とりあえず、勉強会って。
指定された時間よりもさらに5分早く椿はディレクシオン神殿にいた。
そこには月と情愛の女神が統べる人族、妖精族、亜人種族、聖獣族たちがひしめいていた。
エルフの椿を見るとひそひそとささやきあうのはプレイヤーなのだろう。
自分の加護神すら知らない新参者への視線は厳しい。
「こんばんは、椿さん。お早かったですねぇ、これが必要な物ですよ…もし煩わしいようでしたら二階席もあります、そちらはまだ人が少ないですからご自由になさってください…では失礼しますね。」
押し付けるようにしてマティエは他の神官たちのもとへ向かってしまった。
とりあえず指示された階段をすすめば、すぐに2階の回廊に出た。
適当に扉を開ければ、一面だけ大きく開けた小部屋になっていた。
5脚並んだ椅子はどれもフカフカそうで、最前列の1脚を選びを見下ろすと人々がうごめいているのが見ることができた。
実際は入ったことはないがオペラや劇場の貴賓席を椿は思い出していた。
もらったのは経典と学びのローブ、祝福の鈴というアイテムだった。
祝福の鈴と学びのローブは装備アイテムらしいので椿はようやく初期装備から変更した。
そして、勉強会とやらは始まった。
通常、琥珀の世界では1日に2度、無料で基礎ステータスの一時上昇を起こすイベントがある。
それは早朝6時にある夜明けの祈り、別名主神の勉強会。
この黄昏の勉強会と夜の勉強会である。
それぞれが属する神の勉強会と主神である夜明けの勉強会の計2回がそれにあたる。
効果は勉強会への参加回数や継続回数の合計、PKの有無や職種などで効果は変わってくるものの基本的にはHPの一時上限上昇であったり回避率や経験値取得の上昇、生産職は成功率の上昇などである。
神殿に行って、5分ほどでその時の効果が付与されるため約1時間の間にプレイヤーたちは入れ代わり立ち代わり訪れ、付与されると同時に各々フィールドに向かうのであった。
プレイヤーたちは気にしたことがないがこのとき流れるBGMは確かに経典を読む声であり、意味のあるものだ。
神学語で世界誕生からこれから起きるであろう終末の時までを読み上げているのだ。
そう、椿はこれを狙っていた。
教えてくれなければ盗めばいい。
椿は通った、毎日3回。
買ったノートは知りえた単語なんかで真っ黒になった。
神官たちに絵の下にある分を読んでもらい意味を書き取り、地道に学んだ。
信仰するものに神官たちは優しい。
そうやっている時間以外は図書館で本を読んだ、神学語で書かれたわずかな蔵書をひたすら読んだ。
そのうち埃にまみれていた神学語辞書をみつけ、とうとう椿はやり遂げた。
スキル言語習得のおかげで運営が定めていた4,000時間以上の勉強を半分以下に抑えて習得した。
イベント『神学語の習得』発生
11/12
12.神官に経典の朗読を聞いてもらう。
発生条件をすべて行ったのではない、それらをすっ飛ばしてここまで来たという事である。
運営もまさかこんな発生の仕方があるなんて思わなかっただろう。
しかしこの琥珀の世界をつかさどるメインコンピューターの自動演算システムは判断した。
これはイベント発生が必要とされる事態だと。
椿は押しかけた。
そしてクリアした。
イベント『神学語の習得』クリア
クリア報酬 神学語の習得に伴う経験値取得と称号の付与。
必要称号があつまりました、ランクアップしますか?
Yes/No
Yes
称号ヴェルテュ語マスター、旧ヴェルテュ語マスター、神学語マスター、スキル古語解読を称号言語博士へとランクアップします。
称号言語博士特殊効果によりINT常時10パーセント上昇。
冬花 椿
LV:1
種族:エルフ
職業:―
スキル:察知、言語習得
称号:言語博士
HP (体力):210
MP (マジックポイント):120
SP (スキルポイント):100
STR (筋力):50
DEX (器用):150
INT (知力):198
MND (精神力):100
装備:学びのローブ(装備時スキル効果2倍)
祝福の鈴(神々からお覚えがめでたくなるらしい)
アイテム:ノート、経典
特殊アイテム:呪式万年筆
所持金:20G




