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6.異世界生活十六日目

七話目です。

ここがR-15の大部分です。

 異世界生活十六日目。

 三日も一緒に行動すれば全員の名前も覚えるし、言語もチートなしで少しわかるようになってきました。

 いやぁ、そうしちゃうと愛着湧いちゃうよね?

 小さい子とか可愛くて可愛くて。


 何が言いたいかと言いますと、絆されました。

 流され人間の私がお別れに泣く子と地頭に勝てるわけがないのです。


「コノちゃんやー! いっしょいるぅ!」とかウサギ耳の双子姉妹に言われてみろよ!

「私も一緒いるー!」って言ってもふもふ抱きしめるしかねぇよ!


 アーテルには盛大に呆れられたがな!

 ウサ耳変化させてずっと耳モフりながら「アーテル可愛い」って言い続けたら機嫌直してくれたけども!

『幼女まで守備範囲なの?』って聞かれた時のあの心境はどうしてくれようか。


 まあ、そんなこんなでリエフさん達に正直に事情を話しました。

 盛大に驚いてくれたけど、それでも私といたい、手伝わせてくれと言われたので最初の街でのお別れはなくなりました。


 人族の人間も奴隷という身の上なのでアーテルに対するわだかまりとかもないようです。

 一番始めに治療したリーチェちゃんなんかは没落貴族の娘らしいので思い当たることもあるらしく、「申し訳ありません」と実体化したアーテルに謝ってました。


 あとウサ耳双子のウットとサットが「コノちゃんはー、アーテルさまの勇者さまなんだねー」ってユニゾンした際のアーテルの反応が非常に可愛かったことを付け加えておきます。


 さて、そんなこんなで街に到着しました。『こうなると思ってたわよ』と嫉妬混じりのアーテルにぶつくさ言われながら七人と奴隷契約をしました。

 そして異世界テンプレな冒険者ギルドで魔物の素材を売ったら、調えられるだけ装備を調えて北へ出発です。


 ちなみに私のものになった奴隷商人の馬車は魔改造して中を快適異空間に変えています。

 時空間属性はやっぱりチートだわ。快適広々空間にみんなきゃっきゃしてるし。

 ここならルフスも感知できないらしいから、アーテルを実体化させて思う存分いちゃいちゃできるし。


「さて、それでは第一回『アーテルを救い隊』会議を始めたいと思います」

『タイトルダサいよ』

「よろしくお願いします」


 私の号令に相変わらずアーテルはジト目で応えてくる。

 リエフさんは生真面目に頭を下げていた。んー、少し堅いなぁ。


 今は私お手製のゴーレムくんに馬車の操縦をさせながら、馬車内の広々異空間リビングでお茶を飲みながらの作戦会議中だ。

 子供組は話についてけないので比較的お姉さんのリーチェちゃんにウットとサット、あと狸獣人の少女・ポポンを任せて大人組と話し合うことにしたのだ。

 題目は奴隷達の今後である。


「正直な話、ついてくるっていうなら戦ってもらうこともあると思う。少なくとも自分の身は守れるようになって欲しい」


 私の提案にリエフさんは頷く。


「もちろん、そのつもりでした。私の爪と牙はもうコノハ様のものですので。なんなりとお使いください」


 堅い、堅いよ、リエフさん。

 あと金色の目を蜂蜜みたいにとろかせて見つめないで。ほら、アーテルの嫉妬がマッハだから。


「わたくしももちろんそのつもりですわ。魔法スキルには少し自信がありますの。お任せくださいな」


 そこそこ優秀な魔法使いだったという人族のマジョルタさんも賛同してくれる。

 彼女は恋人と教会に騙されて奴隷落ちしたらしく、教会ぶっ潰しにもかなり乗り気だった。

 結婚詐欺はあかんよねぇ。


「でもぉ、コノハ様くらいの強さに追いつくのは少し難しいですよねぇ」


 と、お色気を振りまくりまくって話すのは元娼婦らしいロートさん。

 私と一番年が近いみんなのお姉さんである。

 ……私と彼女、どちらが年上かはお互いの為に考えないようにしている。


「ああ、そこは少し考えがあるの」


 私が言うと、みんなが一様に首を傾げる。アーテルも同様にだ。


「私の魔力操作を使って、パワースーツをまとったらどうかなって考えたのよ。自分に身体強化のパワースーツかけた時にはかなりいい動きになったからさ」


 そう、ゴブリンとオーク達との戦いでもこの戦い方が大活躍していたのだ。

 パワースーツ使ってなけりゃ、運動不足のアラサーがあんなに動けるわけないしね。


「なるほど、確かにあの時のコノハ様の戦いぶりは素晴らしいものでした。私達もあのような動きができるようになるのでしょうか」


 リエフさんが私の説明に納得して、目をきらきらさせながら聞いてくる。

 た、多分な! まだ実験してないから何とも言えないけれども!


