしてその不安はそのまま優衣も感じていた。
「こちらこそだよ。……これからも、こんな私だけど、お姉ちゃんでいさせてね」
駅までの道のりは、決して短いものではない。しかし、二人にとってその時間はあっという間に過ぎていった。
家まで送るという翔太の申し出を、優衣は笑顔で断る。
「翔ちゃんはまだ高校生なんだよ?送ってもらった後、一人で帰すわけにいかないじゃない。それに……私はもう大人のお姉さんなんだから」
この笑顔にはどうしても勝てない。
だからこそ、ずっとこの笑顔を守りたい。
その支えになれるならば、弟も悪くないと翔太は思う。
駅に電車が到着し、扉が開く。
一人、電車に乗る優衣と、それを見送る翔太。互いに喪失感は無かった。
別れの言葉を探していた優衣に、翔太の声が届く。
明るく大きな声だ。
「優衣姉!」
「……?」
「応援してるから!頑張れっ!……頑張れっ!」
ドアが閉まってなお、翔太は声をあげつづけていた。優衣の頬が紅く染まる。それは恥ずかしさから来るものではなかった。
電車は速度を上げ、窓に自分の姿が映る。
「ありがとう……!頑張ってくるねっ!」
ガラスに映る、涙を流した自分に向けた誓いの言葉は、きっと翔太にも届いたことだろう。
※
数日後、いつかの湖の見える公園で会おうと、翔太と綾香は約束した。
待ち合わせ場所までの道のり、綾香はとにかく憂鬱だった。
最後に会った時、勝手なことを言って怒らせてしまった挙句、その後独断で優衣の元に行くという暴挙に出たのだ。一体なんと言って説明すればいいのだろうか。
考えても考えても一向に答えが出ないままに、待ち合わせ場所にたどり着く。翔太はまだ着いていないようだった。
(落ち着け……落ち着け)
深呼吸を繰り返す綾香。その背後から翔太が飛びかかった。
「わっ!」
「うわぁぁあぁっ!」
今までの人生の中で出したことのないような声で綾香は驚く。腰を抜かした綾香を笑いながら見下ろし、翔太は手を差し伸べた。
「ゴメンゴメン!そんなにビックリするとは思ってなかった」
そんな翔太に冗談交じりの怒りを露わにする綾香。緊張で凝り固まった心は、いつの間にかほぐれていた。
………
……
…
「こないだはゴメン」
前回と同じ公園のベンチ。綾香が謝罪の言葉を言おうとするのを制して、翔太が謝った。
「……えっ?」
「せっかく俺のことを想って厳しいことを言ってくれたのに、感情的になってゴメン」
その器の大きさに綾香は感嘆する。
今回の件は百パーセント自分が悪いと綾香は思っている。にも関わらず、その中から自分の気持ちを汲み取ってくれた翔太の優しさが嬉しかった。
「こちらこそ!何も知らないのに勝手なことを言ってゴメンなさい!」
「そんなことないよ。落ち着いて考えてみたら、綾香ちゃんが言ってることが正しいから」
「ううん、そんなことない!」
それからしばらく互いに謝り続ける時間が続き、二人は吹き出した。
「もうお互い謝るのは辞めにしよっか?」
その笑顔の問いかけに、綾香は沈黙する。
優衣に会いに行ったことを、いつまでも隠していていいわけがない。
大きく息を吸い込み、綾香は言葉を吐き出す。
「あのね?……翔太に謝らなきゃいけないことがもう一つあって。……その……」
「ん?優衣姉に会いに行ったこと?」
ニヤリと笑う翔太に、綾香は口をパクパクとさせる。
この表情を見るために、翔太は優衣の会ったことを言っていなかったのだ。
「いやぁビックリしたよ。まさか優衣姉に会いにいっちゃうなんて想像もしてなかった!」
「うぅ……ゴメン」
綾香はいたたまれなかった。
その表情と口調から翔太が怒っていないことは分かる。しかし何を言えばいいのか。綾香は大いにその目を泳がせた。
「怒ってないよ。……いやそうじゃないな」
言葉の途中で翔太は不意に立ち上がった。
呆気にとられる綾香を、翔太は真っすぐに見る。
「おかげで優衣姉に会うことが出来た。ちゃんと顔を見て話をしてきた」
穏やかな声。
一つ翔太は息を継ぐ。
「自分の想いも……ちゃんと伝えた。フラれちゃったけどね」
晴れやかな、しかしまだ雲一つないとは言えない、そんな表情である。
長年の抱えた恋心はけりをつけたからと言って簡単に整理できるものではない。
心をキリキリと締め付ける糸を断ち切るかのように、翔太は少し力を入れた。
「俺にチャンスを作ってくれて……本当にありがとう!」
