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真・恋姫†無双 ~司馬懿仲達の憂鬱~  作者: 堕落論
序章 『始まりの始まり』
7/30

一難去ってまた一難 

予定では30日更新だったのですが来週は少し忙しくなりそうなので多少早めに投稿させて頂きました。


それでは『司馬懿仲達の憂鬱』少しでも楽しんで頂ければ幸いです。



――― 宮中廊下にて ―――



「はあぁ~っ、はあぁ~っ……ぜぇ~っ、ぜぇ~っ……」


のっけから誠に失礼いたしました。いやいや別に怪しい者じゃあありませんよ。先程孟徳さんの魔の手から逃れる為に、脱兎のごとく閲覧室を逃げ出した結果でございますよ。


「あ~っ、疲れた……足が……足が、もう動きません……」


私は確かに司馬家では一番足が速く『逃げの仲達』とまで呼ばれてはいるのですが、如何せん体力が……体力が無さ過ぎますね。


「そう言えば、確か、袁隗様に呼ばれていたんでしたね……あ~、全く孟徳さんのおかげで、使わなくても良い体力まで使ってしまいましたよ」


私が足を投げ出し、だらしなく宮中の柱に凭れ掛って座っておりますと


「お~い! 斗詩ぃ~っ! 来てみろよぉ~っ、こんな所で野垂れ死んでる奴がいんぜぇ~っ!」


「……もぅ、文ちゃんったらぁ……宮中なんだから、そんなに大きな声出さないでよぉ……それに生き倒れの人なんかがいる訳ないじゃ………って、仲達さん?」


ああ、袁家の二枚看板の御二人でしたか……しかし、野垂れ死にとは酷い言われ様ですねえ……先程の孟徳さんに言われた朴念仁ってのも酷かったですけれど、今度は死人にまでされてしまいましたか……


「ああ、お久しぶりです顔良さんに文醜さん……この様な無様な格好で失礼致します」


「どっ、どうしたんですか? こんな所で生き倒れなんて……」


いやいや顔良さん? 決して私は生き倒れなどでは無いですからね……何気に貴女も文醜さんと一緒で酷い事言いますね……


「いや、ちょっと激しい運動をしましたものでね……その、何と言うか……極度の疲労で動けないのですよ」


「はぁ~っ? 仲達の旦那が運動? 一体今度は何をやらかして逃げてんだよ?」


「ちょ、ちょっと文ちゃん失礼だよぉ……仲達さんに」


「何をやらかして……と、言う所にツッコミたい所ではありますが、まあ良いでしょう。実は先程、孟徳さんに仕官の話で捕まりそうになったので、私の特技『三十六計逃げるに如かず』を使って脱出してきた所なんですよ」


「「ああっ……」」


私の話を聞いて、御二人は声を揃えて頷かれていましたが、何故か二人の目からは共通して『御愁傷様です』的な色合いが多々含まれていたのは私の思いこみ過ぎですよね……多分


「それはそうと顔良さんと文醜さんが御二人だけで宮中にいるなんて……如何されたのですか?」


「いえ、二人だけでは無くて麗羽様も御一緒なのですが、只今麗羽様は袁逢様の所にいらしゃるので、こうして文ちゃんと一緒に時間を潰しているんですよ」


「あたいはこんな所で時間を潰すぐらいだったら、何処か誰にも見付からない場所で斗詩と二人で気持ち良い事したいんだけどなあ……」


「ちょっと……文ちゃん、いきなり何を言い出すのよぅ……仲達さんだっているのにぃ……」


ああ、そう言えば原作でも二人はこんな感じだったですねえ……私とした事が失念していましたよ。


「ああ、文醜さん……貴女にとって非常に有意義な情報を一つ御教えしましょう。ちょっと耳をお貸し下さい」


「ん? 有意義な情報ってなんだぁ? 仲達の旦那」


そう言いながら側に来た文醜さんに私は顔良さんには絶対に聞こえない様な小声で話します。


「この廊下の先の庭園に宮中の侍女達が休憩時に使う亭があるのですよ。其処なら今の時間は誰も近付きませんし、多少宮城の母屋からは離れてますので、余程大きな声を出したりしない限りは何をしても分からない筈ですよ……」


