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5.異世界生活十三日目(後編)

六話目。

百合描写増量(当社比)

「あの、これからどうしましょう」


 話をそらす為にも彼女達の為にも聞いてみる。

 できればここで「はい、さようなら」が一番良いのだが彼女達は奴隷の身の上だ。

 商人が亡くなった今、ここで放り出すと最高で元のような奴隷生活、最低だと魔物や盗賊に襲われてバッドエンドだ。

 命を助けたんだし、そんなことにはさせたくない。


 私が尋ねたことに、リエフさんは少し困った顔をした。


「コノハ様、無理を承知でお願いしたい。私達七人を引き取っては頂けないか」


 まあ、そうなるわな。


“アーテルフス”での奴隷の扱いは正にテンプレだ。

 恐らくこの奴隷商のトップっぽい恰幅のいいおっさんが死んじゃったこの状況では、彼女達は主人不在の宙ぶらりん状態となる。

 この状態で賊にでも見つかれば、速攻アウト。十八禁タグ必須の展開となるだろう。

 それならオークとゴブリンの群に颯爽と助太刀に入る強さを持つ、しかも女で獣人の奴隷にも丁寧に接する奴を主人としたいだろう。

 しかも途中の街で別れたとて次に主人となる人間はどんな奴だかわからない。

 いや、獣人のリエフさんは主人が人族な時点である程度の覚悟はいるのかもしれない。

 他の獣人三人は幼女なので覚悟ができているかは不明だ。


「次の街で解放するのはだめなのでしょうか」

「残念ながら我々には自身を買えるほどの金はありません」


 ですよねー。

 うん、わかってた。

 でも……七人かぁ。

 戦えそうにない小さい子が四人もいるし、おまけに人族が三人いるしなぁ。


 ちらりとアーテルを見る。彼女は全て任せると言ったように一度頷いた。


 ……仕方ない。


「とりあえず、遺体をそのままと言うのもよくありませんから。身元のわかるものを持って、まずは埋めてあげませんか」

「あ、そうですね」


 秘技・先延ばし。

 リエフさんはあっさりと騙されてくれよったわ、くくく。


 アーテルが呆れた顔で見てくるけど、気にしたら負けだ!






 長い異世界生活十三日目もそろそろ終わる。

 私は奴隷娘さん達に遺体の埋葬と馬車の掃除を頼み、血の匂いのしない場所で食事の準備だ。

 幸い食料は山と持ってきたので八人で食べても大した損害ではない。

 お皿は土属性の魔力で作るから無料だしね。


『その食事させたら、絶対あの子達離れないって言うわよ』

「え?」


 ハーブや醤油っぽい味のする果物で味付けした謎鳥の肉の串焼きと馬車の食料と猪肉使って豚汁もどきを作っていたら、ジト目でアーテルに言われてしまった。


『その食事、奴隷はまず食べれない水準だから。一般家庭でも無理ね』

「へぇー」


 焼き鳥と豚汁がお貴族級のご飯なんてねぇ。


『予想はついてたけどね、やっぱり先延ばしにしちゃって……食事が終わったらどうするのよ。街に着くまで考えさせてとでも言うの?』

「ぎくり」


 何故、わかるんだ、アーテル。


『だってコノハの性格ってわかりやすいんだもの』


 ぐぬぬ、解せぬ。


『うふふ、ねぇ、コノハ。コノハは獣耳が好きなの?』

「えっ」


 そんなに私、耳を見てたかしらん? と、首を傾げた私の前に立つアーテルは怖いくらいの笑顔だった。


『あと、あのリエフって娘の胸を凝視してたわよね? 大きい方が好き?』

「いや、あれは羨ましいと思ったから見てただけでありまして……」

『コノハはやましいことがあると敬語になるのね』


 おうふ、見破られてやがる。

 じりじり寄ってくるアーテル怖い。


『ねぇ、アタシだってやろうと思えば大きくなれるのよ? 君が魔力塊に細工すれば獣耳だって生えるし』


 ピアスに触れるほどの距離でアーテルが囁く。

 え、マジで?


 私はさっと魔力探知の網を広げる。

 これで何が来ようとすぐわかる大丈夫。

 そして私はアーテルへ魔力を注ぎ込んだ。


『……あれ、変えないの?』


 でも実体化したアーテルはいつも通りの絶壁女子高せ……あ、睨まないでください、すいません。


「いつものアンタが可愛いわよ」


 あああ、恥ずかしい恥ずかしい。

 でも言わないとアーテルがしょんぼり顔しちゃうから正直に言わないと。

 ちょっと恋愛経験一週間な私にはきついですよ!


『恥ずかしい台詞ね』

「言わないでください。しんでしまいます」


 主に恥ずかしさで。


『あんなにかっこよく魔物から人を助けた君がこんなことくらいで死なないでよ』


 くすくす笑ってアーテルは私にくっついてきた。

 うし、機嫌も直ったようだ。


「えぇと……嫉妬するアーテルは怖いけど可愛かったです」

『言わないで、恥ずかしい』


 腰に手を回してやり返すとアーテルの白い肌が桜色に染まる。

 なんかもう全部可愛いわ、この娘。


「アーテル」


 一週間前のアーテルのように私が頬を包んでやると彼女の目が大きく見開いた。

 自分から唇へするのは恥ずかしかったけど、いやもうすっかり悪神様に堕ちた私は今しなきゃいつやるの状態でして。

 ふにふにの少しひんやりした唇を存分に味わってから顔を離すと、アーテルは理解が追いついてないみたいで自分の唇に触れて、それからうっとりと笑みをこぼした。


『早く生身で、君に会いたいな』


 私もって言う代わりにキスで応えたら、アーテルも幸せそうな表情で応えてくれた。


 やっべ、リア充超楽しい。




 そのあとは料理の味見してもらって、美味しいを頂いてから、奴隷娘さん達に振る舞いました。

 アーテルの予想通り、食事に泣いて喜ぶ皆さん。「私達はコノハ様に忠誠を誓います!」って土下座されてしまいました。


 あれ? これ街で解放なんてできなくね?


 とりあえず返事は街に着いてからと先延ばしにして、その日は交代しながら眠りました。

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