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真・恋姫†無双 ~司馬懿仲達の憂鬱~  作者: 堕落論
第一章  『南陽改革大作戦!!』
23/30

南陽改革 大作戦!! ――改革狂想曲 最終章 きっと最後は大団円!? 前編――

どうもお初の方は初めまして、駄作者を見捨てずに追いかけてくれている非常にありがたい方には御久し振りです。「駄文、拙文を書ける程度の能力」(笑)の駄作者 堕落論でございます。


虹ファン閉鎖以降の作者自身の迷走ぶりの自己嫌悪と、同時に夏真っ盛りを迎えて、仕事と学校休みで私の所に来ている娘との生活とで中々PCに向かう事が出来ずにダラダラと日が過ぎてしまい誠に申し訳ございませんでした<(_ _)>


季節も秋になって、元気一杯遊ぶだけ遊んだ娘も元嫁の元に帰り、秋の行事の地元の祭りも無事に終了した今、恥ずかしながらまた駄文を再開したいと思います。


今後ともなんやかやと遅れたり行方不明(笑)になったりする事もあるでしょうが、皆さま出来るだけ生温い目で見て頂ければ幸いかと思います。


では駄文の続きをどうぞ。 また後書きでお会いしましょう。     堕落論でした。


――――荊州滞在六十五日目 南陽城内 「国家戦略情報室 南陽支部 改革推進庁」――――





我々が南陽を訪れてから大凡で二月強、改革に着手し、その流れの中で孫策さんの真名を教えてもらって以降に孫家の重鎮の方々から全員の真名を預かってからは、ほぼ一月半以上経ちました。


南陽城に改革推進庁を創設してから今日迄、決して順調に物事が運んだ訳では無く色々とありました。ええ、主に私が…………酔っ払いの鎮圧にあたったり、長時間の正座をさせられたり、武器を携えた同僚に追いかけられたり、夜な夜な愚痴を聞かされつつ大事な酒を孫家の頭領にしこたま呑まれたり…………


あれ……? 何故か色々な事を思い出す度に両目から涙が溢れて止まりませんよ……


まあ、そんなこんなで色々あった日々ですが、昨日までで当初予定されていた改革計画の初期段階は粗方終了し、新制度の施行を明日に控えた私は、今後新制度の中核を担う孫家の方々と現在最終的な打ち合わせを行っている最中でございます。








「……公路お嬢様の私兵を洛陽へ撤収して、その後に寿春と建業の孫家の者達を移動……と、通り道にある他の城に余計な騒動を起こさない配慮である、纏まった数の兵を動かす為に必要な許可証に私の印を押して……じゃあ祭さん、これを持って準備が済み次第に寿春と建業に向かって下さい」


「応っ! しかと承った! して愛将殿よ、儂が権殿や甘興覇を此処に連れ戻って来る時に貴殿はおられるのか?」


「ん~残念ながら、祭さんの出立予定日と思われる数日後には洛陽に戻らなければならない手筈になっていますからねえ……」


「ふうむ、それはちと残念じゃのお……愛将殿の事は権殿に紹介しておきたかったのじゃがな……」


「まあ、今回はしょうがないと言う事で、御気持ちだけはありがたく頂いておきますよ。また、改めて御会いできる日も来るでしょうから、祭さんの方から孫仲謀様には宜しくお伝えくださる様にお願い致します」


今後の事を考えると孫権さんだけにでも御会いして、顔繋ぎをしておきたいのは山々なのですが、如何せん今後の黄巾の乱に対するスケジュールが非常に押している今の現状では、これ以上南陽に留まるのは難しいと我々は判断し、近日中には此処を引き払う事を正式に決定致しました。


「では次に穏さん、新規官吏達に明日から施行される新しい税の運用の説明は終了していますか?」


「はぁい~~運用上の支障は全く無いくらいになってますぅ~」


この改革に孫家の方々を引っ張り込んだ初期段階から、穏さんには一貫して新規の税導入に関しての様々な取り組みと、実際それを行う事によって生じる弊害の有無をシュミレートして貰っていました。それ故に明日以降、穏さんには洛陽で言う所の大司農府の様な仕事を主にやって頂く事になっております。


「そうですか……では新規官吏達には全く問題は無さそうですね」


「ええ、今現在私の下に配属されている文官さん達は、今迄の袁術さんの体制下では有能で在るが故に不遇を囲っていた方々ですから、今迄の分を取り返そうと勤労意欲は高いですよぉ~~~~」


穏さんの自信に満ちた言葉に、私も釣られる様にして今後の展望を口にしてしまいます。


「ふむ、恐らく現行の制度からの脱却を目指して作成した新しい税収の形を組み込んでいる為に、最初の内はかなり不安定な状態が頻繁に起こりますが、一年後に今現在の南陽城の戸数を下回らない限りは、それ以降、年度を重ねる毎にかなり租税の増収を見込めると思いますよ」


「ほえぇ~、戸数が下回らないだけで増収になっていくんですかぁ?」


「はい私の計算上ではそうなる筈なんですがね……取り敢えず国税でもある『人頭税』の税率を変える事は出来ませんけれども、公路お嬢様や張勲さんが私的に課した各種の土地付加税である所の『代役銭』の様な類は一切徴収しませんし、他の諸々の出所が怪しい税はすべて廃止致しました。それだけでも同じ荊州の他の土地よりは、個人収入に対しての税率がかなり低くなります」