「それ本当かよ旦那っ!! 斗詩っ! 斗詩っ! あっち行こうぜっ!」


私の言った事を聞いた文醜さんの目が爛々と輝いて顔良さんの腕を掴んで強引に亭に向かって走り出します。


「ちょっ、ちょっと文ちゃん……っ、一体どうしたのよぉ。痛いっ、痛いってば……仲達さん! 一体文ちゃんに何を話したんですかぁ?」 


「いやいや、何時も仲睦まじい貴女方の為に、ちょっとした贈り物ですよ。文醜さんも顔良さんも頑張って下さいねえ」


「恩にきるぜぇっ! 仲達の旦那っ!」


「うわぁ~ん、何か御嫁に行けなくなっちゃう様な気がするのはどうしてえぇ!」


「大丈夫だよっ! 斗詩の事なら、あたいがちゃんと責任とって嫁にもらってやるからさ」


「それ全然大丈夫じゃないよぉ……文ちゃん」


二人の掛け合い漫才が廊下の向こうに消えて行きます、御二人の未来に幸あらん事を……さてと私も何とか動けそうなぐらいまでは回復した様です。それではそろそろ私も袁隗様の所へ向かうとしましょうか。しかし、本初さんも袁逢様に呼ばれている様でしたね……私が袁隗様の所に呼ばれている事と何か関係があるのでしょうか?










―――― 宮中内 司徒 袁隗の執務室 ―――



「恐れ入ります。遅くなりましたが司馬懿仲達、只今参上いたしました」


「ああ、仲達。来てくれたのですね。遠慮は要らないから御入りなさい」


「はい、それでは失礼致します」


ここは宮中内に用意された、司徒である袁隗様専用の執務室です。私は袁隗様の秘書の様な仕事をしてはいますが、あくまでも私的な秘書である為に普段は袁隗様の公邸の方で住み込みで仕事をやっております。ですから此方の宮中での執務室など滅多な事では呼び付けられたりはしません。まあ仮に私が袁隗様に用事があっても官位や役職も持たない若造など宮中に入れてくれる筈がありませんが……


「急に呼び出してごめんなさいね……でもどうしても貴方に聞いて欲しい事だから……」


袁隗様はその端正な顔を多少歪められて、部下である私に対しても謝罪の言葉を述べてくれます。しかし、袁隗様、いつも御綺麗ですねえ……年齢は確か30代前半ぐらいだったと記憶してはおりますが、どう見ても20代前半にしか見えないですよね。これで三人の子持ちだと言うのですから更に驚いてしまいますよ。


「何を仰いますか、私は袁隗様の私設秘書筆頭の立場でございますので、何時如何なる時でも求めに応じて主の下へ駆け付ける事に否やは御座いません」


そう言うと私は袁隗様に揖礼して頭を垂れます。


「私の前でそんなに堅苦しく構える事は無いわ。公邸でいる時の様に眠たそうな目のちょっとだらしが無い、何時もの仲達で良いのよ」


袁隗様は柔和な笑みを浮かべて私に御茶を勧めます。しかし此処でも私は、眠たそうな目でちょっとだらしが無いって……少し身嗜みや日常の態度を正さなければなりませんねえ……


「先程、資料室で孟徳さんとお会いした折にも、彼女からも眠たそうな目と言われたのですが……」


「あら? 貴方、孟徳と会ったの? 丁度良かったわ、あの娘には色々貴方の事をお願いしているのよ」


「袁隗様……御気持ちは大変ありがたく思うのですが、私は今のままで充分に満足しています。それとも私が御側にいるのは御迷惑でしょうか?」


「何を言っているの……この権謀渦巻く宮中で政務をして行く中で、仲達がいてくれるだけで、どれだけ助かっているか……でも仲達、今の私の力では貴方の献策を実現する事も、貴方の能力を充分に活かす事も出来ないのよ……」


