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1.異世界生活三日目

二話目です。

 異世界ライフなう。

 どうも、流されOLのコノハです。

 悪神アーテルのナビつき“アーテルフス”生活も現在三日目です。

 何をしてたかって言うと果物をもぐもぐしながらひたすら魔力感知と魔力操作です。

 その間に、世間話的にここの常識とかをアーテルから教わっています。

 流石アーテルは創世神です。世界の成り立ちからルフス(いもうと)の恥ずかしい失敗談まで面白おかしく教えてくれます。

 つまり何が言いたいかと言うと。


「飽きた」


 話は面白いけど作業が単調すぎてつまんない!

 ひたすら魔力練ってー、指定された大きさの球体を作ってー、それを放り投げてどこに落ちたか感知してー、また魔力練ってー、てーれってれー……

 飽きた!


「アーテルさんや、こう……『魔力操作スキルLv某』的なメッセージとか変化はないのでしょうか」

『ないよ』


 わぉ、あっさり。

 ゴールのない目標は人をダレさせるって偉い人が言ってたぞ。

 こんなこと約十六時間×三日とか大学受験よりも辛いんですが。


『だーかーらー、スキルシステムはルフスの担当なんだって。ここでコノハが何かスキルを取っちゃうと君の存在がアイツらにわかっちゃうの! 気付かれないように君を強くするにはシステムにスキルがない魔力感知と魔力操作を鍛えるしかないの!』

「むしろ何故その二つがスキルではないかが私としては不思議なんですが」


 ラノベだと代表的スキルじゃん。


『それは、ここでは魔力は空気と一緒だからよ。魔法って言うのは風船に空気を入れるのと変わらないの。あらかじめ決まった風船(スキル)空気(まりょく)を吹き込むのが魔法なの。普通、風船を膨らませるのにそんなに色々考えないし、いちいち空気を意識して動かないでしょ』


 つまりみんな無意識に魔力操作をして、魔力感知はむしろ魔力が漂いすぎててする意味がないってことか。


『そういうこと』


 ……ん? ちょっと待って。


「じゃあ、これ意味なくない?」


 私の三日を返してよ!


『大有りよ、馬鹿!』


 うわ、めっちゃ怒られた。


『いい? 君はスキルを使わないんだから、今やってる魔力操作っていうのは空気の濃度や圧を自力で変えてるってことなの。そんなことスキルを持ってるヤツらは出来やしないわ。魔力感知にしたってそう。君は機械なしに空気の成分を調べてるようなものなの。それができればスキルなんてものがなくてもそれ以上のことができるのよ!』


 アーテルが一気に説明する。半透明のくせに酸欠でぜぇぜぇ荒い呼吸をする彼女に、頷いて納得したことを伝える。

 創世神にナマ言ってサーセン。


『わかればいいのよ』


 腰に手を当ててどや顔するアーテル可愛いわ。お胸が貧しいのがとても可愛い。

 暖かい目で見つめたら思いっきり睨まれた。

 怖かったのですぐに目をそらした私はどうせチキンだよ!


「じゃあ、これ意外と難しい練習だってこと?」


 目をそらしたついでに話もそらしてみる。空気中から手に集めた魔力を今回は球体ではなくわんこの形にしてみる。


『……この世界ではね、君みたいに三日で魔力球の形を変えたりなんてできないんだよ。しかもそんなに精巧な形なんてね』

「へー」


 つまりチートってことか。

 いいじゃん、いいじゃん、なんかかっこいいじゃん。


 ちなみになんの属性もない魔力は陽炎のように空気が揺らいで見える。

 そこで半透明なアーテルをちら見しながら透明な等身大アーテル魔力塊を作ったら盛大に呆れられた。

 美術はそこそこ得意なんです、えへへ。


「あ、そうだ。ちょっと実験いい?」


 等身大アーテル魔力塊を動かしてたらいいことを思いついた。

 動く透明な自分をジト目で見つめながら『いいけど。何、今度は炎のアタシでも出すっての?』と少しむくれてアーテルは言う。

 私がチートだからってふてくされないでおくれよ。

 しかし、ふむ……魔力球をスキルなしで炎にするのもやろうと思えばできそうだ。行っててよかった理系大学。


「こっちおいで?」

『ん、うん……』


 アーテルを私の前に立たせ、私は彼女の了承を得ないでアーテル魔力塊を彼女へ押し当てる。


『えっ』

「おお、やっぱりできた」


 実験は成功だ。透明さのなくなったアーテルのさらさらの髪をなでてみる。

 うむ、見た目通り素敵な触感です。


『ちょ、え、な、なな、何で!』


 髪をなでられて真っ赤になりながら驚くアーテルってば焦りすぎだ。


「一昨日、アーテルが魔力があれば触れるって言ったから。魔力を供給したらまた触れるかなぁって。うん、実験成功」

『ぶっつけ本番でアタシを実験台にしないでよぉ』


 すまんな。私、理系女子だから。

「もう女子じゃねーだろ」って思ったヤツは怒らないので出てきなさい。炎の魔力球の実験台にしてあげます。


「あ、もう時間切れかぁ。燃費悪いな」

『あ……』


 アーテルの実体化が終わる。離れる手に彼女は寂しそうな顔をした。


 ……私は百合じゃない。私は百合じゃない。私は百合じゃない。

 キマシタワーなど建たせてたまるか。




 結局、この日は実体化についての話し合いで一日が終わった。

 長時間の実体化はルフスに感づかれる恐れがあるから、やるなら今回くらいの長さの実体化がいいだろうということになった。

 危険があるならしない方が、とは思ったけどあの残念そうな顔を思い出すとそんなことは言えなかった。

 やっぱり半透明は辛いんだな、って考えるとアーテルが愛しく思えてきたので、とりあえず実体化の見返りに毎日よしよししてやろうと思った。


 言っておくが私は百合じゃないぞ!

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