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真・恋姫†無双 ~司馬懿仲達の憂鬱~  作者: 堕落論
序章 『始まりの始まり』
6/30

司馬懿 VS 曹孟徳  後半戦

どうも堕落論です。


リアルが多少忙しくて更新が遅れてしまいましたが『司馬懿仲達の憂鬱』を更新させて頂きました。


少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。

「どうしたの……? 私の顔に何か付いているかしら……?」


おっと……、孟徳さんの顔を見つめたままだった様ですね。おや? 何故孟徳さんの顔が赤いのでしょうか? 


「別に、何でも無いですよ」


「そうかしら? それにしては、いつも眠たそうな貴方の眼が、今迄見た事もないくらい真剣だったわよ」


「眠たそうな目ってのも、随分な言い草ですねえ。出来たら思慮深い眼とか、愁いを帯びた眼差しとか言って貰いたいものなんですが……」


「はいはい、冗談はいいから、貴方は私の問いに真面目に答えなさいな」


孟徳さんは、私の言い分を華麗にスルーした後に、呆れた様に顔を背け左手をヒラヒラさせて言いました……ムウ……私としてはかなり真面目に言った筈なのですがねえ。


「で、私の問いに……って、まだ私に質問が御有りなんですか?」


「当たり前でしょう。先程貴方が答えた内容は、今後起こるであろう事が切欠で、私の下に人材が集まって来るなどと言う眉唾ものの話じゃないの」


「眉唾ものとは失礼な……私はですねえ、現状に鑑みて、此処洛陽に集まってくる情報を分析し実地見分が必要ならば、北は幽州から南は交州の地まで馬を飛ばしてまでも生きた情報を集めている訳なんですよ。そして、生きた情報を私自らが吟味に吟味を重ねたその上で導きだした答えが、先程、孟徳さんに御話しさせて頂いた話なんですよ」


「(そんなに息巻く様な事かしら……)分かったわよ、分かったから仲達、そんなに身を乗り出して来ないで頂戴。顔が近い、顔がっ!」


「ああ、私とした事が、これは失礼しました。しかし先程御話しした事は決して眉唾ものの話ではございませんよ…………孟徳さん……今から話す事については他言無用に願いたいのですが」


私はそう言うと辺りを一度確認したうえで孟徳さんに向き直り、声を出来るだけ潜めて彼女に話しかけます。


「貴女も危惧されている様に、現在霊帝の側に侍る中常侍達の専横な振舞いにより宮中は、まず内朝組と外朝組の政治闘争や禁軍軍部と文官との主導権の奪い合い、そして霊帝の後継者問題などの非常に根の深い、私に言わせれば馬鹿馬鹿しい事この上ない権力闘争が渦巻いております」


「ええ、確かにそうね」


「はい、宮中の大半の馬鹿者共の愚かな権力闘争の所為で洛陽ですら民達の心の安寧は図れずに、治安は悪化し、とてもではありませんが此処が帝のおわしあそばす地とは思えぬほどとなっております。都がこの様な状態では地方の様子などは言うまでもありますまい」


取り敢えずは私の話を聞いてくれてはいる孟徳さんですが、その顔には「今更何を言い出すのか……?」と言いいたげな表情がありありと浮かんでいますが、私はそれを無視して話を続けます。


「恐らく、早くて1~2年……遅くとも3年の間には其々の地方で燻り続けている火種が大きな炎となり、その炎を上手く操れる様な人物を頭目に据えて、この国全土を炎で覆いつくす事でしょう。残念ながら今更これを朝廷の力で防ぐ事は敵いません。しかし朝廷単体の力では各地で頻発する騒乱の対処は出来ずとも、州を治める有力諸侯達は恐らく自分の領地内での騒乱は鎮圧する事が出来るでしょう」


「仲達……一体貴方は何が言いたいのかしら? 私は回りくどい言い方は嫌いなのよ」


「まあ簡単に言えば恐らくはこの騒乱によって霊帝の威光、いや、漢の国の威光は地に堕ちるでしょう……そして漢と言う国、延いては国を統治するべき帝の斜陽を嘲笑うが如くに各地の諸侯達が日の出の勢いの如く台頭して来るでしょう……その後は坂道を転がり落ちる様に血で血を洗う乱世に向かって一直線って所でしょうか」