難しい話は省きますが、基本的にこの時代の税制は政府の戸籍に編入された者を資産の多少で区別して、地方政府に納税をしております。土地に関する税と言うのは案外軽いのですが人頭税はかなり高めに設定されており、それに加えて、地方領主が私腹を肥やす為に自分勝手に税の様な物を決めて人頭税と共に徴収しますので民達は非常に苦しい生活を余儀なくされています。これを今回の税制改革では率先的に手を入れて、出来るだけ税率を抑えて払い易くする事に主眼を置いています。


此処で一つ問題……と、言うよりは現行の南陽城の主達の事なのですが、まあ先程も言った様に、大抵の支配者は私腹を肥やす為に新たな税を掛けるのですが、此処の公路お嬢様と御目付役の張勲さんは……う~ん、厳密に言えば私腹を肥やす……って言うのですかねえ? 主に張勲さんが、お嬢様の好物である蜂蜜の購入と、お嬢様を飾り立てる為の服飾雑貨等に費やす為に新たに税を掛けたんですよねえ。取り敢えずはそれも立派な『公金横領』ではあるので罪には問えるのですが……まあ、話を先に進めましょうね。


「確かに税率の低さだけを見れば、この先大丈夫かなぁ~って考えちゃいますよねぇ~っ。でも……愛将さんは大丈夫っていうんですよねぇ~」


「勿論大丈夫ですよ。まあ実際に現行の税制を続けて行くのであれば、我々の試算では二~三年の間に南陽城内に住まう民達の凡そ十二人に一人は家や田畑を棄てて、人としての道を踏み外してしまうであろうと言う恐ろしい予測も立っています」


「人の道を踏み外す……ですか?」


「ええ、具体的に言えば南陽を棄てて野盗等に身を落とすって事で、至極当たり前のことですが、この様な状況になり始めたら税など集まる筈もなく、国の徭役や南陽の雑役ですら覚束無い状態になりますよね。ですから国庫の増収を図ろうとして無理に無理を重ねるぐらいならば、一時的に税収は減るでしょうが安定した徴収が行われる程度の税率で、物事を進めて行く方が安全ですよ」


「確かにそういう面は多々ありますねぇ~」


「それに、今後この土地の税率の低さや、新たに南陽に入って来る孫家の兵と街の侠客の人達合同での自警団による治安の安定等で、今よりも南陽は人の移住が一気に増えて来るはずですが一概にこれは良い面ばかりでは無いのも確かですねえ。爆発的な人口の増加は慢性的な物資不足を引き起こしますし、何よりも南陽城自体の許容量が今後問題になって来るでしょうからねえ」


移民や植民の様に計画的に為政者によって人口が増えて行くのならば良いのですが、今後の南陽の人口推移に関しては、後に起こるであろう黄巾の乱次第で非常に増加数が読み難い状態となっています。此処まで洛陽組主体でやっておいて、何とも無責任な言葉ではありますが後は孫家の方々の政治手腕に期待いたしましょう。


「では最後に……午後からの城内の民の代表者達との折衝は冥琳さん……お任せして宜しいでしょうか?」


「うむ、任された」


「恐らくは城内の街の有力者達と市場の会頭、それに自警団を組まれている侠の頭領達が出席されると思われますが大丈夫ですか………って、その様な戯言、孫家の美周朗に言う事ではありませんでしたね。ハハハ……」


「こちらこそ洛陽にその人ありと謳われる愛将殿に、その様に言われると随分とむず痒いものだな。フフフ……」


「またその様な過大評価を……まあ、それは良いとして、充分御理解を頂けているとは思いますが何事も始めが肝要です。為政者が変わり心穏やかでない南陽の民達の不安を、出来るだけ早く取り除いてあげてくださるよう、お願い致します」


私は冥琳さんに揖礼をして深く頭を垂れます。


「あっ、愛将どの……その様な事をなさらずとも……」


私が深く頭を垂れたのを見た冥琳さんが慌てた様子で、私の行為を止めに入ります。


「いえ、このぐらいはさせて下さい。本来なら今からが一番繊細で手が掛かる局面になるのですが、そこを我々洛陽組が手を出してしまうと後々に民意が割れてしまう可能性を否定出来ませんしね」


「うむ確かに……しかし困難ではあるが、それを成さねば人心は把握出来ぬし、此の南陽如きで躓いている事など我々孫家には許されていないからな」


「まあ、あまり肩肘張らないでゆっくりとそして確実に物事を進める様にして下さい……って、この様な助言も孫家の智の柱石である冥琳さんには必要ありませんでしたね……ハハハハ」


「いやいや、洛陽の心ある人々の間で知らぬ者無しと迄呼ばれる、司馬家の麒麟児に言葉を掛けて頂けると言うのは悪い気はせぬな……フフフ」


私と冥琳さんはお互いの顔を見て笑いあいます。今迄黙っていた雪蓮さんが、それを見てまるでチェシャ猫の様な瞳で私達を揶揄する声を掛けて来ます。


「今の南陽で最も性格悪い二人が、な~に黒い笑いで牽制しあっているんだか……」


「何か言ったか……? 雪蓮」


「おや? 雪蓮さん……いらっしゃったんですか? あまりにも静かだったんで、私はてっきり昨晩私の部屋で人の制止を振り切って呑んだ老酒で二日酔かと思っていたんですが……」


