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皮肉なアナグラム(950文字)

 男は一仕事終えて部屋へ戻ると、部屋の中央にある真っ赤なソファーに腰を下ろした。


 と言っても、男の仕事は”殺し屋”であり今日も依頼を受けてある男を殺してきたばかりである。


 殺した男の名は橋皺文太はしじわふみた。普段は滅多に表舞台に顔を表さないことで有名な大企業の社長だった。


 殺し屋は謎の多いこの男のことを数ヶ月に渡って調べ上げ、ついにその所在を掴みようやく今日、実行に移したという訳である。


 殺し屋は依頼主から莫大な報酬を受け取った。これだけあれば数年は遊んで暮らせる額だ。

 

 殺し屋は、久々の大仕事を終えた達成感で、その日は一人で明け方まで酒を飲み続けた。



 しかし翌日、殺し屋は新聞を見て驚いた。



 昨日のことが全く記事に載っていないのである。

 最初はまだ発見されて間もない為かと思ったが、その後もテレビでも一行に報道される気配が無い。


 殺し屋は居ても立ってもいられなくなり、取り引き先を装って橋皺の会社へ連絡をした。しかし、そこで返ってきたのは予想だにしない言葉だった。



「橋皺はただいま会議中でございます」



 殺し屋は頭の中が真っ白になった。


 一体どういうことなのだ。


 私が殺したのは誰なのだ。


 殺し屋はそれから新聞やニュースを隈なく調べたが、そういう名前の社長が殺されたことも、そこで誰かが殺されたという報道も無かった。


 その時、殺し屋の携帯電話に依頼主から連絡が入った。


 内容は簡単で、殺してないなら報酬は返してもらう。ただそれだけだった。


 やむなく殺し屋は再び仕事を探すはめになった。

 

 そうは言っても普通カタギの仕事は出来ない。出来るのは殺し、運び屋、用心棒などハローワークでは到底紹介されないものばかりだ。


 殺し屋はいつも使っている会員制の闇サイトへアクセスし、表沙汰には出来ない様々な求人を眺めていた。


 そして、ある求人を見て殺し屋は目を見開き、手を止めた。


 求人の見出しにはこう書かれていた。




『年齢、経験問いません!「橋皺文太はしじわふみた」を名乗るだけの簡単なアルバイト!高額保証!』




 その瞬間、殺し屋は「橋皺文太」の本当の意味を理解した。


     

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