「仲達! 貴方自分が何を言ってるのか分かっているの?」


ほう、やはり後の覇王曹孟徳とはいえ、現段階では私の言は不敬に思われるのですねえ。先程までの表情が一変して、私の事を得体の知れない者を見る様な眼で見られていますし、その視線にも私を咎める色が濃いですねえ。


「ええ、今自分が孟徳さんに申し上げた事の重大さや不穏な言葉の数々などの全て理解したうえで私は、曹孟徳と御話をしているのですよ」


「仲達……貴方……」


「現状ではこの数年の間に事実上漢と言う国は有名無実の国となります。その後に恐らくは新しき国の覇権を懸けての大きな戦が始まる事を避ける事は出来ません。私はその覇権を懸けて戦う諸侯の中では、孟徳さん、貴女が最も『覇王』の位置に近い方だと思っているのですがね……」


「私が……覇王……」


「そうですよ、まあ、貴女以外では汝南袁氏の袁紹様に袁術様、今は袁術様の配下におられますが、長紗の太守であった今は亡き孫堅様の後を御継ぎになられた孫策様、荊州の劉表殿、涼州の馬騰様、それに西涼に駐屯されている河東太守の董卓様ぐらいまでが時代の英雄、英傑たる資格をお持ちの方々だと私は考えますが……まあもっとも今、私が名を挙げた方々全員にその気があるかないかは別問題ですがね」


私は会話を一旦止めてから、息を整えて再度話しだします。


「要するに現時点において、やれ太守だとか将軍だなどと言っている有象無象の無能な輩は、今から来る激動の時代に殆どの者が対応出来ないか、対応出来たとしてもあまりの無力さに力ある者に膝を屈するしか道が残されていないのですよ……如何ですか? これでもまだ私の言う事が貴女にとって眉唾ものの話ですか?」


孟徳さんは私が話し終えた後、暫くの間腕を組んで考え事をしておられましたが、何事かを決意したかのような顔で私に問われました


「仲達、貴方は、この曹孟徳が畏れ多くも帝を差し置いていずれこの国に覇を唱える者だと言うのかしら?」


「さて……? 私はこの国の誰よりも孟徳さんに『覇王』の資質や資格があると言っただけで、今後、孟徳さんが貴女自身の覇道を行くのか、或いは帝を助けて今一度漢と言う国を盛り上げるのかなどと言う遠い未来の事などは巷で噂になっている菅輅とか言う占い師でもなければ分かりませんよ」 


私がそう言い終わり読みかけの資料を閉じて席を立とうとすると


「お待ちなさいな、仲達」


「ええぇ……まだ何か質問がおありなんですかぁっ……」


「なんで貴方は私の問い掛けにいちいち面倒そうな顔をするのかしら? 春蘭や秋蘭なら私が声をかければ、それこそ大輪の花が開いた様な明るさで応えるのに……」


「あの御二方と私を比べるのは如何なものかと思いますけど……で、御質問とは? 私この後袁隗様の元に伺わなければならないので出来ましたらお早目に願いたいのですが……」


「そう手間は取らせないわよ。先程の話で貴方が現在の状況をどう捉えているかは良く分かったわ、でも、それだけでは貴方が私への仕官を断り続けている理由にはならないわよ。聞けば貴方、麗羽の所の仕官も断り続けているそうじゃない。何故そこまで頑なに仕官を拒否するのかしら? それとも何か他に貴方自身が遣るべき事でもあるのかしら?」


ああ、そう言えば本初さんの所の顔良さんから何度も御誘いを受けましたね、あの顔良さんの良妻賢母で苦労人って所は、私のタイプなんですがねえ、あの方とだったら幸せな家庭が築けそ……ゲフンゲフン……いやいや、しかし残念ながら、本初さんの所に仕官ってのはちょっとねえ……


「まだ、その話を引っ張りますか……」


「当たり前でしょう、貴方のその智勇を目の前にして、そう簡単に諦める程、この曹孟徳、愚者では無いわ。貴方が仕官をしない理由をハッキリと聞き糺すまで私は貴方の事を諦めないわよ」


そう言い放って此方を見つめる孟徳さんの目は間違いなく捕食者の目です。いい加減な言い逃れは許さないと、言う意志がビンビンと此方に伝わって来ますねえ。う~ん、面倒臭いですねえ……でも中途半端な事を言えば言ったで、孟徳さんは諦めないでしょうしねえ……取り敢えずこの場は私の考えの中でも一番危険そうな考えでも話してやり過ごしましょうか。


