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真・恋姫†無双 ~司馬懿仲達の憂鬱~  作者: 堕落論
序章 『始まりの始まり』
8/30

婿入りなんてしないからねっ!!

どうも堕落論です。『司馬懿仲達の憂鬱』第八話お送りさせていただきます。


今回は袁家筆頭の方の話ではございますが、麗羽様出て来るのは後半少しのみの登場です。麗羽ファンの皆様申し訳ありません。


まあ何はともあれお楽しみ頂ければ幸いです。



『司馬懿仲達の憂鬱』第八話を始める前に、これだけは言っておくッ! おれは今 超弩級のショックって奴を、ほんのちょっぴりだが体験した……い……いや……体験したというよりは、まったくおれの理解の範疇をブッチギリで超えていたのだが……


あ……ありのまま 今 起こった事を話すぜっ!


「本初の婿になって袁家を継ぐ気はないかしら?」


な……何を言っているのか、わからねーと思うが、おれも、袁隗様から何を言われたかってのが、よくわからなかったんだ……正直言って頭がどうにかなりそうだった… エイプリルフールだとかドッキリだとか……そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえっ!


もっともっと恐ろしい『袁家の企み』ってものの片鱗を味わったぜ……






…………………っ! これは失礼いたしました。あまりのショックで何処ぞのボル○レフさんの様になるほど、私はパニックを起こしているみたいですねえ。


ハイ、落ち着く為に深呼吸しましょうね……「ヒッツ、ヒッツ、フー、ヒッツ、ヒッツ、フー」…………? ああ、まだ駄目ですねえ……非常に動揺してますねえ……深呼吸のつもりが前世で妻の初産の時に嫌々ながら憶えさせられたラマーズ法呼吸になってますね……


「……達、……たのですか? ……達、…………なさい」


私の目の前で袁隗様が何やら私に向かって心配そうな顔をなされて、私に向かって呼びかけています。私は恐らく目は開いているのでしょうが、脳機能の方が完全停止状態になっているようで全く袁隗様の言葉が耳に入って来ません。


「仲達っ! 仲達っ! ああ、どうしたのかしら……いつもは冷静沈着な仲達が、こんなに惚けてしまうなんて……もしかして仲達。貴方も本初……いや袁家との結び付きを強固にする事を望んでいたのかしら……だから嬉しさでこの様になってしまっているのね」


ああ、袁隗様……一体何を言いやがってるのですか、貴女は。そろそろ正気に戻っておかないと、どんどん話がヤバイ方向へと進んで行きかねない様ですね。


「いやいや御言葉ですが袁隗様……天地神明に誓ってそれはありませんっ!!」


「あらやだ……もう素に戻っちゃったのかしら……やっぱり、イジリ甲斐の無い子だわねえ、貴方って」


イジリ甲斐の無い子って……袁隗様、私は貴女の事を、かなり天然だと思っていたのですが、実は天然に見せかけた腹黒だったんですね……流石、汝南袁氏の中では一番有能であったと後に言われる方ですねえ……まあ、そんな事はどうでも良いとして……


「まあ、イジリ甲斐があるかどうかは別にして……キチンとした説明をして下さるんでしょうね」


「あら? 何の事に対しての説明がいるのかしら?」


何を開き直って、いけしゃあしゃあと言ってますかねえ、この方は……私は、ほぼ表情を無くした能面の様な顔で袁隗様を見ます。


「勿論、先程、袁隗様が私に言った世迷言に対しての詳しい説明ですよ」


「詳しい説明が欲しいほど、その話に興味があるのね。もう仲達ったら……嬉しいのだったら、ちゃんと言葉でそう伝えてくれないと、お姉さん分かんないなあ」


「嬉しいか嬉しくないかと言うのは私の顔を見れば、ある程度の御理解がいただけるかと思うのですが……あと、誰がお姉さんですか、誰が?」


「え~っ……仲達ちゃん、ノリが悪い~っ!!」


袁隗様……貴女、第七話の後半とキャラが完全に違っちゃってますよ……袁隗様、それで良いんですか?


