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アビシニアンと狡猾狐  作者: 篠原 皐月


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第26話 君島家の未来予想図

 夕食時に広い客間に君島家の面々が勢揃いした時、初めて目の前に現れた幼稚園児と思われるハーフアップの少女は、瞳を輝かせて幸恵を見上げてきた。

「うわぁ~、ゆきえさんって、おばあちゃんにそっくりで、とってもきれい~」

「……ど、どうも」

 嫌味とか打算抜きと思われる手放しの賛辞に、幸恵は照れと動揺を押し隠しながら、何とか笑顔を見せて挨拶らしき言葉を口にした。その表情を見た和臣が隣で噴き出しかけたのを気配で感じ取った幸恵が、かれの脇腹を肘で突くと同時に、泉が娘を窘める。


「美郷。初対面の方に挨拶抜きで、それはないでしょう?」

 やんわりと注意されて、美郷は慌てて幸恵に向かって頭を下げた。

「あ、ごめんなさい。きみじまみさとです。はじめまして。よろしくおねがいします」

「こちらこそ、宜しくね。美郷ちゃん」

「はい! みんなで、ゆきえさんをかんげいしますね?」

 にっこりと笑いかけてくれたその無邪気な笑顔を見て、幸恵はここに来てからの不愉快な出来事を、一瞬忘れ去った程だった。


(うわぁ~、可愛い。癒されるわね~。あの仏頂面兄貴を、目の当たりにしていると。お母さんに似て良かったわね、美郷ちゃん)

 しみじみとそんな事を考えていると、美郷は先に座っていた父親の元に歩み寄り、不思議そうにその額に指を伸ばす。


「おとうさん? おしごとたいへんなの? おでこにしわ~」

「……何でも無い」

 娘に眉間を指でぐりぐり押されながら、篤志は不機嫌そうに応じたが、そんなのは慣れているのか、美郷は更に暴挙に出た。

「そう? でもあまりこわいかおしてると、しあわせちゃんがにげちゃうよ? はい、にっこりして?」

「…………」

 美郷が微塵も遠慮や手加減する事無く、篤志の両頬を摘んで左右に引っ張った為、それを目にした面々は必死に笑いの衝動を堪える羽目になった。


(しあわせちゃん……、にっこりって……。もう駄目、ある意味拷問)

 予想外に子煩悩だったのか、篤志はそんな事をされても仏頂面のまま無言を貫いたが、流石に泉が止めに入った。


「美郷、お父さんの顔が痛くなるから止めなさい。いい加減食べましょう? せっかくのご飯が冷めちゃうわ」

「はぁい。いただきまぁす」

 そして笑いを堪える空気のまま、皆で座卓を囲んで食べ始めたが、開始早々両親に挟まれた位置で食べていた美郷が、上機嫌で言い出した。

「あのね? みんなが言ってたんだけど、ゆきえさんって、かずおみおじさんのおよめさんなんだよね?」

「……っ!」

 いきなり振られた話題に、幸恵は食べていた物を喉に詰まらせかけたが、その隣で和臣は微笑みつつさらっと言ってのける。


「正確には、もうすぐお嫁さんになるんだけどね?」

「何を勝手に」

「そうか、そうだね。……そしてゆうじさんって、あやのおばさんのおむこさんになるんだよね?」

「おっ、おむこさんって!!」

 途端に真っ赤になって箸を取り落とした綾乃の横で、険悪な顔の篤志から目を逸らしつつ、祐司が答える。

「ええと……、正確に言えば、お婿さんじゃなくて、旦那さんかな?」

「祐司さんっ!」

「ああ、そうか。あのね? みさと、もうすぐおねえさんになるのよ? おとうとかいもうとができるの」

 にこにことそんな事を言ってきた美郷に、和臣は微笑しながら頷いた。


「ああ、そうだね。楽しみだろう?」

「うん! だから、ゆきえさんもあやのおばさんもがんばってね?」

「え?」

「何が?」

 相手の言わんとする所が分からなかっ為、二人は揃ってきょとんとした顔になった。しかし美郷は気にせずに話を続ける。


「だって、おかあさんにきょうだいはいないし。ふたりがあかちゃんをうんでくれたら、わたしのいとこになるんでしょ? うふふ、おとうとかいもうとだけじゃなくて、いとこまでできるんだ。うれしいな~」

「あのっ……」

「……それは」

 そうして如何にも幸せそうにもぐもぐとご飯を食べるのを再開した美郷だったが、彼女の中で近々出産決定と断定されてしまった二人は、顔を引き攣らせた。しかし和臣は相変わらずのマイペースで応じる。


「じゃあ、美郷ちゃんの期待に応える為にも、叔父さん頑張るから」

「うん! ゆうじさんもがんばってね?」

「ええと……、うん、頑張ってみるから……」

「はい!」

(何子ども相手に馬鹿な事言ってるのよっ!!)

