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とりあえず、お勧めの本ってこれなんですか?

 蔓薔薇図書館に到着するとグリブへの挨拶だけはしっかり行うと、本棚から3冊選び出した椿は吹雪にお勧めです、というなり図書館の奥へと消えた。



「あー…はじめまして、吹雪です…」


「いらっしゃいませ、僕はこの図書館の管理をしていますグリブです。」


何やら通じ合うものがあったらしく、微笑みを浮かべた2人であった。


「椿さん、しばらくいらっしゃらないと思ったら…そうですか、旅人さんだからすぐに司書になっていらっしゃるかと思っていたんですが。

所持金がそこまでないとは…しかもINT (知力)、MND (精神力)も足らなかったのに…自力で博士号まで行くだなんて…信じられません。」


「その博士号ってなんなんだ?」


「椿さんは言語博士という称号をおもちなんです、ですので博士号。

博士号にはほかにもいくつかありまして科学博士、種族博士なんかもあります。詳しくは『博士号とその詳細』や『博士号取得に向けた100日間戦争』なんかが読みやすいかと思います。」


「いや、椿のおすすめをまず読むよ…(なんだか2冊目がおかしいよな。)」


「では、そちらのソファか閲覧室をご利用ください…今回は特別にしおりをお貸出しいたします、読み終わらなかった場合そちらを挟んでいただけましたら次会いらした時に続きから読めますので。」