「全く……ノリで私の一生の大事な相方を決められて堪りますか……それと仲達ちゃんは止めて下さい。流石に袁隗様でも、言葉遣いに多少の無理が見えますので……」


「うっ……そうかしら……でも、でもね、仲達。貴方が姉上の所の本初と一緒になってくれれば、我々袁家縁の者にとっても貴方にとっても非常に有意義な事だとは思わないかしら? 貴方が本初に婿入りする事によって我々袁家は司馬懿仲達と言う『王佐の才』にも等しい人物を袁家の手中に出来るし、一方の貴方は袁家筆頭の姉上の後ろ盾を得られるし、勿論この私も貴方の為ならば協力を惜しまないわよ。どう? お互いに取って良い話よね。ええ、絶対に良い話だわ! 間違い無く良い話だわ!」


あぁ……駄目ですね、この人。完全に『袁家モード』に突入しましたねえ……えっ? 『袁家モード』って何かって? それはですね……本初さんを始めとして袁隗様や、袁逢様等、袁家の方々は一度御自分の意見が正しいと思われたら、周りの事など考えなく突っ走ってしまい、その度に配下の者や取り巻きが悲惨な目に逢うんですよ。そうですね……ゲーム内の本初さんの御姿を思い浮かべて貰えれば、今の状況は良く御理解いただけるかとは思うのですが……


「それにね、仲達。今なら本初以外にもね、家の娘の満来、懿達、仁達の三人も漏れなくつけて上げるわよ、あの娘達も仲達の事は満更でもないようだし……本妻は本初で決まりでしょうから第二夫人以降は家の娘達三人と言う事で……そうねえ、新居は洛陽城の南側に元皇族の方が住まわれていた大きな屋敷が空き家になっていた筈だし……そこで仲達には少なくとも夫人一人について三人ほど子を成して貰って……」


「ちょっ、ちょっと待って下さい、袁隗様? 今、御自分が何を仰ってるか貴女自身、御理解されていますか? そして何故、袁隗様が私の未来予想図を勝手にどんどん創り上げて行っているのですかっ!?」


「あら? 本初や私の娘達だけでは不満なのかしら……? ならば揚州の公路と張勲も一緒につけようかしら? それでも不満なのかしら……もっ、もしかして仲達! 駄、駄目よ、仲達……確かに私は未亡人であるけれど……娘達と共に私まで仲達の下へ嫁ぐなんて……でも、それもありかしら……私も主人が死んでからはそれなりの期間、操を立てている事だし……」


ああ……『袁家モード』が暴走状態に入ってしまいましたね……話がどんどん飛躍して行ってますね……これはちょっとやそっとでは沈静化しませんねえ……仕方ありません……こうなれば最後の手段です。私は懐に隠し持った最終兵器を握る手に力を込めました。


「袁隗様っ!! お願いですから、いい加減少しは私の話を御聞き下さいっ!!」


スッパ~ン! と、小気味良いハリセンの音が執務室に響きます。何故ハリセンが登場してくるのかと言いますと、極稀に起こる『袁家モード』状態の袁隗様の暴走を止める為にそれ用のハリセンを懐に常備しているのですよ。フッフッフ……備えあれば憂いなしと言うでしょう。まあ、致し方無い事とは言え、主である袁隗様をハリセンで叩くと言う事に若干心は痛みますがね。


「痛ぁ~いっ……何? 何が起こったのかしら? あら? 仲達…………その右手に持っている物は……もしかして……私、またヤッテしまったのかしら……」


「どうやら正気に戻られた様ですねえ……ええ、それもかなりな暴走状態でしたので、畏れながらこれを使用させて頂きました」


私は右手に持っていたハリセンを態とらしく両手に持ち変えて、袁隗様に恭しく差し出す様にします。


「うぅっ……それにしたって……そのハリセンは、ちょっと酷いんじゃあなぁい……」


袁隗様は涙目で私を見て拗ねる様な素振りを見せますが


「何を仰ってるのですか……本初さんとの話だけに留まらず、お嬢さん達の事や……果ては御自分の欲望を半ば剥き出しにしてたじゃあないですか。私が止めていなかったら、全くどうなっていた事か……」


