4.異世界生活十三日目(前編)
五話目です。
戦闘描写あり。
ここからハーレム要員追加です。
食料とか衣類とかを「四次元ほにゃらら」に突っ込んでそろそろ出発しようか、ってなった異世界生活十三日目。
出発前に森の外を探査していたアーテルが『緊急事態よ』と真剣な顔で言った。
「どしたの?」
『外にゴブリンの集団。しかもオークまでいるわ……どうしてこんなところにオークがいるのよ』
「え、マジで?」
すぐに魔力感知を森の外まで広げる。ここにはアーテルの加護があるから、感知を外に広げるのがちょっと苦労する。
……うん、見知った魔力が結構な数いるね。
「ゴブリン、十五。この大きいの三つがオークかな? ん? このひとかたまりになってる弱いのは?」
『それが人族。正確には人族の奴隷商人七に奴隷が十二。奴隷の内訳は獣人族八に人族四』
「ほぇー、これが」
ついに第一異世界人と遭遇かぁ。
「どうしたらいい?」
『できれば助けてあげて欲しい。魔物はアタシ達のせいだから、人族も獣人族も分け隔てないわ。でもオークとの初戦闘でこの状況はきついだろうし、無理は言わない。とにもかくにも出発は延期ね』
「おー……」
魔力感知から分析へ発展させ私は考える。
んー、これくらいなら問題ないかな。
一番の問題は戦力よりも、状況だよなぁ。
今も一つずつ魔力が減っているのがわかる。
奴隷よりも、商人の減りのが早い。
一番の問題は恐らくグロいだろう現場と十八禁かもしれない状況を見て動揺しないかってことだな。
「ま、なるようになれね。行くだけ行きましょう。無理そうなら逃げる」
『わかった、アタシもコノハに無理して欲しくないし』
「ちなみに獣人族ってのはどんな感じなの?」
『人族より身体能力は高いけど総スキル取得数が少ないせいで人族との戦争に負けたの。おまけにアタシを信奉してる人が多かったから』
「オーケー、把握した」
しゅんとしちゃったアーテルの言葉を遮り、私は身体強化属性の魔力で作ったパワースーツを身にまとい戦いの場へと走った。
もちろん、風属性の魔力や音属性の魔力を操って無音と気配遮断も忘れない。
とりあえず○○属性ってつければ大抵どうにかなっちゃう魔力操作超チートです。
こちら戦闘現場。ただいま魔物達による蹂躙が繰り広げられています。
奴隷が女性ばっかだから魔物達も舌舐めずりしてるわ。
まあ、ゴブリンとオークなんて「ザ・性欲」って感じだもんな。
ふむ、商人達は男だった為か軒並み殺されている。首ぽっきりだわ。
そんでもって私はもう死体であれば何も感じないらしい。肉の塊にしか見えない。
ああ、そう言えば葬式でも泣いたことなかったわ。
ただ今正に殺すってのは耐えられないらしい。まずは様子見って思ってたのに、自然と体が動いてゴブリンの首を斬り離していた。
自分がこんなに衝動に動かされる人間だとは思わなかった。でも怒りなわけじゃなく冷静な自分もいてなんか変な感じ。
「加勢します!」
ええ、当然魔力操作で言語を操ってますが何か?
アーテルは言語翻訳のスキルをくれなかったし、十日かそこらで異世界言語を覚えられるほど私は頭よくないし。
そこは風と音属性と魔力分析でやりくりしています。
「すまない!」
奴隷頭っぽい女の人がオークと応戦しながら答えてくれる。他二名ほどの人族の娘も商人の遺体からぶんどっただろう剣で彼女に加勢をしていた。
おお、ケモ耳は幼女ばかりだ。眼福眼福。
「よっ……んー、体が足りない」
オークはまだ一体も減ってない。ゴブリンは私が倒した奴を引いても残り九体。
衝動に流されて死体や怪我した娘に馬鹿なことしようとする奴らから屠ってるけど、これじゃまだ元気な娘達も危ない。
「ま、みんな奴隷だから大丈夫かな」
ちらっとアーテルを見ると、意図を読んだ彼女は大リーグボールを研究開発してた野球選手の姉ちゃんみたいな状況で頷いてくれた。
ちょ、笑わせないでくれませんか。
「うし、スキル【分身】」
私は魔力で自分の分身を四体作る。
もちろんスキルってのは大嘘だ。私は魔力操作と感知しかできない。
これは彼女達の目を誤魔化す為の方便です。
「スキル【炎魔法・フレイムボディ】、【氷魔法・アイシクルボディ】、【雷魔法・ライトニングボディ】、【土魔法・メタルボディ】」
私は等身大コノハちゃん魔力塊×四体をそれぞれ炎属性、氷属性、雷属性、金属性へ変化させる。
事前に似たようなスキルや魔法があるのはアーテルに確認済みだ。
「いけ」
奴隷頭(仮)さんにはもう少し頑張ってもらおう。
私は分身にゴブリンとオークの殲滅を任せて怪我した娘達に近寄る。
「うぅ……」
まずはこの一番魔力の小さくなってる人族の娘だ。
「スキル【回復魔法・エクストラヒール】」
「う……え?」
みるみる内にボロボロの少女の体が綺麗な元の姿へ戻っていく。
これ実は回復魔法じゃなくて時空間・転写属性の魔法なのよね。
怪我より前の状態の魔力を読み取って時空間属性で座標固定し、その座標を転写属性で今の体へ上書きするイメージ。
そうすることで若返りもなく今の体の状態で傷が治ることになる。
もちろん転写しなけりゃその時まで若返るっていう素敵チートでもある。
「もう歩けるからついてきて。ほい、次ね」
私はどんどん怪我した娘達を回復させていく。その間に分身は奴隷頭(仮)さんが相手にしているオーク以外を倒し終わっていた。
「あっちもね」
私は分身に指示し、奴隷頭(仮)さんを退かせる。
うーん、四人の私にオークさん一瞬であぼんか。ご愁傷さま。
「大丈夫ですか? 回復しましょう」
私は傷だらけの奴隷頭(仮)さんに話しかける。残りの怪我人の治癒は終わっていた。
人族一人と獣人族四人の奴隷娘は可哀想だが助けられなかった。まあ、仕方ないね。
「助かります。私は金獅子族のリエフと言います。この奴隷商の戦闘奴隷です」
「人族のコノハと言います。旅をしています」
リエフさんの怪我を治し、分身を消してから私達はお互い自己紹介をした。金髪金目の褐色お姉さんは私の両手を力強く握り、深く頭を下げた。
辱めの意味もあるのか俗に言うビキニアーマーのせいでおっぱいの谷間がIの字で丸見えだ。こいつはかなりのものだな。
「!」
ぞくりとした視線を感じたので慌てて後ろを振り向くとアーテルがさっきの格好のままこっちを見ていた。目が昔の少女マンガの白目みたいになってて怖い。
「どうしました?」
「いえ」
リエフさんに不思議そうに首を傾げられてしまった。
が、正直に悪神の嫉妬を受けてますなんて言えないので首を振って誤魔化した。