私の台詞の状況が良く分からないであろうと思われる読者の方々の為に説明させて頂くと、昨晩この大酒のみの孫家の頭領が、またもや私の部屋を窓から強襲しやがりまして、散々日々の愚痴をこぼしていかれたのですが、その時に私が秘蔵していた老酒を見つけ出して一気に呑みやがったのですよ……隠してあった最後の酒を呑んだ雪蓮さんは、上機嫌で窓からお帰りになったのですが、私はその後に何時もの如く冷たい頬笑みの華炎さんに夜空が白んで来るまで懇々と説教をされたのでした……トホホ


「あらあ仲達……なんか物凄く嫌味に聞こえるわよ……フッフッフッ」


「ああそれなら全く問題ありませんよ。間違い無く今言った事は貴女に対する嫌味ですから……ハッハッハッ」


先程の冥琳さんとの笑いとは違って、今度は雪蓮さんとお互いに渇いた笑いで笑いあいますが、何故か雪蓮さんの腰にある『南海覇王』の柄を雪蓮さんの手が握りしめて、今にも鞘から抜きそうな気がするのは気のせいですよね……うん、気のせいです


「まあ、仲達で遊ぶのはこれぐらいにしておいて……ところで仲達、貴方以外の面々はどうしたのかしら?」


私が、今にも刀を抜きそうな右手を仰視している事に気付いた雪蓮さんは、さり気無く手を柄から話して素知らぬ顔で私に問いかけます。しかし今貴女、私で遊ぶと言いやがりましたか?


「まあ、思いきりツッコミたい所が有った様な気がしますが、それは置いといて私以外の洛陽組の方々は、諸々の手続きの最終調整に文字通り南陽城内を走り回っていますし、田元皓さんに至っては特別に袁周陽様へ、お馬鹿主従二人の今後の処遇報告の為に私の報告書を持って一度洛陽に戻ってもらっているのですよ」


実際問題として、今迄南陽の政治をまかりなりにも取り仕切って来た官吏達を大量に解雇して、新規の官吏達と新しい政を一から始めようとするのですから現場の混乱は相当なものになります。我々は出来るだけその混乱を次の孫家の方々に引き継がない様にする為に、ここ一週間ほど殆ど不眠不休で現状の整理をしてまいりまして、本日は諸々の最後の調整を書く部署で行っている最中であります。


「……で、愛将は今からどうするのかしら……?」


「私ですか……取り敢えず最後の仕上げを……と、考えているのですが」


「最後の仕上げ……? まさか袁術と張勲に……」


雪蓮さんの言葉に、この場でいらっしゃる孫家の方々が複雑な表情をします。


「ええ、この様な仕事は、例え情報戦略室の者であったとしても、私以外の方にして頂くのは荷が重すぎるでしょうし、まさか孫家の方々にやって頂く訳にも参りませんからね……」


現南陽城主である袁公路お嬢様と、その目付役である張勲さんに引導を渡す事。そう、これが南陽の改革最後の仕上げであり、私、司馬仲達の此処での最後の仕事であり最も重要な仕事でもあるのです。とは言え、やはり知人に解雇通告を行うと言う事は精神的にも来るモノがある訳でありまして、まあ一言で言えば……


「はあ……非常に憂鬱ではありますねえ」


晴れ渡った南陽の空とは全く正反対のどんよりとした気分が私の心の内を覆っていました。






――――荊州滞在六十五日目 南陽城内 「玉座の間 扉前」――――






現在私は南陽城内の玉座の間の扉の前におります。只今より部屋の中にいらっしゃる公路お嬢様と張勲さんに面会して非常に言い辛い事を伝えなければならないのですが……さてどうしたものでしょうかねえ。取り敢えず公路お嬢様の親衛隊の長に抜擢した紀霊さんには、昨晩に事情を打ち明けてこの場での席は外して頂いており、部屋に居るのは公路お嬢様と張勲さんだけになっている筈ですが、何度も言う様に気が進みませんねえ……





「ん~、例え公路お嬢様を洛陽に連れ帰ったとしても、あまり本人の為にならない様な気が……いやいや、かと言って、南陽に放置では間違い無く騒動の種になるだろうし……う~ん、どうしたものか……やはり打てる手立ては、あれぐらいか……」


私が態度を決めかねて玉座の間に入るのを躊躇っているのを見ていた、何時の間にか私に付いて来ていた華炎さんが、私に向かって励ます様に声を掛けてくれます。


「君は此処まで来て何をブツブツ言っているのだい?  君だって公路嬢ちゃんを如何にかしてあげたいから、色々手を打って来たのではないのかい? 大丈夫っ!! 君なら絶対にあの二人を上手く説得出来るから……」


「あの華炎さん。励ましの御言葉は非常に嬉しいのですが……ひょっとして貴女、公路お嬢様達との話し合いの場に参加される気ですか? 確か貴女を始めとした洛陽組の方々の本日の予定は、皆空いていなかった筈ですが……?」