「是非、今すぐに試させてください!」


 ぐぐっとこっちに身を乗り出してリエフさんは言ってくる。


 正直言って息が荒くてちょっと怖いです。

 ついでに言うと隣のアーテルの笑顔もさっきっから怖いです。


 誰か助けて、切実に!






 ただいまリエフさん大反省中。

「コノハ(ご主人様)に襲いかかろうとするな!」と言った内容でアーテルとマジョルタさんによるダブルお説教が行われ、見てる私も怖かった、がくぶる。


 マジョルタさんが「コノハ様の故郷にある『正座』という座らせ方はとてもいいですわね!」とキラキラした顔で言っていたのが忘れられません。

 私がアーテルからお説教という名の嫉妬を受けているのを見られてたみたいだ。

 ええ、いつも正座でご拝聴しているのですよ、なんてったってアーテルは神ですし。


 リエフさん? 当然足の痺れに悶えてるよ。


「それじゃあ、初めはすごーくうすーくかけるからね」

「わかりましたわ」


 というわけで大人組三人の中で実験台となるのはマジョルタさんに決まりました。

 リエフさんだと腕がちぎれても「素晴らしい効果です!」とか言いそうだし、マジョルタさんは魔法スキルに詳しいからちょうどいいってことになりました。

 今は馬車内の異空間に作った訓練場に場所を移して実験しようとしてるところ。


 私はじーっとマジョルタさんを見て、目に見えないレベルの薄い陽炎っぽい魔力を生み出す。

 そしてそれを粘土のようにマジョルタさんへ変える。

 もちろんこねこねして変える作業は頭の中でするんで、みんなには空気の揺らぎがマジョルタさんに勝手に似ていくように見えるだろう。


 ……ふむ、なかなかいい出来の等身大マジョルタさん型魔力塊(身体強化バージョン)ができあがった。

 では、これを彼女に押しつけてみよう。


「いくわよ?」

「はい」


 若干緊張したマジョルタさんの声。

 私は彼女の体に満ちた魔力で等身大マジョルタさん魔力塊を馴染ませるイメージで彼女へ押しつける。


 そして、それは起こったのだ。


「ふぁああっ!」


 マジョルタさんの悶絶する声。

 そして凍る空間。

「えっえっ、ちょ、何が起きた!」と焦る私に『どういうことなの!』と迫るアーテル。

 上気した顔で自分を抱きしめるマジョルタさんを羨ましそうに見つめるリエフさんとロートさん。


 そう、これがカオスだ!


『カオスだ、じゃないわよ! 何、君ってばアタシがいるのにあの子に媚薬属性の魔力でも押しつけたのかな? ん? 怒らないから神様に教えてみよう? ね?』

「怒ってる怒ってる! 既にリミットブレイク! っつか、首締まってるから! 私も、よく、わかんな……ぐぇ」

「コノハ様! ちょ、アーテル様! コノハ様の顔色が紫に!」


 死んだおばあちゃんが向こう岸に見えた所で私はリエフさんに救助された。

 マジ焦った。実体化アーテル強いな。


 あ、落ち着いたマジョルタさんに聞いた所、慣れるまでは自分のものでない魔力が流れる感覚に戸惑う(ちなみにとても気持ちいいそうだ、言わんでもわかった)けど、慣れたらすごい効果が出そうとのことだった。

 なので、もうああならないように徐々に徐々に魔力を濃くして慣らしていくことになった。




 ……もちろんその夜、実体化したアーテルに再魔力装填しましたよ、ええ。

 しかもちゃーんと空気中の魔力で実体化したあとに私の魔力を込めるという徹底振り。

 うん、神様でも気持ちいいもんは気持ちいいらしい。


『コノハの魔力だからだよ』なーんて悶えるカノジョに言われて我慢できる私ではなく。


 大人の階段とやらをアラサーにして初めて昇らせて頂きました。

 ゴチです。

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