とりあえず、クエストを終わらせる。
椿はアイテム一覧を見てニマニマしていた。
欲しかったしおりはただでもらえたし、ノートも万年筆も買うことが出来たのだ。
特に気に入った万年筆は実際なら高くて手も出せないというのにだ。
蔓薔薇図書館に向かいながらもどこか浮かれた様子で、椿は誰かに自慢したいと思っていた。
しかし残念ながら知り合いのプレイヤーはいない。
…ならばあの姦し娘に会いに行こう!そう思ったのは必然でもあった。
MAPにより最短距離で会いに行くことができた椿は道中、ラベンダーを手に入れていた。
それは庭から転がり出たバケツを拾って届けるだけの簡単なクエストで、庭で育てられていたラベンダーをおすそ分けしてもらったのだ。
きっとこれならあの小母様たちも喜ぶに違いないと椿はまたしてもご機嫌である。
「おばさ~ん、こんにちは!これ皆さんでどうぞ!!」
「あらあら、また来たのかい!!」
「ありがとう!いいにおいのラベンダーだこと!!」
「小袋にでも入れましょうかねぇ」
たちまちなじんだ椿であった。
「聞いてください!私こんな素敵な万年筆手に入れたんです!!!」
さっと取り出した例のものを見せると早速自慢である。
「あら!いいもの持ってるわねぇ。」
「それって、呪式万年筆でしょう!!いいわねぇ。」
「私、お古持ってるわ、良い物見せてあげるからちょっと待ってなさい!!」
自慢しようと思ったらあれよあれよとひっくり返したバケツに座らせられ、どこで買ったのかどうやって買ったのか根掘り葉掘り聞かれ。
最後にはいい買い物したわ、買い物上手ねと褒められ椿はご機嫌だった。
そのうちマーサが小さな絵本を持ってきて滔々と話し始めたのだった。
マーサは姦し娘の1人でいいものを見せてくれるといった女性である。
イーサはあら!が口癖のちょっと恰幅のいいお母さん。
エイサは補足してくれるいい小母様である。
なんでもマーサ曰く、この絵本はその呪式万年筆で書かれたため不思議な力があるのだということ。
読めばたちまち水魔法初級である「水呼び」ができるようになるのだという。
持っていればちょっとだけ水難が避けてくれるようにもなるという。
「きっとあなたもそれを使えば不思議な本が書けるわ!!!」
「あら、まだ無理よ。だって司書さんじゃないもの!」
「そうよ、呪式万年筆で呪式書を作れるのは司書や教授じゃなきゃできないのよ?」
「あの!!司書ってこないだ言っていた王立図書館にも入れるんですよね!!どうやってなるんですか??」
第2のマイベストプレイスを求めて椿はすべてスルーした。
呪式なんてどうでもいいのだ、権利!とにかくそれである。
「それはあれよ」
「あら、それはだって。」
「蔓薔薇図書館にいくのでしょう?そちらで聞いたほうがいいわよぅ」
そのとおりである。
彼女たちのちょっとしたおしゃべりに付き合った後、椿は全力で蔓薔薇図書館に駆け込んだのである。
「グリブさん!!司書ってどうやってなるんですか!!!?」
乱暴な音と共に開かれた扉にびっくりしながらもグリブは冷静だった。
「おかえりなさい、椿さん。とりあえず落ち着いてくださいね…まずは、しおりは手に入りましたか??」
「これです!でもそれは今いいんです司書です、そっちが重要なんです。私司書になれますか!!?」
2枚のしおりをグリブに手渡すとクエストクリアとのアナウンスが流れたが椿はまたしてもほったらかしにすることに決めていた。
「椿さん、落ち着いてくださいね。紅茶でも入れましょうか。」
「いいえ!紅茶よりも司書です。」
イベント『ヴェルテュ語の習得』クリア
クリア報酬 ヴェルテュ語の習得に伴う経験値取得と称号の付与。
冬花 椿
LV:1
種族:エルフ
職業:―
スキル:察知、古語解読、言語習得
称号:ヴェルテュ語マスター
HP (体力):210
MP (マジックポイント):120
SP (スキルポイント):100
STR (筋力):50
DEX (器用):150
INT (知力):160
MND (精神力):100
装備:始まりのローブ(特殊効果なし)
アイテム:ノート
特殊アイテム:呪式万年筆
所持金:20G