「ふん、やっぱり僕達をこの話し合い……と、言うよりは最後通告の場に同席させたくないから皆の予定が詰まっている日を、敢て選んだのだね」


「ああ、やはり貴女には気付かれてしまいましたか……決して情報室の皆に良い顔をしたいと言う訳じゃあないのですが、ただ、話の転がり方にもよりますが、公路お嬢様達との話が拗れれば私もそれ相応に態度を変えなければいけませんからねえ。その為には今迄貴女方に見せた事が無い様な酷い一面を見せるかもしれないですし、聞くに堪えない言葉の暴力を使用しなければいけなくなるかもしれません。私としてはその様な場に貴女方を同席させる事が良い結果を生むとは思えないのですがねえ」


「そんな事は君に言われなくたって百も承知さ。でも、あの日袁隗様の私邸の執務室で僕達は、何時如何なる時でも君の側に僕達の誰かは君の側付にいる事を誓ったのさ。本来なら部局全員で公路嬢ちゃんとの話し合いに臨みたかったんだけど、優希は城内の警備隊の配備の最終確認があるし、春日は工兵隊の兵士達の指揮を取って城外に出て行っているから、結局僕一人になっちゃったけどね」


「貴女お一人だけ……と、言われましてもねえ…………」


そうは言いましたが実際の所、この話し合いに私以外の方を同席させたくない本当の理由は、改革庁の長官は私であるので、解雇通告と言うこの時代では死刑宣告にも等しい通告を受けた者達の怨恨が私に向くのは一向に構わないのです。が、しかし、私が気になるのは、寧ろこの話し合いにただ単に同席していたからといった事だけで、私が大事に思っている方々が危険な目に遭ったりする事の方が非常に気に掛かるので、出来るだけ同席はご遠慮願頂きたいと言う事なのです。


「君が、そうやって僕達の事を気に掛けてくれる事は素直に嬉しいけれど、恐らく僕を筆頭に優希も春日も、そんな事は大きなお世話だって考えると思うよ」


「大きなお世話っ……ですか?」


「そうさ。本当に大きなお世話だね。僕達は何度も言うけれど、自らの意志で君に付き従っているのだよ、そしてこれからの時代に君の側にいる事は大なり小なり危険が伴うって事だって理解はしているつもりさ。でもね、それでも僕達は君の側に居て少しでも助けになりたいんだ」


華炎さんは強い意志の宿った眼で私に射抜く様な視線を向けて来ます。


「僕は華琳の所から派遣されている立場であって、いつかは華琳の下に戻らなければならない身ではあるけれど、出来るだけ君と共に歩みたいと誓いを立てたんだ。だから、いつまでも君の庇護の下でヌクヌクとしている訳にはいかないのさ。 どうだい理解してもらえたかい? 僕が此処に居る理由を……」


そう言って私を射抜く様な視線で見つめつつ、私の左手を優しく包んでくれる華炎さんに非常に頼もしさを感じながら


「ふっふふ……」


「どうしたんだい? 此処は笑う場面では無い様な気がするのだけれどね?」


「いやいや、もう私が何を言っても無駄みたいですね……まあ実際、本音を言うと私一人では荷が重いと思っていた所です。華炎さんに側について頂けるのであれば非常に助かります。改めて今からの話し合いの補佐をお願いします華炎さん」


「ああ、任されよう……この僕が些か頼りない君の補佐をしてあげるよ。感謝したまえ」


ああ、なんか先程よりちょっとは楽になった様な気がしますね……まあ、華炎さんならば余程の事が無い限り暴走しないですし、優希さん、春日さんよりは御し易いかもしれませんね……その様な事を考えていた矢先に華炎さんからの絶望的な一言が発せられました。


「それに、優希にも、春日にも伝令を出しておいたから、追っ付け二人も来るだろうしね」


その言葉に何故か恐怖を感じた私は、出来るだけ早くこの話し合いにケリをつけようと、玉座の間の扉を勢いよく開けるのでした。








――――荊州滞在六十五日目 南陽城内 「玉座の間」――――




些か強く扉を開け過ぎたのか、私と華炎さんはたたらを踏む様な格好で玉座の間に飛び込んでしまいました。


「何用ですか? 仲達さん。袁次陽様の家令と言う立場でありながら、汝南袁氏である美羽様を貶める様な今回の改革の言い訳でもされにまいられたのですか?」


玉座の隣に侍る張勲さんが敵対意識をむき出しにした状態で私を見据えて来ます。


「そうじゃ、そうじゃ仲達。お主は母上と叔母上の書状を好き勝手に使って、妾のモノであるこの南陽城を、高々客将扱いの孫家に渡すなぞ言語道断じゃぞ」


まあ粗方予想が出来てはいましたが、公路お嬢様も以前の袁家家令の私を見る目では無くて、明らかに敵を見る目で私を見ていますねえ。


取り敢えず玉座の間には公路お嬢様と張勲さんが予想通りいらっしゃったのですが……後一方、予想もしていなかった人物の紀霊さんがいらっしゃいました。


「おや? 紀霊さん、貴女には親衛隊員の選別を行って頂けるように指令を出した筈ですが……何故、此処でいらっしゃるのでしょうか?」


「いっ……いえ、その私は……」


案の定、紀霊さんは公路お嬢様と張勲さんに睨まれてしどろもどろになっていますねえ……こうなる事が分かっていたから紀霊さんには場を外す様に念を押していたのですけれどねえ……まあしょうがないですから助け舟でも出しておきましょうか。


「紀霊さん。只今より私は公路お嬢様と、張勲さんに大事なお話が有って此処に参った次第なのですが、先程貴女に申し渡した様に出来れば場を外して頂けたらとは思うのですが……」


