とりあえず、シャトンをめざす。
大通りは活気があった。
たくさんのプレイヤーたち、いろんなお店。
椿はやっと広場にたどり着いた。
掲示板前にはたくさんの人がいて、それとすぐに気が付くことができた。
思ったよりも大きな掲示板で、商店街で見かけるような小さなものを想像していた椿は少し驚いた。
通称掲示板、広域イベント開催掲示板を選びいくつかある中のクエストから椿は『チュートリアル』を受けた。
そうすると、クエスト欄がいっぱいになり受けられなくなった。
とりあえずはチュートリアルである。
簡潔に言えばチュートリアルは椿を救った。
簡単な操作方法、各種ウィンドウの出し方や見方、アイテムの使用方法や装備アイテムの装備の仕方。
初心者用の小回復薬やお小遣いのような所持金がクエスト報酬として渡された。
今まで椿は所持金を持っていなかったのだ。
これではもし無事にシャトンへたどり着いていても買い物なんて到底無理だったろう。
椿は気を取り直してMAPを開いた。
これでもう何も怖くない!
昨日今日と歩いた道には2つのフラッグが立っており蔓薔薇図書館は赤のフラッグ。
姦し娘の井戸端会議は青のフラッグ。
これは現在進行中のクエストに関係がある場合は赤。
普通MAPに載っていない場所の地名を手に入れた場合は青。
先ほど学んだばかりなので椿は少しうれしくなった。
自分の今いる場所が今まで歩いてきた距離よりも図書館に近かったことが少し悔しかったが今はシャトンである。
MAP内での検索を選び、シャトンを探す。
行きたい場所の名前さえわかってればナビゲートしてくれるのだ。
すぐに赤の小さなフラッグが立った。
ここからあまり離れていない。
今まで来た大通りを少し戻って、目の前のナビに沿って道を歩いていく。
普段地図なんて読めないがこれは自分が移動したりしてもそれに沿って地図が回転してくれるため凄くわかり易かった。
椿は運営に感謝した。
少し歩くと、橙色の壁とその壁に寄り添うように生えたプルーンの木が目印のシャトンがあった。
どうやら2階建てのようで、1階2階それぞれの窓辺には赤い花が咲いていた。
ドアの上には黒猫の看板がかかっておりかわいい。
看板には日本語でシャトンと書かれていた。
からんからんとベルの音がして椿はシャトンの中に入っていた。
目の前にはハンカチやペン、何かの置物、石鹸やいろいろな小物がそろっていた。
「いらっしゃいませ!本日は何かお探しですか??」
にこやかに笑った店員は黒い子猫を抱いていた。
「こんにちは、しおりを探しているんですけど…おいくらですか?」
「しおりですか!珍しいですね。今裏に下げてるんです少しお待ちいただけますか?すぐに持ってきますので。」
そういって彼女はカウンターの中にあった扉の奥へと言ってしまった。
椿は店内をふらふらしながらも少し薄いノートと万年筆を見つけた。
値段は手持ちのお金でぎりぎりまかなえる。
あとはしおりの値段を見て買うかどうか決めようと店員を待った。
「たいへんおまたせいたしました!しおりは全部で5種類です。」
「ありがとう、しおりはおいくらですか?このノートと万年筆もほしくって…」
「そのノート私が初めて仕入れたんです!でしたらしおり2枚はつけさせてもらいますよ。嬉しいなぁ母にはページ数が半端だから売れないって言われちゃったんですけど。」
結局少しおしゃべりして、ノートと万年筆…それにおまけしてもらったしおり2枚をしめて980Gで支払った。
所持金はあと20Gである。