 男二人をそう怒鳴りつけたかったのは山々だが、幸恵は黙々と食事を進める事でそれを堪えた。するとここで和臣が、自分用の皿に盛られた料理を一つ箸で摘まみ上げ、幸恵に向かって差し出してくる。


「幸恵」

「何?」

「この海老しんじょ、美味いから食べてみてくれ」

「え? ……ええ」

(そうね……、タコ飯とか煮つけとかだと、変な物仕込めそうにないものね。でもこのなますっぽい物だったら、私と祐司の分だけ別にすれば、奇天烈な味付けにできるか……。もうこうなったら、何でもやってやろうじゃない!)

 一瞬当惑したものの、幸恵は和臣の意図するところを正確に察知し、半ばヤケになって笑顔を取り繕い、口を開けた。そこに入れて貰った物を咀嚼して飲み込んでから、にこやかに感想を述べる。


「本当に美味しかったわ。じゃあ和臣の分が少なくなっちゃったから、私の分をあげるわ。はい、口を開けて?」

「ああ」

 そしてお返しとばかりに自分の皿から同じ物を箸で摘み上げた幸恵は、すかさず口を開けた和臣にそれを食べさせた。そして実際はどうあれ、和臣も平然とした笑顔のまま頷く。


「やっぱり元々美味いが、こうやって幸恵に食べさせて貰うと、美味さも倍増だな?」

「嫌だ、あまり恥ずかしい事言わないでよ」

(平気な顔をしてるけど、本当に大丈夫でしょうね!?)

 和臣もそうだが、横で一言も口を聞かずに料理を平らげている祐司の態度も気になり、幸恵は密かに冷や汗を流した。そんな二人を見て、篤志は益々不機嫌そうに黙り込み、泉が微笑しながら感想を述べる。


「…………」

「和臣君と幸恵さんって、本当に仲が良いわね」

「わたしも! おとうさんに『あ~ん』ってする!」

「え?」

 いきなりの宣言に、室内は戸惑った空気が流れたが、美郷は早速先程の幸恵達の様に器用に箸で海老しんじょを摘み上げ、父親に向かって満面の笑みで差し出した。


「はい、おとうさん、あ~ん!」

「……美郷、止めろ」

 しかしボソッと呟いて拒否してきた篤志に、美郷はちょっと驚いて、当惑した様に見上げる。

「え? お父さん……、ダメ?」

 そこで一人娘に縋る様な視線で見詰められてしまった篤志は、かなりの沈黙の後、不承不承頷いた。


「……………………一回だけだぞ?」

「うんっ!! はい、あ~ん」

 そして首尾良く父親に食べさせる事ができた美郷は、上機嫌で周囲に同意を求めた。

「やっぱりこうするとたのしいし、おいしいねっ!!」

「……ああ」

「そうね」

(なんかもう……、あの兄貴の様子を見て笑わずにいられなくて。腹を立ててる暇が無いわ。美郷ちゃん様様ね)

 そんな風に幸恵はそれからも笑いを堪えきれず、当初気が重かった会食も、気が付けば笑顔で終える事ができたのだった。


 夕食後は篤志は仕事があるからと引っ込んだが、幸恵達は居間で美郷とトランプで遊んで楽しく過ごしていた。しかしあっという間に夜が更けて、泉が娘を迎えに来る。

「美郷? そろそろ寝る時間よ?」

「ええ? もう? もうちょっとみんなであそびたいな~」

「駄目。子供は寝る時間なんだから。皆さんに挨拶なさい?」

「はぁい。それじゃあ、おやすみなさい」

「おやすみなさい」

「また明日、遊ぶからね?」

「うんっ!」

 そして美郷が挨拶して部屋を出て行ったところで、泉と一緒にやって来た住み込みの使用人らしい女性が、幸恵達に声をかけてくる。


「高木様、荒川様。離れのお二人の客間に、お布団を敷いておきました。お風呂の支度も済んでおりますので、交代でお好きな時間にお入り下さい」

「ありがとうございます」

「じゃあ行くか」

「そうね」

 そこで4人で立ち上がって離れに向かって移動を開始したが、雑談をしながら幸恵はふとある事に気が付いた。


「あ、そう言えば二人はどこで寝るの?」

 その問いに、和臣と綾乃は事も無げに答えた。

「どこって……、いつも通り自分の部屋で」

「家を出る前の状態のままにしてあるから、帰省した時はいつもそこを使ってるんです」

「勿論、幸恵が一緒に寝ようって誘ってくれるなら、客間で寝させて貰うけど?」

「そんなわけないでしょっ!!」

「何だ。珍しくそっちから誘ってくれたかと思ったのに」

(全くもう! 本気なんだかふざけているんだか、分らないんだから!!)