「紀霊っ!! 司馬仲達の様な二枚舌の謀反人の言を聞くでないっ!! 紀霊は妾の言う事だけを聞いておればよいのじゃっ!!」


「言うに事欠いて、二枚舌の謀反人だとっ!! 貴様等っ!! それが「華炎さんっ!!」ぐっ………」


私は激高した華炎さんを制して玉座の間の二人に対して向かい合います。


「まあ、公路お嬢様がいみじくも言われた様に、私は二枚舌の謀反人なのかもしれません……が、張勲さん、今迄の様な事をしていれば遅かれ早かれ袁家からの査察は入るであろう事が傅役であり、尚且つ聡明な貴女ならお分かりであった筈ですよね」


「うっ、そ、それは……」


「公路お嬢様っ!!」


「ぴっ!! なっ、なんじゃっ、脅かすで無いぞ、仲達」


私は怒りを込めた強い口調で公路お嬢様に対して詰め寄ります。


「この際ハッキリと申し上げておきますが、この司馬仲達を二枚舌の謀反人と御呼びになるはご随意にと申し上げます。しかし、その二枚舌の謀反人に大事な南陽城の改革を全て丸投げして、例え御母上の委任状があったとしても好き勝手を御許しになられたのは一体どこの誰であるか御考えになった事は御有りでございますか?」


「うぅっ……」


「御自身の息の掛かられた親族を野放し状態で放置し、剩、様々な無茶な税を掛けてこの南陽の民を困窮させた張本人は一体何方であるのかもお考えあそばした事は御座いますかな」


「何を言うておる……この南陽の民のモノは須らく妾のモノであるのじゃ。妾のモノを妾が税として取り戻したとて何の悪い事があろう」


「はいぃ? 公路お嬢様……貴女、それ本気で仰っておられるのですか……?」


恐らくは張勲さん辺りの入れ知恵ではありましょうが、いくら年端もいかぬとは言え、御自分の言葉の意味にも気付かない公路お嬢様の無知蒙昧さに若干苛立ちを覚えますね。


「当たり前じゃろうて、妾の様に高貴な生まれの者は下賤な民達の上に立つ者じゃろ。じゃから下々の者は妾に対して崇め奉って喜んで全てを差し出すものじゃろうが。そうではないのかえ、仲達?」


(はあ……? 言うに事欠いてこの御嬢様は一体何て言葉を口にしやがりましたか……貴女一体何様のつもりで、その様な発言をされているのか御理解されていますか?)


「公路お嬢様……只今の御発言。それ相応の御考えを持って口に出された事でしょうやっ!!」


あぁ~いけませんねぇ~……出来るだけ平静を装いながら、このお馬鹿主従の相手をしようと思ってはいたのですがねえ。先程の美羽お嬢様の偽りの君主とは言えども、あまりにも情けない言葉を聞いた私は前世と現世での都合65年程の人生の中で、今迄に無いほどの憤りを感じてしまい、ついつい声を荒げてしまいました……う~ん、まだまだ人間として出来ていませんねえ。しかし、ここは一つビシッと言わなければいけない場面ですよね。


「ちょ、ちょっと愛将……相手はまだ子供なんだし……」


それまで張勲さん達を牽制していた華炎さんが、流石に私の普段とは違った様子を鋭敏に察して私を諌めようとするのですが、それを一切構わずに私は強い口調で話を続けます。


「華炎さん。相手が子供であろうが分別弁えた大人であろうが、人の上に立つ様な位にある者ならば、その高貴なる地位に対しての義務や責任と言われるものを負わなければならないのです。実際洛陽で要職に就かれている袁周陽様。次陽様の御二方などは、御自分達汝南袁家の栄達は二の次で、この漢帝国の未来の為に日々粉骨砕身の御覚悟で仕事をされていると言うのに、その方々の身内……ましてや実のお嬢様がその様な愚行をなさるなど言語道断!!」


私は美羽お嬢様を見据えながら玉座の方へと歩き出します。


「なっ、なんじゃぁっ仲達っ!! 次陽叔母上の家令如きの分在で、妾にその様な物言いと態度は無礼であろっ!! 控えやっ!!」


「いいえっ、控えませぬっ!! 公路お嬢様に於かれましては未だ未熟な君主候補生として多少の事でしたら目をつぶり、今後の貴女様の成長具合に合せた上で、袁次陽様の下において勉学でも帝王学でも最適な師を宛がうつもりでおりましたが、今現在の貴女様は人として未熟っ!! 故に、この仲達自らが貴女様のその捻じれに捻じれた心根をこの場で正してみせましょうぞっ!!」


「司馬殿っ!! その様にお嬢様を貴方如きが愚弄するのは許しませぬっ!!」


「黙らっしゃいっ!!」


玉座の前で両手を広げた張勲さんが憤怒の形相で私の目の前で仁王立ちをしますが、私は一切これに構わず右手を懐にやって大喝一声の下に、あるものを張勲さんに向かって降り降ろします。


スッパァァァァァンッ!!


それは小気味の良い音を立てて、バスガイドさんの帽子モドキを被っている張勲さんの頭頂部に快心の一撃を叩き込みます。基本的に刀剣等の武器を所持しない私が、唯一所持している武器紛い……いやいや武器と呼ぶ事さえ恥ずかしい代物。そうです、この御話の第八話で私が我が主袁隗様に対して使用した『袁家モード防止用ハリセン』です。皆さん覚えていらっしゃいましたか?