「私の遣りたい事ですか……? そうですねえ確かに色々な仕官を断り続けている理由は私自身が目標とする事がある為なんですが……」


「それは私の下では叶えられない事なのかしら?」


「う~ん……孟徳さんの下で、と言うよりも誰の下でも無理なんじゃあないですかねえ、私の目標を理解して頂くと言う望みを叶えるのは……」


転生してから20年弱、ずっと考えて来た事を思い返してみても、自分の考えがこの時代には非常にそぐわない考えであり、この考えに賛同してくれる様な人達も見当たらないまま今に至っている訳なのですから、もしも、この考えを実行に移すならば、これはもう自分一人で遣って行かなければならないのであろうと思っているだけなんですがね。


「私はね、帝を頂点としたこの国の在り方を変えたいのですよ」


「仲達、貴方正気かしら?」


「ええ、充分正気ですよ。私は現在の様な民に何の徳も益も齎さない帝を頂点とした制度など全く必要無いと思っています。そしてその帝に対して盲目的な忠誠を誓う事が臣下の礼と考えている者達や、己の既得権を最優先させるが為に帝の力を利用している宮中の者達も必要ありません。国とはその様な愚か者達の為にあるのではなく、その国の民達の為に存在するものでなければならないと私は考えます。私にとっては国の民一人一人が希望を持って暮らして行ける世の中を造る事が、馬鹿馬鹿しい覇権争いをするよりか余程重要な事なんですよ」


孟徳さんは目を見開いたまま、私の方を見て固まっています。


「具体的に言えば、国政は有力諸侯の中から入れ札で国を纏める者を選び、便宜上それを首相とでも呼びましょうか……その首相と各州の代表とでの合議制で運営して行くのが理想と考えます。一方で帝は政治には全く関わらずに、国家鎮護の為の祭祀を取り仕切り民の為の祈りを捧げていただきます。この考えの肝心な所は首相の任命権や合議制の閣議決定で出来た法令などの批准権は帝にあると言う事で、これを持って帝は『君臨すれども統治せず』の状態になり政治の実権は有力諸侯による合議制に委ねられます。勿論この様な案が最終決定では無く、あくまでも私の思案ではありますが、概ねこれが私の目指して行きたい目標です」


私の考えは転生前の私が生きていた日本での天皇制と議会制に倣っています。最も日本でも紆余曲折を経て現行の状態となっていった訳ですが……


「如何ですか……? この様な危険極まりない思想を持ち、飼いならす事が難しい厄介な者と知ってまで貴女は私を幕下に欲しがりますか? 貴女にとって獅子身中の虫になる可能性が高い者を身近に置けますか?」


「そ、それは……」


「先程迄と違って言い淀んだと言う事は、私を仕官させる事を躊躇した……と、言う事と考えて宜しいですね。妥当な判断です。では、私はこれにて失礼いたします」


私は不本意ではありますが、孟徳さんが見せた一瞬の隙を突いて、畳み掛ける様に言葉を紡いで席を立ち閲覧室を退出しようとしました。


「お待ちなさいっ!!」


しかし、情けない事に孟徳さんの一喝で、私の足は持ち主の意志に全く関係なく一歩も動けなくなってしまいました……日本の戦国の世に武道の達人が使ったっていう不動金縛りの術って、術に掛かるとこんな感じなんですかねえ……いやいやそんな悠長な事考えている場合じゃあありませんね。


「仲達、今言った事は、貴方の本心なのかしら? 貴方程の者が、到底実現不可能な妄想に近い考えを持つ筈がないわ。確かに今言った事も貴方の考えた案の一つでしょうけれど、貴方の真の目標はもっと別にあるのではなくて?」


ちいっ、流石は覇王曹孟徳ですね。一瞬にして私の考えを見抜きましたか……しかし、この方一体何処までチートなんでしょうねえ……一度この方の正式なパラメーターを拝見したいものですね。まあ、馬鹿な事考える前に、さて一体どうやってこの難局を切り抜けましょうかねえ……


「流石は孟徳さんですねえ……私如きの苦し紛れの策では、貴女の事を謀る事は出来ませんか……」


そう言いながら、私は孟徳さんの側に立ちます。身長が現代で言う所の180cm弱の私が、腰掛けている孟徳さんを見下ろす様な形になっている事が心苦しいのですが、背に腹は代えられませんので此処は一つ不躾を許して貰って、失礼な事を承知の上で孟徳さんの顔を見つめます。