 おかしそうに笑いながら言ってきた和臣に、幸恵は幾分腹を立てながら気になった事を再度尋ねてみた。


「でも、それならどうして二人ともこっちに付いて来るわけ? 後はお風呂に入って寝るだけなんだから、さっさと自分の部屋に行けば良いでしょう?」

「え、えっと……、皆が歩いて行くから、何となく?」

 綾乃の答えには(この子だったらそうでしょうね)と幸恵は納得したが、和臣は笑いを消して真顔で告げた。

「一応、確認しておこうかと思って」

「何を確認するの?」

 幸恵は怪訝な顔になったが、和臣はそれから一言も喋らず、そのまま客間へと到達した。そして幸恵用に準備された部屋の入口の前で立ち止まる。


「ちょっとここで待ってて」

「俺は自分の布団を見て来るから」

「…………」

 有無を言わせない口調で言い聞かせてから、和臣は幸恵用の部屋に、祐司は自分に準備された部屋に入って行った。そして廊下で幸恵と綾乃が困惑顔を見合わせていると、すぐに二人が戻ってくる。

「何なのよ、一体?」

「幸恵、今日は俺の部屋で寝てくれ。ちゃんと幸恵用の寝る場所は用意するから」

「はい?」

 若干顔色が悪く見える和臣に真顔でそんな事を言われた幸恵は面食らったが、綾乃も祐司に困惑気味に尋ねた。


「祐司さん、どうかしたの?」

 しかし祐司は、独り言の様に呟いてから、短く挨拶の言葉を残して室内に戻る。

「……いや、まあ、寝れない事は無いな。外は庭だし、手早く処分すれば……。ああ、気にしないでくれ。じゃあおやすみ」

「え? あの? 祐司さん!?」

 当惑している綾乃の前で引き戸が閉まり、幸恵は若干表情を険しくして和臣に迫った。


「……何があったの?」

「聞かない方が、精神衛生上の為だ。バッグはそのまま持って来たし、行くぞ。ほら、綾乃も」

「う、うん……」

(何か、物凄く気になるんだけど!?)

 さり気なく幸恵のバッグを持ち出して来た和臣は、幸恵と綾乃を促して母屋へと戻った。そして二階に上がり、並んでいる扉の前で足を止めて幸恵に入る様に促す。

 そこで隣の部屋に入って行く綾乃に、就寝の挨拶をしてから室内に入った幸恵だったが、落ち着く間もなく和臣が再び部屋を出て行こうとした。


「ちょっとこのまま待っててくれ」

「え、ええ。構わないけど……」

 何事かと思いつつも素直に頷き、壁際に置いてあったベッドに腰掛けて、室内を興味深そうに見回した。

(ふぅん、家を出た時のまま、色々飾ってあるわけだ)