「そうそう、その本初との話だけれどねえ……」


そう言って袁隗様は何事も無かったかのように話を戻します……全く形勢が不利になると、直ぐに知らぬ顔を決め込むのですから……


「今度はキチンと説明して頂けるんですよね。 袁隗様っ!!」


「もう、そんな怖い顔しなくても良いじゃないのぉ……男前が台無しよ……仲達」


「先程は確か、眠たそうな目のちょっとだらしが無いとか仰られていた様な気がするのですが……」


「もう……なんてイケズな子なのかしら、そんなんじゃ婿の貰い手がなくなるわよ」


「そんな事は大きなお世話です……ってか、なんで私は婿入りが前提なんですかっ!!」


と、まあこの様に全く話が進まずに、袁隗様と二人で、ギャーギャーと袁家の二枚看板よろしく掛け合い漫才をしていた時


「次陽、私だ……忙しい所を悪いが急用でね、ちょっと失礼するわよ」


ああ、この声は……間違い無く袁逢様ですね………殆ど説明がありませんでしたが袁隗様が仰られていた婿入りの話し、顔良さんが言っていたのは本初さんは袁逢様の所に居るという事、そして今、袁逢様が何ともタイミング良く、袁隗様の執務室を訪れられた事、以上の事を鑑みるに…………あれ? 私の逃げ道って、どんどん閉ざされてませんか?




―――宮城内に多数有る庭園の亭―――



袁逢様が執務室に来られて急用とやらを袁隗様と話し合われた後、我々は宮城内に多数ある庭園の亭の一つで御茶の時間を過ごしております。


まあ、急用である様なので席を外しますと私が言っても、袁隗様、袁逢様両名から、この場に居る様に強く仰せつけられたり、仕事向きの話であるのに何故か本初さんも同行していたり、急用と言うのが大した話じゃあ無かったり、話が終わった後に何故か急に御茶でもしようと言う事になったりとツッコミたい部分は山ほどあるのですが……


「…………と、言う訳なの。ああ、それと以前に次陽から申請のあった洛陽の区画整理の件ですが、ほぼ次陽の原案通りに私の部署で実行する事になったわ。あれは良く出来た案ね、帝も至極感心しておられましたよ」


「ありがとうございます、姉上。しかし、あの区画整理の案の企画立案は、此処に控えております仲達が全て一人で行ったものですわ。お褒めの言葉なら私では無く、仲達にかけてやって下さい」


「ほう、以前から出来る者だとは思っていましたが、帝が興味をもたれる様な案を出せる程の知恵者であったのね……しかし、あの様な案件を、たった一人で考えられるなど、いや全く恐れ入ったわ。この様な優秀な者を持っているとは……次陽、貴女が羨ましいわ」


「何を仰いますの、姉上。仲達の才は私だけのものではございませんわ。彼の者の才は袁家の……延いては国家の才であると私は常々考えておりますわ」


何でしょうか……この首筋がうすら寒くなるような会話は……区画整理の件は私個人の案であると袁逢様も元々御存知の筈だったじゃあないですか……それに御二人の会話は、仲人が見合い相手の略歴を非常に誇張して話している様にしか聞こえないのですけど……まあ救いは余程話がつまらないのか、本初さんが心此処にあらずで金髪ロールを弄って遊んでくれている事ぐらいですねえ。


「そう……仲達の才は袁家のものだけでなく国家の才ね……次陽に其処まで言わせるとは中々前途有望な若者じゃあないの……ところで仲達」


「はい、何でございましょうや。袁逢様」


「そんなに畏まらなくても、いつもの貴方のままで良いわ。家の本初と面識はあるのよねえ……」


「はい、我が母の出仕に伴い洛陽に参りまして、袁隗様の下で働かせて貰う間に袁紹様にも多々御世話になりました」


御世話に……とは言うものの殆ど全部、顔良さんが御世話してくれたんですがね……


「そう……仲達、貴方の様な知恵者の目から見て我が娘は、どの様に見えるかしら?」


「どの様に見えるか……でございますか?」


これは気を付けなければいけませんね……答え方一つで、私が窮地に陥るのが目に見えていますねえ……しかも、どう答えても地雷を踏みそうな気がするだけにタチが悪いですねえ。それに袁隗様も袁逢様も、暗に、余計な事は言うんじゃあ無い的な雰囲気を醸し出していますしねえ……さてどう答えたものでしょうか?


