対象外(600文字)
とある閑静な高級住宅街で窃盗事件が起きた。
防犯対策も厳重な住宅街で起きたにも関わらず、その手際は見事なもので、犯人は事前に何度か下見をした上で犯行に及んだものと警察は推測し捜査を開始した。
だが不思議ことに、近隣の住民に事件の前に不審な人物を見かけたかどうか、いくら聞き込みをしても有力な情報が全く得られなかったのである。
警察は頭を悩ませた。するとその時、ひとつの連絡が署に入ってきた。
それは今日、隣街で起きた窃盗事件の犯人が現行犯逮捕されたのだが、その犯人がこの窃盗事件の関与もほのめかしているというものだった。
警察はその知らせを受けてすぐさま、その犯人が関与していたという裏付けを取るために、今度はその犯人の顔写真を持って再び聞き込みを開始した。
すると驚くべきことに、以前は不審人物の情報は無いと言っていた住民のほとんどがその男を目撃しており、中にはその男に声をかけたことがあるという者までいたのである。
警察は聞き込みをしながら、住民に対して苦言を漏らした。
「この男を見ていたなら、どうして以前聞いた時に仰って下さらなかったのです?」
すると、住宅街に住むマダムたちは揃ってほんのり頬を赤らめながらこう答えるのだった。
「え? だって、その方はとてもスマートで端整なお顔立ちだったので、不審な人にはとっても見えなかったんですもの」