 覚えのある状況に幸恵が思わず考え込んでいると、ドアの方から声が聞こえた。


「悪い幸恵、開けてくれ」

 慌ててドアを開けてみると、和臣が布団一式を抱えて廊下に立っており、幸恵は軽く驚いた。

「布団? どこから持って来たの?」

「うちの様な家は、いつ客人が泊まるか分からないからな。常に何組かは、すぐに使える様にしてあるんだ。ベッドは幸恵が使ってくれ」

「でも……、ここ、和臣の部屋なんだし、私が布団で寝るべきじゃないの?」

「ベッドの方が寝心地は良いと思うから」

 そう言いながらも床に布団を下ろした和臣は、テキパキとそれを広げ始めた。それを見て、幸恵が慌てて声をかける。


「あ、ちょっと、布団を敷く位はするわよ?」

「それは俺がするから、掛布団や枕にカバーをかけて貰えるかな?」

「分かったわ」

 そして二人で分担してすぐに支度を済ませ、幸恵が「これで良し」と満足そうに頷く。その横で同じ様に布団に座りながら、和臣が神妙な顔付きで言い出した。


「悪かった。寝る前にバタバタさせて。それにある程度予想はしていたが、兄貴は陰険さに拍車がかかってるし。外面は良いんだが」

 しみじみとそんな事を言われた幸恵は、思わず苦笑しながら小さく肩を竦めた。

「いいわよ。外面云々じゃなくて、私限定で当たりが厳しいだけって事位、分かってるし。それで今我が身を振り返って、猛省中なんだから」

「幸恵?」

 不思議そうに目線で問いかけてきた和臣に、幸恵は思っている事を正直に告げた。


「良く『人の振り見て我が振り直せ』って言うじゃない? あの子に社内で当たってた時の私って、今のお兄さんみたいなものでしょう? 周りが全然見えていなくて、自分本位で。……でも振り返ると、ずうっとそうだったんだなって、ちょっと情けなくなったわ」

 それを聞いた和臣が、僅かに眉間に皺を寄せる。

「だからと言って、兄貴のあれこれを甘んじて受ける必要はないんだぞ?」

「そう言いながら、波風立てない様にフォローしてくれてるじゃない」

「ここに連れて来るまでに、きちんと兄貴と話をつけておくつもりだったんだがな……」

 そこで和臣が重い溜め息を吐いた為、幸恵は話題を変える必要性を感じた。そして何となく室内を見回すと、先程感じた事を思い出した為、そのまま口にする。


「そう言えば、この部屋、結構私物がそのままなのね」

 いきなりの話題転換に、和臣は一瞬戸惑った様子を見せたものの、すぐに幸恵の意図を悟ってそれに答えた。

「ああ。大学進学と同時に家を出たから。当時借りた部屋にそんなに余裕は無かったから、思い出の品とか未だにそのままになってるんだ」

「私もそうなのよね。実家に色々置きっぱなし。就職と同時に賃貸物件に入居したし。でもそろそろ荷物を整理しないとね」

「うん? どうして?」

 不思議そうに尋ねてきた和臣に、幸恵は笑顔で答える。


「今、香織さんが妊娠中でしょ? 子供が生まれたらその子の荷物だって増えるし、子供部屋だって将来必要になるだろうから、良い機会だから空けておこうかと思って」

「ああ、そうか。なるほど……」

「でもここは部屋数も広さも余裕だから、このまま置いておいて貰えそうね」

 納得した様に和臣が頷いて何やら考え込むと、続いて幸恵が口にした推測を否定してきた。


「……いや、俺もそろそろ整理して、必要な物は東京に持っていく事にする」

「どうして? 焦って部屋を整理しなくても良いわよね?」

 意外な答えに幸恵は不思議そうに首を傾げて和臣を見やったが、彼はその視線から微妙に顔を逸らしながら何やら考え込んだ。しかしすぐに幸恵に向き直り、真剣そのものの表情で言い出す。


「その……、星光文具本社の最寄駅沿線で、2LDK以上の広めの物件を探すから、一緒に暮らさないか?」

「え?」

 一瞬何を言われたのかと思った幸恵だったが、すぐに相手の言わんとする事に気が付いた。

「あの……、えっと、それって」

 思わず血流が顔に集中する様な気分になりながら幸恵が口ごもっていると、そんな幸恵の赤面が伝染したかの様に、和臣も僅かに顔を赤くして勢い良く立ち上がった。


「それじゃあ、俺は先に風呂に入ってくるから」

「え? あの……」

 そして手早く部屋の隅に置いてあった自分の荷物から着替えを取り出した和臣は、言うだけ言ってそそくさと部屋を出て行った。

「ゆっくりしてて。こっちの風呂の位置は後から教えるから」

「ちょっと、和臣?」

 そして呆気なく室内に置き去りにされてしまった幸恵は、呆然として布団に座り込んだまま、閉まったドアを眺めつつ目を瞬かせた。


「らしくなく、何、顔を赤くしてるのよ。……というか、戻って来た時に、私はどんな顔で迎え入れれば良いわけ? 第一、何事にもレディーファーストが信条じゃなかったの!? 何さっさと一人で出て行っちゃうのよ、馬鹿ーっ!?」

 反射的に枕を掴んでドアに向かって投げつつ叫んでしまうと、隣の部屋から綾乃が「幸恵さん! どうかしたんですか!?」と慌てた様子ですっ飛んできた。それで幸恵は隣室が綾乃の部屋だった事を思い出し、(さすがにあいつも、こんな所でどうこうするつもりはないでしょうね)と納得しつつも、和臣から提示された新たな問題に頭を悩ませる事になったのだった。





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