「畏れながら申し上げます。私の様な若輩者が袁家筆頭のお嬢様を評するなど、とても出来ません……しかし、それでは袁逢様の御言葉に背く事にもなりましょうから、一つだけ私見を述べさせていただきますと、袁本初様に於かれましては、流石四世三公を輩出した家柄を継ぐだけの器量をお持ちになった素晴らしいお嬢様であり、更に精進してこのまま長じれば英雄としての資質も充分であると私には見受けられます」


うん……我乍ら良く頑張りました。非常に無難でどうとでも取れる様な素晴らしい回答です。決して人の話を聞かないとか、華麗に雄々しくって意味分かんないとかは言ってませんよ……


「そう……期待していた応えとは多少違うけれども、貴方が娘に悪い感情を持っていない事が分かって良かったわ。今後とも娘の事を頼むわね」


あれ? 何か答え方間違いましたか? いや、決して本初さんに悪い感情は持ち合わせてはいませんが、今後とも頼むと言う様な答えは予期しなかったんですが……


「流石は仲達ね。あれだけの話で此処まで理解してくれていたなんて……」


袁隗様? 私が何を理解しているというのですか? 貴女、壮絶な勘違いをなされてませんか?


「本初、私は政務に戻りますが、貴女は今暫く此処で仲達に、今後の国の在り方についての教えを受けなさい。仲達、娘には次陽にした話はそれとなく通してあります……だから、そのつもりでお願いしますね」


袁逢様は、そう言うと私と本初さんを交互に見た後に、満足そうな笑顔で亭を出て行かれます。それを見送った袁隗様も、それはそれは素晴らしく優しい笑顔で我々にこう言います。


「仲達、貴方、今からは休みで良いから、御茶を片付け終わったら本初を連れて街にでも行って来なさいな。そして貴方が献策した街の区割を本初に説明しておあげなさい」


ちょっ、ちょっと待って下さい……何ですか? その、後は若い二人に任せて……みたいな退出の仕方は、これじゃあ、まるで本当にお見合いの様じゃあないですか。


「では、仲達に本初、私も政務に戻ります……それでは楽しいひと時をお過ごしなさい。頑張るのよ仲達」


袁逢様に続いて、袁隗様迄もいなくなってしまい亭に残るのは私と本初さんのみです……しかし、二人きりというのは気まずいですねえ……でも、流石は本初さんですね、私と二人だけになってしまったというのに悠々と御茶を飲んでいらっしゃいます。袁逢様の話だと、私の婿入りの話もそれとなく伝わっているらしいですが……だとしたら案外この方って大物なのかもしれませんねえ。


「ところで仲達さん……」


御茶を飲み終わったらしく本初さんが初めて口を開きました。孟徳さん程では無いにしても、この方も流石は袁家を背負って立つ人材です。やはりそこはかとなく威厳をお持ちですね。


「はい、何でしょうか?」


「お母様に連れられて此処まで来ましたが……」


「はい……」


一体何を言われるのでしょうか……? やはり本初さんも望まぬ縁談は御嫌なんでしょうねえ……勿論、私とて御免被りますがね……


「仲達さん……何で、私はこの様な場所で貴方と御茶など飲んでいるのかしら?」


ハハハ……やっぱりこの方は人の話を、それも御自分のお母様の話しでも、まともに聞いていないのですねえ……そう考えた私の身体を、言うに言われぬ脱力感が一気に襲いました。

いやあ、最後の方だけチョコッと麗羽様を喋らせましたが結構難しいですねえ。


やはり、あの高笑いをしてこその麗羽様だと考えさせられました。次回は麗羽様との洛陽散策を予定いたしております。恐らく引っ張り廻されての珍道中となるであろうとは思いますが宜しければ御付き合い下さいませ。


次回は12月10日(土)の投稿予定でございます。


気温が下がり体調を崩し易くなってきています、読者の皆様も御身体には充分気を付けて下さいませ。


それでは次回の講釈で……堕落論でした

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