 それではごゆっくり、とグリブもまたカウンターに戻るとようやく吹雪は周りを観察できる余裕が生まれた。

図書館の中の装飾を吹雪はすごいなぁと眺めながらもその真価に気が付くこともなくロビー近くのソファに腰かけて本を開いた。


しかし残念なことに進められた本のうち2冊はヴェルテュ語だったため自然と除外した。


「読めない…からパス。でも残ったこれもなぁ…『神々の話裏話』って…」


それでも読めそうな本はこれだけ、他の本を探すのは面倒、掲示板を見るもの勧められたものを蔑ろにするようで失礼だと思い吹雪はおとなしくページをめくっていった。


「薄いからすぐに読めそうだな…」





『神々の話裏話』


 琥珀の世界


 昔々、何もないところに一人の神様がいた。

神様は寂しくて寂しくて、自分の体をいくつかに分けた。


 神様の肉は大地に、神様の涙と流れた血は川や海に、そして神様の息吹は大気を生んだ。

神様は次にもっといろんな部分を分けた。

そこに願いを込めると3人の小さな神様がいた。

一人は煌々と輝くお日様の神様。

一人は真っ黒な塊のような夜の神様。

その二人の間にいた一番小さな神様は自分では光れないけど二人といると輝かしく見えた月の神様。


 3人の神様は大きな一番最初の神様を慰めた。

けど大きな神様は色々なところを分けてしまったからもう命の火は弱かった。

大きな神様は、自分をもっともっと分けることにした。

そして、いろんな生き物を産み出すとそれぞれ夜の神様と月の神様に託した。

私には何も託さないのかとお日様の神様は切なく思うと大きな神様はお前には私の魂を託そうといいました。


大きな神様はお日様の神様に自分を託し、小さな神様たちの中で眠りにつきました。

その魂はとても大きな大きな琥珀となって世界の中にあるのだとか。


 魂を託された神様は2人とともに世界を守ることにしました。

産み出された命たちが生きていけるように様々なもっと小さい神様…精霊と聖獣を生みました。

精霊たちはとても小さいので普通の生き物には見えません、でも琥珀になった神様を思ってお願いすると、その願いをかなえてくれるようになりました。

聖獣はめったに姿を現しません、きっと神様の琥珀を守ったりしているのでしょう。

それでも聖獣に会いたいならば神様のために戦いなさい、そのうち現れてあなたに加護を告げるでしょう。


これが、子供に教える物語。

でも、これでは普通の物語。

私が教えますは裏話。


もしあなたがエルフなら、夜の神様を崇めなさい。

もしあなたが竜族ならば、夜の神を守り己の祖先も祀りなさい。

もしあなたが魔族ならば、夜の神を愛しなさい。

もしあなたが人族ならば、月の神を崇めなさい。

もしあなたが妖精ならば、月の神を愛し精霊を信じなさい。

もしあなたが亜人種ならば、お日様の神を祀りなさい。


もしあなたがエルフならいつか聖域に行きつくでしょう。

もしあなたが竜族なら古より生きる祖先に出会うでしょう。

もしあなたが魔族なら彼方の王に出会うでしょう。

もしあなたが人族ならいつか礎を築くでしょう。

もしあなたが妖精ならばいつか精霊に出会うでしょう。

もしあなたが亜人種ならばいつか加護を得るでしょう。


心しなさい、世界は大きな神なのだと。

心しなさい、あなたの血肉もすべて神が元なのだと。

そしてそれを誇りに思いなさい。


なすべき事は沢山あるが、それは全てが神のお導きなのだと。


お日様の神が望むのはただただ大きな神の復活。

夜の神が望むのはただただ大きな神の安寧。

月の神が望むのはただただ二人の神の幸せ。


大きな神が望むのは寂しくないこの世界。


心しなさい、決してその願いを軽んじてはならないと。

心しなさい、決してその存在を疑ってはならぬ。



著:アルゲマイン




「これ、オープニングの続きか…?」


誰もが知っている、神殿での勉強会と守護神。

キャラクターを作るときに示された自分の守護神…


お日様の神がきっと主祭壇に祀られている【太陽と戦の女神】

夜の神が【夜と知恵の神】

月の神が【月と情愛の女神】


吹雪は亜人種だから月と情愛の女神の勉強会に出ていた。

しかし、この本を読む限りでは吹雪が心するべきは太陽と戦の女神だという事になる。


「…いや、でも勉強会ではちゃんと上昇していたぜ?これ攻略にかかわるんじゃ…」


今なおこのゲームの重要クエストは解放されていないものが多くその方法すら判明していない。

普通ならそろそろ上位組がいくつかネタばらしを始める事なのに。


「まだ、わかってないことが…前提条件があるんじゃ…例えば…」


吹雪は偶然だとは思えなかった。

司書なんて特殊な職業さえあるこのゲームにこのような本があることが、作為的にも思えた。


「もしあなたが亜人種ならばいつか加護を得るでしょう。…か、これきっと聖獣の事だよな…おかしいと思ったんだお祈りの初めに出る種族で精霊と聖獣だけは選べない。

これ、上位種族だと思ってたんだけど…いや…イベントキャラなら…」



やべー超ヤバいこれすごいヒントじゃねぇ?


吹雪はこの時初めて重要イベントの入り口に立った。


「グリブさん!!すいませんこの本の続きとか似たのとか、作者一緒のとかありますか!!!」


「どれ…『神々の話裏話』ですか、これ都市伝説的なものなんですよ、端から神殿にケンカ売ってますから。

すみません…このアルゲマインさんの本はこれだけしか残ってないんです。

『聖獣とランデブー』なんて自費出版した途端狩られて…カノンの町の図書館か古本屋の爺なら持ってるかもしれませんが…」


「都市伝説なんですか?」


「それはそうですよ、主神よりもさらに上の神様の存在を仄めかしているし。

神殿は認めてないんですよ。子供のころ教えられた話はしりませんか?こう始まるんです。」


 太陽と戦の女神はすべてを見守る温かき女神。

その女神の愛のもと世界が生まれた。

夜と知恵の神が統べるのはエルフ、竜、魔、精霊

月と情愛の女神が統べるのは人、妖精、亜人種、聖獣


3柱の神の愛のもと我らは今日も生かされている。

感謝し讃えよ。

その思いは琥珀となって世界の中で光るだろう。

その琥珀こそ、神々に力を与えるのだ。


「あ、それは知ってます。オープニングでも流れたし…でも…結構違うものですね。」


「実はこの本出版されたのすごく古くて…古すぎていつからあるか解らないんです、それは写本なんですが、原本はもう読める状態ではなくって、修復と保存で精一杯ってところなんです。」



吹雪には確信めいた思いがあった。


これはヒントだと。

これが素なんだ、ここから琥珀の世界が生まれたんだ。


「ねぇ。これの関連本…カノンの町だよね…どこにあるんだ?」


椿の知らないところで、初めてこの琥珀の世界重要クエスト踏破者メンバー入りが決まった瞬間だった。



主人公不在。

あれ??

風呂敷をたたむはずが広げた上にさらに広げて…


説明回で申し訳ありません。


『神々の話裏話』本文を修正。

重要箇所だからって台詞にのみ記載はダメですよね。

教えていただきありがとうございます!(3/22)



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