袁隗様は心底辛そうな顔でそう言われました。が、袁隗様には申し訳ありませんが私は今の所は全く仕官しようとか、出世しようとかの望みは無いんですよ。その理由の一つには未だ『天の御遣い 北郷一刀』が一体どの陣営に降るのかがハッキリしていない事がありますのでね……


「だから仲達、貴方の様に才有る者は、その才を充分に活かせる場所で思う存分働いて欲しいの……それが貴方の為であり、延いてはこの国の為であると、私は思うのよ」


「私の事を買い被り過ぎですよ、袁隗様。それに御自分の事を過小評価しすぎです……今の宮中で宦官達の権利を削る様な献策は、例えそれを帝が献策されたとしても、色々な理由を付けて有耶無耶にされてしまうでしょう。決して袁隗様の御力が無い訳ではありませんよ」


事実、司空の袁逢様と、袁隗様、袁逢様の御二人に比べれば御若いですが尚書郎の王允様、この御二方も宦官達の横槍や圧力にも決して屈せずに、この漢と言う国と其処に住まう民達の為に身命を懸けて日々の仕事に取り組んでおられますが、この御二方ですら内朝の宦官達に献策を悉く握り潰されておられているのが現状ですからねえ。


「それに袁隗様の様な実績のある方ですら苦心していると言うのに、私みたいな若造が何を言った所で黙殺される事が分かりきっていますし、延いては上げ足を取られて処刑される危険性も多々あります。ならば袁隗様の下で更に研鑽を積み時節の到来を待つ方が、私にとっては急いで名を売る為に仕官したりするよりは、余程有意義な事なのですが……如何でしょうか?」


「はぁ~っ……しかし、仲達。貴方は本当に考えが老成していますね……一見、面倒臭がりの様に見えて、実は物事を綿密に考え答えを導き出している……まるで、我々よりも遥かに長く生きている様に思えますよ」


まあそうでしょうねえ……私は、見た目は若者そのものですが、本当は転生前からの事を考えると実年齢60ン才ですからねえ……もう老人ですよ老人!! 本来なら何年も前に還暦迎えているんですから血気盛んに……ってな訳にはいかないんですよ。


「いやあ、ただ単に臆病なだけで、思慮分別があっての考えでは無いですよ……」


「貴方こそ、またそうやって自分の事を卑下するじゃないの……フフフ」


袁隗様は含み笑いをしながら、私の顔を見つめます。我が主とは言え、間違い無く美人の部類に入る人妻に見つめられると、ちょっと照れてしまいますねえ……勿論、袁隗様にはそんな気は毛頭ない事は充分承知の上ですがね……ああ、自分で言って何だか哀しくなってきましたねえ……


「仲達が、これからも私の下で居てくれるのは嬉しい反面、貴方の今後の事を考えると複雑な気持ちだわ」


「まあ、あまり御気になさらぬ様にして下さい。私が好きでやっている事ですから……」


「それに姉上の事もあるし……」


「はいっ? 袁逢様が如何なされたのですか?」


「ええ、今日貴方を態々此処に呼んだ理由が、その事なのだけれど……」


「はあっ……?」


何時もの袁隗様らしくない御姿ですねえ……どうも私を呼んだ理由を言うか、言うまいか非常に迷っておられる様にも見受けられるのですけれど……しかし、どうしたのでしょうか? 何故か先程から私の脳内で危険を知らせるベルが鳴り続けているのですが……


「ねえ、仲達……」


「はい、何でしょうか?」


「唐突だけれど貴方……本初の婿になって袁家を継ぐ気はないかしら?」


「は……? はいぃ~~~~~~~~~っ!?」


袁隗様から聞かされた、私の想像の斜め上を遥か遠くに高速でぶっ飛んで行く様な言葉は、一瞬で私に動作不良を起こさせるほど衝撃的な言葉でした。

え~取り敢えず、第七話投稿させて頂きました……


前書きにも書かせて頂きましたが来週の頭はちょっとウチのバイト達が期末試験等で御休みだそうで、何故か私に負担が……まあ、店長って言う役職って結構理不尽なものですからねえ(泣)


取り敢えず次回の投稿予定ですが12月3日(土)を予定しております。


それでは次回の講釈で……堕落論でした。

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