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推理小説のタブー(1400字)

 その人影は突然現れた。


「な、何者だ!」


 豪邸の主人はいきなり目の前に現れた来訪者に目を剥いた。主人の目には頭が異様に大きく、全身が銀色に光り輝いたまさしく『宇宙人』と呼ぶに相応しい姿の生物が映っていた。


 宇宙人は手に持ったレーザー銃を主人に向けると、躊躇うことなく引き金を引いた。

 銃口から目にも留まらぬ速さで光線が発射されると主人の胸元を貫き、主人はそのまま仰向けに倒れた。


 宇宙人は主人が死んだことを確認すると、部屋の中のショーケースに飾られたいくつかの宝石を見つけた。


 そしてその中から一際ひときわ形のいびつな宝石を見つけた宇宙人は、再びレーザー銃でショーケースのガラスを撃った。

 発射されたレーザーはガラスを溶かし、みるみるうちにソフトボール大の丸い穴が開いた。

 宇宙人はその穴に手を入れ歪な宝石を掴むと、腕に取り付けてある通信機に向かって言葉を発した。



「ヤハリコレハ、我々ノ宇宙船ノ破片ダッタ。回収ハ無事完了、コレヨリ帰還スル」


 宇宙人は再び通信機のボタンを操作すると、一瞬にして部屋から消え去った。




 翌日ーー



 事件現場を調べた警官たちは、皆一様に頭を抱えた。


 様々なセキュリティーをかいくぐった犯人の侵入経路はもちろん、主人を殺した凶器も、ガラスに穴を開けた方法も何ひとつわからなかったのである。


 そこで警部はある提案をした。


「仕方ない、ここは『彼』に依頼するしかなさそうだ」



 警部の提案からしばらくして『彼』は現場に姿を現した。

 彼の名前は江戸山粉雄えどやまこなお、まだ十代という若さにして様々な難事件を見事解決へと導いた名探偵である。


 江戸山は、警部から詳しい事情を聞くと早速現場を隅々まで調べ始めた。


「どうだね、手がかりは掴めそうか?」


 警部は虫眼鏡で主人が倒れていた床を熱心に調べていた江戸山に声をかけた。

 その言葉に江戸山はゆっくりと立ち上がると警部の顔を見てこう言った。




「いいえ、さっぱりわかりません」




 警部を初め、その場にいた警官達も口をあんぐり開けて立ち尽くした。


「ですが警部、ひとつだけ犯人を突き止める方法があります」

 江戸山の言葉に警部の顔には驚きの色が浮かんだ。


「何っ?! 本当か!」


「ええ、本当はこんな方法を使う訳にはいかないのですが……」

 江戸山は少し困ったように呟いた。


「今はそんなことを言っている場合ではない! その方法とは何だね!」

 警部は顔を真っ赤にして江戸山に詰め寄った。


「そう急かさないで下さい。簡単なことですよ、この部屋で何があったのかを『目撃者』に聞いてみればいいのです」

 江戸山は淡々と答えた。


「目撃者……だと? まさかこの死体に聞いてみるとか言うんじゃあるまいな」

 警部は半ば呆れながら言葉を返したが、江戸山は黙ったまま首を横に振った。


「そんな訳ないじゃありませんか警部。『死人に口無し』ですよ」

 江戸山は舌を鳴らしながらわざとらしく人差し指を振った。


「では一体誰に……」

 困惑する警部をよそに、江戸山はゆっくりとこちらを向くと爽やかな笑顔を見せた。





「あなたは全て見ていたんですよね。読者・・さん?」





     

我ながら「粉雄」とは酷いネーミングセンスである。。。

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