光線銃(1100文字)
「やあ、博士。とうとう完成したそうだね」
研究室に入るなり男はそう声をかけた。
「あぁ、完成に漕ぎ着けるまでには随分と苦心したが、ついに完成したよ」
博士は感慨深げにそう言うと小さなケースをテーブルに乗せ、中を開いた。そこには不思議な形をした銃が丁寧に収められていた。
「これがその“銃”か……」
男がゴクリと唾を飲み込んだ。
「そうだ。ここで小難しい話をしても仕方ないから簡潔に言うと、この銃から出る光線を浴びると、浴びた相手を自分の意のままにコントロール出来るようになる装置だ」
博士は少々得意げに男に説明をした。
「素晴らしい。これさえあれば、一国の大統領や要人も簡単に服従させられるという訳だな」
男は感嘆の声をあげ、博士を見た。
「もちろん、その通りだ。だからこそこの銃の取り扱い方には十分気をつけなければならない。何せ使い方を誤ればこの国どころか世界を巻き込んだ混乱が起きかねんのだからな」
博士がそう説明をしたが、男には途中から博士の言葉が耳に入っていない様子で、手に持ったジュラルミンケースを無造作にテーブルに乗せた。
「では、これが約束の報酬だ」
男がケースの蓋を開くとそこには束ねた高級紙幣が隙間なくギッシリと詰められており、その迫力ある光景に博士は思わず唾を飲んだ。
「……確かに」
博士は一言そう言うとケースの蓋を閉め、代わりに光線銃を男に手渡した。
「ほほう、なかなか良い手触りだな」
男はしばらく光線銃を眺め、その後ゆっくりと銃口を博士に向けた。
「おい! な、何の真似だ!」
慌てふためく博士に男がニヤリと口元を緩める。
「なぁに、この銃の性能が本物かどうかあんたで実験させてもらおうかと思ってね」
「馬鹿なことを言うな! ではこの取引はどうなる!」
辺りに唾を撒き散らさん勢いで、博士が男に食ってかかる。
「取引は先ほど無事に完了しただろう? ここからは俺が何をしようとあんたには関係のないことだ」
しかし男はそんな博士の様子も意に介さず、冷淡に言い放った。
「ではまず、今あんたに渡した金をこちらへ返してもらうとしよう──」
そう言うと、男は躊躇いなく銃の引き金を引いた。辺りに奇妙な電子音が鳴り響く。
「……さてと。では、まずはその銃をこちらへ返してもらうとしようかな」
「はい、博士」
博士は直立不動のまま立ち尽くす男から銃を受け取ると、その銃を再び小さなケースに丁寧にしまった。
「どうやら考えることは皆同じの様だな。やはり光線が銃口ではなくグリップから発射される仕組みにして正解だったよ」
そして博士は意地の悪い笑みを浮かべた。
リハビリを兼ねて執筆。やはり文章力や語彙力が低下していました(汗
しばらくリハビリを兼ねた執筆が続きますので気長にお付き合い下さい。




