コーヒー味の
kaRanです。初投稿です。
私が体験した恋を元にしているお話です。
共感してくださる方がいればいいなーと思っています
「飴、いる?」
最初に言われたのは、その言葉。
4月。桜は早くも散り始めていた。
入学式が終わり、学校にも少しずつ慣れてきたその日の昼休み、唐突に声をかけられた。
「買ったんだけど食べきれなくてさー、消費手伝ってくれない?」
彼が手にしている飴の袋には、大きく『お得用』と書かれている。
「……なんでお得用なんか買ったの」
「え、ない?無性にお得用買いたくなること」
「ない」
私が言うと、彼はえぇー……と言いながら不満そうな顔をした。
「っていうか……なんで私なの?」
「え、何となく。女子って甘いもの好きじゃん」
そう言うと再び袋をガサガサと漁り始めた。
「……私、甘いの苦手なんだけど」
「え、まじで?!」
女子は皆甘党だと思ってたー、そう言って困ったように袋を漁り始める。
「…………あ」
彼は何かを見つけると、嬉しそうにそれを取り出して、私に渡した。
「コーヒー味!これなら食べられるでしょ?」
「……たぶん」
「やった!じゃあ、コーヒー味全部あげる!」
「え」
『コーヒー』と書かれた飴が、私の机に大量に置かれる。
「ちょ、こんなに……ええと、」
相手の名前を呼ぼうとし、ふと言葉に詰まる。
「俺、八名咲京平!」
私の心を読んだかのような自己紹介。
「お前は、えっと……」
「真波。……真波、絵里子」
覚えた!と得意気に笑う。
無邪気な笑顔が印象的だった。