「キャッ!!」


「七乃、七乃ぉっ!! 大丈夫なのかやっ?」


まあ要は玉座に座しておられる公路お嬢様に私が近付くに際して、お嬢様を護る様にして間に立たれている張勲さんを一瞬でも良いですから戦闘不能にする為の計略であって、私の様に武力と言うものを殆ど持っていない者でも、上手く相手の隙を突ければハリセン一つで心理的動揺を起こす事が出来ます。最も、これは相手が張勲さんクラスだから可能な訳であって、少しでも腕が立つクラス、例えば顔良さんや、文醜さんなどには私如きの腕では全く歯が立たないでありましょうし、夏侯惇さんクラスに至っては私が動き出した途端に瞬殺されるのが関の山でしょうがね……


案の定、張勲さんは私の事を始めから侮っておられましたので作戦は充分成功です。私が玉座にさえ近付ければ張勲さんと紀霊さん、御二人に対しての備えは華炎さん御一人で充分に御釣りが来ます。


なにはともあれ張勲さんが頭を押さえて座り込んでいる事と、警護役の紀霊さんが惚けて突っ立っている状態の好機に、今まで何度も出て来た『逃げの仲達』のスキルを対象物に向かって後方に逃げるのでは無くて対象物に向かって突進する為に発動し、素早く公路お嬢様が座しておられる玉座に到達します。


「公路お嬢様っ、最早この場は御覚悟を……」


「……っ?! 妾を一体、ど、どどどうするつもりじゃ仲達!」


「どうするもこうするも、今言ったとおり、公路お嬢様には御覚悟を決めて頂きます」


「ひ―――っ! 妾を殺すと言うのか!?」


公路お嬢様は顔を真っ青にして今にも失神しそうになって、あらぬ事を口走ります。


「はあぁぁぁっ? 何故に私がお嬢様を弑逆しなければならないのですかねえ……それともお嬢様は首を刎ねられる程の大罪を犯されたのでしょうか?」


「ブルブルブルブル……無いっ、無いぞっ、妾にはその様な覚えは全く無いっ!! であるのに何故、仲達はその様な恐ろしい形相で妾の前に立つのかや?」


「そうですねえ……確かに、首を刎ねられるような大罪を犯してはいないものの、お嬢様が今迄この南陽で行って来た事は充分罪に問われる事であるのですよ……しかし、それは傅役の張勲さんを筆頭とした袁家の者達が、お嬢様を甘やかしてきた事が要因の一つである事は間違いありませんので、一概に全てお嬢様の所為とばかりは言えませぬが……」


「そうであろう、そうであろう。ならば妾には何の罪も過ちも無いと言う事で良いではないか。のう仲達。そろそろお前もその恐ろしい形相をやめたらどうなのじゃ……」


「何を甘えた事を仰っていやがりますかね、この御方は……まあ確かに精神的に未熟な子供故に引き起こされた事かも知れませんが、お嬢様が元となって引き起こされた全ての事柄についてはキッチリと責任は取って頂きますよ」


私はそう言うと、玉座の公路お嬢様を抱きかかえた後に、私の太股上にうつ伏せの状態で抱える様にして玉座に腰掛けます。


「ぴっ!! 何をするのじゃっ!!」


「何をするかですって……悪い事をした子のお仕置きと言うのは司馬家では父祖の代より決まっているんですよ。公路お嬢様」


私はそう言うが早いか、公路お嬢様の可愛らしいお尻に向かって、私の手を振り降ろします。


パンッ!! パンッ!! パンッ!!


「如何ですか? 公路お嬢様。少しは御自分の成された事を反省する気になられましたかな?」


「ぴっ、ぴぃ――――――っ、いっ、痛いのじゃっ! ひっく、ひっく……止めて、止めてたもぉ、仲達……七乃! 七乃! 妾を助けるのじゃ!」


「ムリ!!」


「な、なんじゃとぉ! 七乃は妾の傅役じゃろうがっ!! 今は主の危急時じゃろうに……」


「だってお嬢様、これ見てくださいよ~~~~~~~~」


今にも泣き出しそうな張勲さんの後ろには、一分の隙も無く愛用の戟を構えつつも多少呆れ顔な華炎さんが仁王立ちをしています。


「愛将……今更なのだが、僕はある程度は君を理解していると思っていたのだけれど、流石に今現在の君の行動については首を傾げざるを得ないんだけれどね……」


華炎さんは構えた戟で、張勲さんと紀霊さんの動きを牽制しつつ、私に向かって生暖かい目で小言を言って来ます。


「はいい? 私の取った行動の一体何処が理解に苦しみますかねえ? 私も幼少時には母上や姉上にこういう風に躾けられましたし、私も末妹の幼達ちゃん(8歳)を筆頭に可愛い妹達が悪戯や悪さをすれば、涙を呑んでこの様にお尻を叩いて物事の道理を教えてますよ」


「いやいや、司馬家の教育方針や、君の妹さん達に対する過剰な愛情表現はさておいてだね、何故今、公路お嬢ちゃんに対してその様な行動を取るのかが今一理解に苦しむんだがね」


