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9.異世界生活五十七日目

十話目。

ここから話が一気に飛びます。

シリアスなんてなかった。

 異世界生活五十七日目。


 ついに人を殺しました。


 以前アーテルから聞いていた本体のある場所へ向かうと、近付いてきたのか騎士っぽい格好をした神殿兵らしき人達が増えてきました。


「邪魔するなら殺します」と事前に言ってはいました。


 それでもみんな向かってきたので容赦なく斬りました。


 血まみれになりましたが、動物や魔物を狩るのと大して違いは感じられませんでした。


 やっぱり異世界人だからって思いが根底にあるのでしょうか。


 でも、異世界人って考えたらマジョルタさんやリーチェ達だって異世界人なわけだし。

 じゃあ、マジョルタさんやリーチェさん達と同じ人種を殺しても私の心は大丈夫ってことで。


 アーテルだって人は殺さないでいいって言ってたのに。

 でも人を殺さないとアーテルには会いに行けないから。


 アーテル、アーテル、アーテル。


 会う為に人を殺すの? 殺せば会える?


 殺す? 殺せば。

 ころせころせころせ……






「コノハ様」


 ぎゅうっと、暖かいものに包まれた。


「マジョルタさん?」

「大丈夫、大丈夫ですから」

「うん」


 マジョルタさんがぽんぽんと背中をたたいて落ち着かせてくれる。

 今の私は血まみれで、服が汚れると言おうとしたけど、押し返したマジョルタさんの服は全く汚れていなかった。

 あれ?


「覚えてらっしゃらないようですが、汚れてしまったので清めさせて頂きましたわ。ああ、リエフやリーチェでなくわたくしがしたのでご安心くださいな」

「そう……ありがとう」


 マジョルタさん的にリエフさんはもちろんリーチェもアウトなのか。

 まあ、胸元チラリで鼻血噴いてたしアウトか。


 ぼーっとマジョルタさんを見つめると彼女は困ったような顔で頭をなでてくれた。


「ん、ごめん、もうちょい」

「はい」


 ふかふかのおっぱいに顔を埋めて甘える。

 マジョルタさんは嫌がらないで頭をなで続けてくれた。


「ごめんね、もっと大丈夫だと思ってた」


 ぽつりと言うと、マジョルタさんの手が私の頭から頬へと滑る。


「仕方ありませんわ。コノハ様は命のやり取りなどない世界から来たのですから」


 マジョルタさんは手を頬から欠けた耳へ移す時、少し痛そうに目を細めた。


「アーテル様の為に一生懸命なのはわかりますわ。でも、従者のわたくし達としてはもう少し頼って欲しいですわね」


 私一人で騎士達を皆殺しにしたことを言っているんだろう。

「でも」と開きかけた私の口はマジョルタさんの指に塞がれてしまう。


「わたくし達は、奴隷に身を落とす時に色々な覚悟は済ませてますわ。それこそ、あの小さなウットやサットもですわよ?」

「……そう、なんだ」


 指が離れて私はそれだけ口にした。

 何だか、マジョルタさんの方が四つも下なのに子供扱いされている気がする。


「あっ、コノハ様?」

「じゃあ、もうちょっと甘えさせて」


 ぐっと腰を抱くとマジョルタさんが小さく声を上げた。

 別にやましいことをするつもりは毛頭ない。

 ただぐりぐりと胸におでこを押しつけて甘えているだけだ。

 こんなこと、小さい頃もしたことがないから少し恥ずかしい。

 まあ、マジョルタさんも色々覚悟してるらしいし、これくらいは余裕だろうし、気にしないことにした。


 そういえば初めてゴブリンを殺した時も、こうやってアーテルに甘えたな。

 会いたいな、アーテル。

『ありがとう』って言われてなでなでされたい。


「あの、コノハ様」

「んー?」

「流石にこんな可愛い反応をされてしまうと、わたくしの我慢も効かなくなりそうですわ」

「えっ」


 ばっと顔を上げるとマジョルタさんの頬は赤く染まっていた。


「……私のこと、好きなの?」


 頭の悪そうな直球質問をしてしまったけど、マジョルタさんは「当然ですわ」と肯定して俯いてしまう。

 そうしたらマジョルタさんの胸の位置に顔がある今の私とばっちり目が合ってしまうわけで。


「あんなかっこよく助けられて、こんな素敵な暮らしをさせて頂けて慕わないはずないですわ……もちろん、わたくしだけじゃありませんわよ?」


 潤んだ目で言われると、少しどぎまぎしてしまう。


「えっと、リエフさんとリーチェはなんとなくわかります」


 鼻血噴いてたし。


「二人だけではありませんわよ。ポポンやウット、サットもです」

「えっ」


 だって三人はまだ小学生とか幼稚園生くらいじゃん。


「コノハ様の世界よりこちらの世界の方が総じて見た目の成長が遅いのですわ。おまけに三人は小型獣人ですからね。他の種族よりも更に遅いんですの」

「はぁ」


 もうなんも言えねぇって感じです。

 さっきまで自分の中にあったシリアス感が驚きに負けて、強制退場ですよ。


「ちなみに全員もう十五を超えてますから。成人してますからね?」

「え、マジで?」


 そうか、ポポンもウットもサットも合法ロリなのか。

 異世界半端ねぇな。




 この日以来、特に人を斬っても大丈夫になった。

 だけど、みんなを少し意識してしまうようになってしまった。

 私の流され体質はやっぱりそのままだったようだ。


 とりあえずみんなと一緒のベッドで眠るようにはなったけど、手は断じて出していない。そこは流されないから。

 でもアーテル助けたらお伺いを立てようかと思うくらいには流されてます。


 全く、何で私はこんなにシリアスが続かないんだ。

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