深々と頭を下げる翔太。
綾香も立ち上がる。
思わず抱きしめそうになる身体を懸命に抑えた。
「勝手なことをしてごめんなさい。でも……優衣さんと会えて、本当に、本当によかったね!」
涙が雨のようにポロポロと流れる。
会うためには勇気が必要だっただろう。それでも二人は再会したのだ。翔太の、そして優衣の頑張りが綾香には嬉しかった。
そんな綾香に翔太はそっとハンカチを差し出す。綾香が泣き止むまでには、しばしの時間が必要であった。
………
……
…
翔太が、優衣と何を話したのかを綾香に告げる。
アルバムのページをめくっていくかのように一つ一つ、優衣と二人で話したことを思い出す。
そして話題はついに、翔太が優衣に告白したことへと移った。
「フラれちゃったよ……それも完璧に。でも、スッキリした」
本心である。
翔太は心の中で自分の初恋に終止符を打ったつもりだった。
もちろん無理はしているが、この痛みは時間が思い出に変えていってくれるだろう。
「翔太は……諦めるの?」
そんな翔太に、予想していなかった言葉が掛けられる。
「いいじゃない。諦められないなら、諦めなければいい。自分が納得するまで優衣さんを追いかければいいじゃない」
下手に慰めているわけでも、無責任に焚きつけているわけでもない。
綾香は真剣であった。
「フラれたからって二度と告白できないわけじゃないんだから」
「そりゃそうかもしれないけど……それを綾香ちゃんが言う?」
思わず本音が口をつく。
自惚れるつもりは毛頭ないが、それでも綾香は自分に告白してくれたのだ。自分を好いてくれているはずの綾香からそんな言葉が出てくるとは思ってもいなかった。
「だって……私も翔太を諦める気、ないもん」
綾香は笑い、宣言する。
翔太は吹き出し、そしてその笑顔から目を反らした。
心拍数が上昇する。
綾香の言葉が、その気持ちが、心から嬉しかった。
でもそれだけでは無い。
優衣とは違う、その“イタズラっぽい笑顔”が、翔太の心の中を満たしていた。
翔太の初恋の結末、こういう形となりました。
今後、翔太が優衣を追いかけ続けるのか、それとも諦めるのか。それは分かりません。
こじれにこじれてしまった二人の関係が、そんなに簡単に決着するとは、どうしても思えなかったのです。
作者が言うのもなんですが、結ばれようと結ばれまいと、二人が幸せになることを祈るばかりです。
さて、今日の後書きのコーナー(そんなコーナーあったっけ?)
今日は、違法アップロードされたAVについて、お話させていただきます。
昨今、パソコンで少し検索すれば、無料でAVが観れてしまう状況となっています。
誰かが勝手にアップロードしたものを、多くの人が対価を払わずに視聴する。
当然、AV業界にお金は落ちません。
これは本当に由々しき問題です。
AV業界に対して正当な対価が払われない以上、AV業界は当然経済的に困窮します。するとどんな問題が起きるか。
まず、作品にかける予算が無くなり、良い作品が作れなくなります。
勿論、低予算であっても、アイデアでカバーする作品もありますが、全ての作品にそれを求めるのは酷です。
また、女優さんに払えるギャラが低くなるため、成り手が少なくなります。
肉体的にも精神的にも負担が大きい仕事なのに、給料が安い。こんな仕事に、誰が就きたいと思うでしょうか。
その結果、失礼な言い方ですが、女優さんの質が低下するでしょう。他に稼げる仕事がいくらでもあるのですから。
しかし、それだけならまだいいです。
女優志望の女性が少なくなった時、AV業界がどのようになってしまうか。
女性を騙し、脅し、無理矢理AVに出演させる。そんな悪徳事務所が増加する可能性が非常に増加します。
女優が少なくなれば、それだけ女優は高く売れる。
ならば、手っ取り早く稼ぐために、AV出演を強要してしまおう。
そんな未来が、容易に想像出来てしまいます。
AVファンの皆さん。
業界を守るため、AV女優さんを守るため、そしてAVを自由に楽しめる今の環境を守るため。
作品はお金を出して買いましょう。
せっかく、18歳以上の『大人』しか買えないというルールがあるのです。
『大人』のマナーを見せましょう。
~追記~
Twitterにて、この問題についての参照リンクをあげておきます。是非、ご一読ください。