「ふ~む……では、華炎さん。私から一つお尋ねしますが洛陽の本初様、南陽の公路お嬢様、御二人に対して、今一番必要なものって何だと思われますか?」


「はあ? それは今この状況で必要な問いなのかい?」


「う~ん、是が否にでも必要と言う訳でもありませんが……まあ私の方から華炎さんに質問しておいて何なのですがね、必要なものの回答は、御二人とも甘やかしてくれる側近や傅役は居ても、間違った事をした時に諌めてくれる者が傍に控えていないのです。だから遅いのかも知れませんが、せめて今此処で私が諌め役になれればと思いましてね」


「ふうん……でもだからどうだと言うんだい? 仮にその様な者に今君がなったからと言って悪行が許される訳ではないだろうに……それに君の言葉を否定するのも何なのだけれどね、御二人とも歪み方がそこそこ手遅れの様な気がするんだ。だから残念ながら君のその優しさと言うものは彼女達には全く理解されないと思うのだがね」


「その様な事はありませんよ……御二人ともまだ十分にやり直せるであろう事を私は信じています。ですから公路お嬢様も御心を入れ替えになられて、世の為人の為に尽くされますよねえ」


尻を叩く手を一向に止めず満面の笑みを持って私は、公路お嬢様に問い掛けたのですが、お嬢様から返って来た答えは……


「何を訳分からぬ事を言うておるのじゃっ! 仲達っ!! お前の様な逆臣はこの場で妾が成敗してくれるわっ!! 七乃、七乃っ!! 玉座裏に侍っておる親衛隊を呼ぶのじゃっ!!」


「はいはぁ~~~~~いっ!! では親衛隊の兵士の皆さ~~~~んっ!! 司馬さんと曹子孝さんを懲らしめちゃって下さ~~~~~いっ!!」


「ほらねっ言った通りだろう……」


「いやいや、華炎さん! ほらねっ……じゃないでしょうっ!! 玉座裏って……貴女、一気に形勢逆転じゃあないですかっ!!」


まさか玉座裏に親衛隊が侍っているなんて……いやいや、親衛隊長に抜擢した紀霊さんが部屋にいるのだから、この展開も当然考えなければいけなかった筈。私は自分の判断の甘さを悔みます。


「まあ、何事も起こりはしないと思うけれどね……」


「何事も起こりは……って、そんな悠長な事を、華炎さん……って、あれ? 確かに誰も来ませんねえ……?」


確かに本来ならば張勲さんの掛け声とともに親衛隊が、この部屋になだれ込んで来てひと悶着ある筈なのですが、誰一人として玉座に入って来ません。


「な、な、何じゃぁぁっ!! どう言う事なのじゃぁぁぁぁっ!! 七乃ぉ?」


「え――――っ、私に言われてもぉぉぉっ?」


「……………」


お馬鹿主従二人も、親衛隊長の紀霊さんも何が起きているか分からずに呆然としています……すると玉座の裏から外に通じる扉がバタンと勢い良く開かれて見覚えのある女性が二人部屋に入って来ます。


「あら、残念だけど外の兵士達には退城してもらったわよ……袁術ちゃん」


「我が主、狙う……即、死!!」


一人は『南海覇王』を引っ提げて妖艶な笑みを浮かべる雪蓮さん、もう一人は、怒りの為にかなり言葉が怪しくなっている優希さん。


「きゃぁ――――っ!! 出たのじゃ――っ!!」


「何よ、失礼ねえ。人を化け物みたいに……」


「なっ、ななななな何の用じゃっ孫策!! 妾はおまえになど用は無いのじゃっ!!」


「つれない事言うわねえ。……でも残念。私にはとっても大事な用があるの」


「ほ、ほう……なんじゃ? 用があるのならさっさと済ませば良いのじゃ……」 


「ふ―――ん。……ならばさっさと用事を済ませてしまいましょうか……それで良いわね、優希」


「了承」


そう言った後に雪蓮さんも、優希さんも共に剣を抜きます。


「な、何故に二人ともが剣を抜くのじゃ?」


「え? だって剣が無いと貴女達を殺す事が出来ないでしょう……何? それとも剣じゃ無くて縊り殺して欲しいのかしら?」


「ひ―――っ、妾を殺すと言うのかや」


「う――ん、私はまだどうしようかなぁって、考えている最中なんだけれどねえ……」


「やだやだやだっ。死にたくないのじゃ~! それに妾が死なねばならぬ様な大罪等は犯しておらぬと、仲達自身も先程言っておったではないか」


「でもねえ、袁術ちゃん。貴女折角、その愛将が事を穏便に収めようとしていたのに、今さっき親衛隊を使って愛将達を排除しようとしたでしょう。私は別に愛将の慌てた顔が見れて面白かったから別に良いんだけれど、此処に居る優希はどうかしらねえ? 一つ間違えば自分の主が殺されていたかもしれなかったのよ」


