表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/12

2.異世界生活六日目

三話目です。

ここから百合描写が増えます。

 異世界ライフは更に過ぎ、六日目。

 三日目以来、魔力操作と魔力感知の練習内容が新たに更新された。

 魔力球に属性や形を加えるという行程が追加されたのだ。具体的に言うと、炎の等身大アーテル魔力塊や水の等身大アーテル魔力塊を作り出してマイムマイムを踊らせたりしてみました。顔真っ赤にして恥ずかしがるアーテルが可愛かったです。

 属性魔力は地球の物理法則を使えば簡単に再現できた上に、スキルとして認識されない便利設定でした。

 しかも普通の魔法スキルより燃費も良いらしい。

 いやー、チート様々ですわ。


 それで大分慣れた魔力操作と魔力感知でもって、アーテルが森を操って呼び込んだ動物を狩りました。

 まだゴブリンとか人型の魔物を殺したわけじゃないから自分の精神がどこまで頑強か判断できないけど、とりあえずはうさぎさんを狩ってもお肉を食べるためなら心は痛まないことがわかりました。

 流石、流され人間な私。果物に飽きたからってさくっとヤレるとは思わなかったわ。


 捌き方はアーテルに教わって、土属性の魔力塊でお鍋を造って、あとは木の実とかを使って出来上がりました、ウサギ肉のスープと串焼き。

 少ない材料と調理器具で我ながら自分好みの味に作れたと感心しております。


「んでは、いただきます」


 六日ぶりのお肉。味わって食べよう。


「ああー、うまい」


 まずは串焼きを一口。

 現代日本の食事に比べたら獣くささとかそりゃああるけど、果物と木の実しか食べてなかった今の私にはこれくらいの獣くささはむしろスパイスだね。

 スープも……うん、骨から出汁が出てていいお味。

 この為だけに高圧属性の魔力を作って良かったわ。


「あー、炭酸飲みたい。あとお米ー」


 串焼きの脂っこさを炭酸のしゅわしゅわで流し込み、スープにご飯を入れておじやにしたい。

 この世界で炭酸とお米って簡単に手に入るのかなぁ。


『何言ってるの。炭酸なんて水を魔力操作でしゅわしゅわさせればいいじゃない。原理は知ってるんでしょ』

「おお、その手があったね」


 早速飲んでた水に二酸化炭素属性の魔力を追加。ついでにキンキンに冷やす。

 ああー、うまー。

 この一杯のために生きてる!


『でもお米は人族は食べないから難しいかも。ごめんね』

「んー、まあ、仕方ないねぇ」


 ないわけじゃないってわかっただけ儲けもんだよね。


『おいしい?』

「うん」


 食事を堪能する私に小さく首を傾げてアーテルが聞いてくる。

 当然私はいい笑顔で頷いてやった。アーテルは私の反応に嬉しそうだ。

 まあ、母っつーか生産者としては美味しく食べてもらえると嬉しいもんなんだろうか。


「アーテルはご飯食べられる?」

『え? うん、切り離した魔力をまた戻してるようなものだけど』


 ふむ。つまりは自分の世界のものを食することに対して忌避感はないのね。


「じゃあ、一緒に食べようよ」

『えっ』


 私は手早くアーテル魔力塊を作り彼女に押しつける。

 三回目の実体化となれば、私は慣れたもんだと思うんだけどアーテルはまだ戸惑いがあるみたい。手をにぎにぎして私をちらちら見てくる。


『実体化する時には言ってよ。びっくりするから』

「ああ、ごめん。そんでさ、一人で食べてるのも寂しいから一緒に食べようよ」


 今回の串焼きとスープは一人で食べるには少々多いのだ。


『……わかったわ。じゃあ、食べさせて』

「え」


 アーテルは言うだけ言うと私の了承を得る前に、ジーンズでおっさんぽくあぐらをかいていた私の足の間にさっさと座ってしまう。

 あ、ちなみにジーンズは召喚時に着やすそうな服としてアーテルがいくつか持ってきてくれたものの一つです。

 パンツスーツで冒険はきついからね。


 ……うん、そんなことは今は良いとして。


 アーテルのさらさらしっとりな黒髪が私の左頬に触れています。

 すっぽりとはいかないまでも、私の体に納まったアーテルはあったかくて気持ちがいい。

 少し首を下へ向ければ木漏れ日の白を反射したお揃いのピアスがきらきらと輝いていた。


『ほら、何してるの。早く』

「あ、う、うん」


 アーテルがもぞもぞと体を右へ半回転させて私を横目で見てくる。

 私はバランス悪そうに膝に座っている彼女の腰を左手で抱いてやり、金に煌めく黒目に圧されて右手にあるスプーンでもって彼女が持った器のスープを一口飲ませてやる。


『ん、おいし』

「お、おう。良かったわ」


 にこーっと笑うアーテルにぎこちなく頷く私。

『串焼きも』とひな鳥のごとく口を開ける彼女へせっせと食べさせてやる私、マジ尽くし系。


 ……つーか、この状況は……


『ん? どうしたの?』


 肉の脂でテカる唇をちろりと舐めてアーテルは首を傾げる。

 昼間なのにこの淫靡さ。

 恋人同士もかくやと言うこのスキンシップ。


 これは私、落とされにかかってますわ。

 流され人間の私にこの攻勢は勝てる気がしませんわ。


「このままだとアンタに落とされそう」


 まずいな。と思う反面、何がまずいのかなと思う自分もいる。

 そう言えば私って恋もまだだし、小さい頃からほとんど男と接点なかったせいで仕事とか関わらないとどう接していいかわかんないし、今まで名前の現すように流されに流されてきた人間だし、ここ異世界だし。

 悪神として封じられている女の子と初恋したっていいんじゃない?


 そこまで考えていると、アーテルは、ふっと見た目に似合わない大人びた笑みを作った。

 あ、それすごく女神っぽいわ。

 そんでもってすごく悪神っぽいわ。


『君は悪神の為の生け贄なんだからさ、さっさと堕ちればいいんだよ』


 手の中の器を置いて体ごとこちらを向いたアーテルに頬を包まれる。


 冗談めかせた笑みが少し悲しそうで、私は抵抗できなくて。




『パスの確認』と称したセカンドキスをあっさり奪われてしまいました。


 ……私マジチョロインだわ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