「私の事を謀ろうなんて、百年早いわよ」


あのお、孟徳さん、その言い回しは、この後漢の時代ではどうなんでしょうって感じなんですけれど……まあそんな事はどうでも良い事ですね。


「どうしたのかしら急に黙り込んで?」


あっ、また孟徳さんの目が捕食者の目になりましたね……う~ん、この様な手段はあまり使いたくなかったのですが……


「いやあ、参りました……しかし、こうやって孟徳さんと話をしていると、如何に貴女が魅力的なお嬢さんであるかと言う事を再度認識させられますねえ……」


「なっ、いきなり何を言っているのかしら、貴方はっ!」


おやおや、いきなり顔を真っ赤にしてワタワタとするなんて、なんて新鮮な孟徳さんなんでしょう……


「いえいえ、この司馬懿仲達。感じた事をそのまま申しただけで他意は御座いませんよ」


「あ、貴方、熱でもあるんじゃないのかしら? 急に何の脈絡も無い様な事を言い出すなんて」


ん~どちらかと言えば熱があるのは、首筋辺りまで真っ赤に染まった貴方の方ではないかと私は思うのですがねえ……


「これは曹孟徳ともあろう御方が異な事を仰る。魅力的なものを魅力的、綺麗なものを綺麗、素晴らしいものを素晴らしいと素直に口にした私の言を疑われるとは……それに素晴らしいとかの賛辞は孟徳さんならば聞き慣れているでしょうに」


「聞き慣れているとかいないとかの問題ではなくて、何故、貴方みたいな朴念仁がいきなりそんな事を言い出すのかと言う事よっ!!」


あれっ? 孟徳さんの中での私の評価って朴念仁なんですか? そもそも朴念仁って和製漢語ですよ。何でそんな単語貴女が知っているんですか? いやいやそんな事よりも私ってそんなに……え~……貴女一体私の事をどう見ていたのでしょうか?


「朴念仁には朴念仁なりの鬱屈した愛情表現と言うものがあるのですよ、孟徳さん。それに貴女は、女性としての魅力は勿論の事、成熟した人としての魅力をも持ち合わせていますよ。たまには元譲殿や妙才殿だけでは無く私の事も閨にお誘いくだされば……」


「なっ、なっ、何を……閨になんて……」


私の思いもかけぬ言動によって、旨い具合に孟徳さんの覇気が散り、またもや隙が出来ました。逃げるならば今ですね。


「と、言う訳で、とっても魅力的な孟徳さんには申し訳ないのですが……私の様な朴念仁では孟徳さんの無聊をなぐさめる事は出来かねますので、これで失礼しま~す」


三十六計逃げるにしかず、私は脱兎のごとく閲覧室を逃げ出しました。こう見えても私、武は全く駄目ですが逃げ脚だけは『司馬の八達』の中で一番速いんですよ。


「待ちなさいっ!! 司馬懿仲達!! 私は絶対に貴方を仕官させる事を諦めないわよっ!!」


遥か遠くの方で、何か恐ろしい孟徳さんの怒声が聞こえて来た様な気がしましたが


「ああ、聞こえない、聞こえない。私には何も聞こえない」


私はそう言いながら宮中の長い廊下を、両耳を塞ぎ、頭を振りながら逃げて行くのでした。

どうも長い間お待たせしました『司馬懿仲達の憂鬱』 VS曹孟徳後半戦を書かせて頂きました。


先週の土曜日曜と二日間私用で京都に行っていたのですが、土曜に京都駅に着いて、あまりの警備の物々しさに「やっぱ都会って凄え!!」等と馬鹿な事を思っていたら、その日は、あの一躍時の人となっていたブータン国王夫妻と皇太子殿下が京都にいらっしゃる予定だったとの事でした(苦笑)

そりゃあ、国賓と皇族が御出でになるならあのぐらいにもなるわさ(笑)


まあそんなこんなで京都の友人の所に一泊二日で滞在した訳ですが結局観光は一切せずに立ち寄った場所は「とらの○な」と、「○ロンブックス」と、「ゲマ○」と言う見事なまでのヨタライフ!!


だってオイラの住んでる所には全部無いんだもんっ!!まあこの二日間で充分エロ成分も補充出来た事だし今後も頑張って行きたいと思いますので皆様宜しくお願い致します。


尚、次回更新は11/30(水)の予定です。


それでは次回の講釈で……堕落論でした。

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