「殺!!」


殺気を体仲から噴き出している優希さんが間髪いれずに剣を公路お嬢様に突き付けます。


「ぴ―――――――っ!! あぅあぅあぅ~~~~~~……」


「あらら、泣いちゃった……どうするのかしら、仲達?」


優希さんと共に剣を公路お嬢様に突き付けている雪蓮さんがお嬢様に見えぬ様にペロッと舌を出して、今の状況を私に丸投げしてきます。


「まったく……雪蓮さんも、優希さんも、もう少し遣り様が有るでしょうに……まあしかし、助かりましたよ、ありがとうございます」


私は御二人に揖礼をすると、再度公路お嬢様に対して諭すように語りかけます。


「お嬢様、今度こそ理解して頂けましたか。今回は雪蓮さん、優希さん、御二人とも半ば演技でお嬢様の命を取ろうとしましたが、お嬢様が今迄の様に民達の暮らし等を顧みずに好き勝手な政を行えば、今度こそ、民達の本気の怒りがお嬢様達に向けられる事になるのですよ」


「ううぅっ、わかったのじゃ……ガタガタブルブルガタガタブルブル」


お嬢様は優希さんに向けられた殺気に恐怖を感じて、真っ青な顔で歯の根も合わぬ程震えておられます。


「張勲さんも、今後はもう少し公路お嬢様に対しての態度を改めて頂けますよね」


「はいです! 命を助けてもらえるならば、いくらでも改心しま~~~~~~~~~~~す!」


「では御二人とも、今後は先程私がお伝えした通り、南陽城を速やかに退出し洛陽の袁周陽様の下に戻って頂き、然るべき学問の師を私が責任持って見つけますので、そこで心を入れ替え勉学に励まれる事を約束して頂けますね」


「うう、わかったのじゃ……約束するのじゃ……のう、七乃」


「はい、お嬢様……」


流石に意気消沈して粛々と私の決定に従う主従に若干憐れみを感じながらも私は雪蓮さんに向かって


「まあ、いろいろありましたが、御聞きになられた通りに袁公路様以下の袁家縁の者達は、我々が此処南陽を発つ際に共に洛陽に撤収致します。これ以降の南陽城の差配は孫家の方々にお任せ致しますので宜しくお願い致しますね……ああ、これでやっと洛陽に戻れますよ」


「了解。改めて……ありがとう、愛将。孫家惣領として礼を言うわ、そして貴方達に、この短い間で孫家が受けた恩義にはいつか必ず応えて見せるわ」


「まあ、それは追々って事で良いじゃないですか……今は全てが取り敢えずは無事に終わった事に感謝しなければねえ……」


そう言って我々がホッと一息つこうとした時に……城内で大声を張り上げながら私を探す田元皓さんが血相変えて玉座の間に転がり込んできました。


「司馬様ぁぁぁぁぁっ!! 御頭様ぁぁぁぁぁぁっ!! 何処にいらっしゃいまするかぁぁぁぁぁぁっ!! 御頭様ぁぁぁぁぁっ!! 此方でございまするかっ!! きゃぁぁぁぁぁぁっ!!」


「だ、大丈夫ですか……元皓さん? 貴女えらく派手に転ばれましたけれど……」


「ううぅっ……大丈夫です……折角の初見の見せ場なのに恥ずかしい……」


「(貴女、一体どちらに向いて喋っておられるのですか……? 私以外のメタ発言は禁止の筈ですが……まあ些細な事は置いておいて……) 一体どうされたのです? 沈着冷静な貴女らしくも無い」


「あううぅ……誠に申し訳ございません。御頭様の命により南陽の改革書を洛陽の司空様へお届け致しましたが、司空様自らで今回の南陽での顛末に関する最終の仕置きを認められた御返信と、司空様の御考えを拝聴致しましたので、それを一刻も早く御頭様にと思いまして早馬飛ばして戻って参りました次第でございます」


ああ、そう言えば袁周陽様に今後の南陽の事を知らせて公路お嬢様達の庇護をお願いする旨を御頼みしたのでしたね……細かいニュアンスが伝わらない事を防ぐために弁舌が立つ田豊さんに大役をお願いしたのでしたね。


「そうですか……まあ丁度よい所ですので此処にいらっしゃる方々と、春華さん、それに孫家の方々と共に場所を改めた後に元皓さんの御話を聞く事に致しましょう」


私はそう言うとお嬢様、張勲さん、紀霊さんを華炎さん御一人に任せ、優希さん、雪蓮さんにはそれぞれ、春日さんと孫家の方々を呼びに行ってもらう様に指示を出すと、全ての幕引きに向かうべく南陽城内の改革推進庁室に向かいました。

どうも、如何でしたでしょうか……虹ファンより場所を移した「なろう」における一発目でございます。久しく文章を書く事をしていなかったが為に所々繋がりや展開におかしな所が見受けられますが、まあ御愛嬌と言う所で御許し頂けないものかと……(笑)


それとこの場を借りて謝罪をさせて頂きたいのですが、虹ファン閉鎖の後に確固たる考えも無くTINAMIの方に拙文を掲載した後に短い日数で消去して暫く何処にも掲載せず行方不明になってみたりと、お気に入り登録されておられた方やTINAMIに態々登録して頂いた方に非常に御迷惑をおかけいたしました事を、この場をお借りいたしまして深く謝罪をさせて頂きます。誠に申し訳ございませんでした。


閑話休題


取り敢えず、「なろう」の方でまた頑張って行く事となりましたので宜しければ御贔屓の程を心よりお願い致します。また、無謀にもオリジナル小説の構想(妄想とも言いますが(^^ゞ)などを考えてはいます……恐らく記紀神話をモチーフにしたモノになるとは思いますが、まあ期待せずにお待ち頂ければ(笑)


それではまた今後とも宜しくお願い致します。   堕落論でした。

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