表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/31

幼き真相報道(750文字)

 青年はいつもより少し遅い時間に目を覚ますと、休日の穏やかな朝を迎えた。


 何気無くテレビをつけ、朝食の準備をしようとキッチンへ立つと、テレビではちょうど朝のニュース番組が始まったところだった。


 青年は目玉焼きを作ろうと、温めたフライパンに片手で器用に卵を落としていると、ニュース番組ではある出来事の話題でもちきりになっていた。


 その出来事というのは、先日借金を苦に自殺を図った父親に宛てた作文を、息子が授業参観で読み、それがとても切なくて感動的な内容であるということだった。


 青年は思わず心の中で、それを報道することがいかに残酷で、偽善的な行為であるかマスコミに対して非難したが、番組内ではそんな青年の思いなど露知らず、ナレーターがその時読まれた作文の原文を淡々と紹介し始めた。



────────────────


『おとうさんへ』


まいにち


まいにち


がんばっていたおとうさん


おそくまではたらいて


とってもつかれてても


うちへかえってくると


さいしょにあたまをなでてくれた


んーと、いっぱい


おとうさん、ありがとう


これからはママとこうた


ろうとふたりで


しあわせにくらしていくからね


たのしかったよ、おとうさん。



────────────────



 ナレーションが終わると、画面は再びスタジオに切り替わり、テレビの中では司会者やアナウンサーなどがハンカチで目頭を押さえている様子が映し出された。


 本当にやり切れないですね、とコメントする司会者と神妙な面持ちのコメンテーターをよそに、青年はフライパンで焦げ付く目玉焼きのことなど気にも留めず、この幼い報道者が伝えんとする真相の恐ろしさにただただ身体を震わせていた。




     

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