表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/31

誰得?(800文字)

 とある探偵事務所へ、ひとりの若い女性が訪ねて来た。


 探偵の男は慌てて散らかった部屋をざっと片付けると、女性をソファーへと案内した。


 ソファーに向かい合ったまま腰を下ろすと探偵は口を開いた。


「それで、今日はどういったご用件で?」


「最近、どうも妙な男に付きまとわれている様な気がして……」


 そう言うと女は小刻みに震える手を口元に当てながら、小さく俯いた。


「警察にはご相談されました?」


 探偵は極めて事務的な口調で女に問いかける。


「はい……ですが具体的な被害が出てない以上、警察ではどうすることも出来ないと……」


 女はまるで捨てられた仔犬の様な潤んだ瞳を探偵に向けた。


「まぁ、そうでしょうね。警察も暇ではありませんし」


 探偵はわざとらしく肩をすくめて見せると、不安そうな表情を見せる女に向かって胸を張った。


「でも、ご安心下さい。そんな時こそ私の様な人間に需要がある訳ですからね」


 探偵の言葉に女の顔は一瞬明るくなったものの、またすぐに表情を曇らせた。


「でも、一体どうやって……」


「実は、あなたの様なストーカー被害を受けた方からの依頼は多いのです。お任せ下さい、一週間もあれば解決して差し上げますよ!」


 自信満々な笑みを浮かべる探偵を信じ、女は探偵に依頼をし、その場を後にした。




 一週間後──





 探偵事務所から遠く離れた場所に住む男は、近所の銀行のATMで無事に報酬が入金されていることを確認すると、口元を少し緩ませた。


 そしてその帰り道、男はしばらく不審に思っていた疑問をついぽろりと口にしていた。


「それにしても、変な仕事だったなぁ。知らない女の後を一ヶ月付け回すだけなんて。こんな仕事で一体誰が得するんだか……」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