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真・恋姫†無双 ~司馬懿仲達の憂鬱~  作者: 堕落論
第一章  『南陽改革大作戦!!』
15/30

南陽改革 大作戦!! ―― 胎動 ――

東北大震災から早一年が経ってしまいました。


災害や、その後の御心労等で亡くなられた方々のご冥福や、物資、その他が困窮して不便な中、今なお、復興の為に頑張られている災害地の皆様の御健康をお祈り致します。


――――荊州滞在十日目 南陽 孫策邸門前――――



南陽城で公路様との謁見が終わった翌日、我々はそれまで宿泊していた宿屋を引き払い、新たに南陽城内に「国家戦略情報室」の南陽支部を立ち上げました。その日の内に洛陽から優希さんも、私が彼女に要請した通りに本初さんの所から田豊さんと高覧さんを引き抜いて、我々に合流して、これで「国家戦略情報室」南陽支部のメンバーは我々四名と本初さんの所から連れて来た田豊さんと高覧さんを入れて計六名となりましたが、今から始める荒療治の事を考えると、どうしてもあと数名は必要です。


そこで私は元々考えていた策を実行に移すべく張勲さんの下に出向いて、今から私自身の考えを実行する旨を伝えました。私の考えを聞いた張勲さんは強固に反対されました。それはそうでしょう、私が張勲さんの立場なら私が言い出した案には間違いなく反対します。しかし、私は張勲さんの強固な反対など歯牙にもかけずに最終的には、袁逢様よりの代理委任権を使い無理矢理に、或る方達を我々の配下にする事に了承をしてもらいました。で、張勲さんを説得した後に私は、その方達を迎える為に、華炎さんにお願いしてこの場所に共に居る訳なのですが……




「愛将……一つ、二つ、君には聞きたい事があるのだけれど良いかい?」


実にすばらしい笑顔で……しかし笑顔の中の両目は少しも笑っていない、或る意味非常に難しい表情で華炎さんが私に尋ねます。


「(まあ、大体何を言いたいかは想像がつくのですが……)はい、一体何でしょうか……?」


「君がどうしても……と言うから、急ぎの書類整理があるのを放っておいてまでも君に同行したのだけれど、君の火急の用件というのは、あの孫家のじゃじゃ馬に会いに来る事だったのかい?」


「いや、まあ、確かに火急の用件とまで言ったのは言い過ぎだったのかもしれませんが……決して嘘を吐いた訳じゃないんですよ。唯、正直に伯符様の屋敷に行くから御供をなどと言ったら間違いなく貴女は断るでしょう……」


「当たり前だよっ! 愛将……君はついこの前、あのじゃじゃ馬に剣を突き付けられたのを忘れたのかい?」


「いやいや、あの時の事はお互いが良く知らなかったうえでの勘違いみたいなモノでしてね、実際、華炎さんが思っていた様な物騒な事は結局起こらなかったんですから、私は全く気にしていませんよ」 


「君が気にしていようがいまいが、僕には余り関係無いんだよ。僕にとっては、あの女が君に対して剣を突き付けたと言う事が全てなんだ。因みに春日や優希に、君が孫家のじゃじゃ馬に剣を突き付けられた事を話してごらんよ。あの二人なら間違いなく、君の制止も振り切って問答無用で、この屋敷に突撃すると思うよ」


「また、そんな物騒な冗談を……」


「僕が言っている事が、本当に冗談だと思うかい?」


事も無げに応える華炎さんの言葉を聞いて、私の脳内に、血相変えて伯符様に詰め寄る春日さんの姿と、無表情で孫家の屋敷に火矢を射掛けようとする優希さんの姿が再現されます……


「ああ……確かに、よくよく考えたら有り得ますねえ……」


「だろう…………そもそもなんで今更君は、あのじゃじゃ馬に会うなんて事を言い出したんだい? まさか数日前の城壁での話しを……」


「いやいやいやいや、違いますよっ! あの時にも言った筈ですけれど、私は今はまだ袁家の小間使いで良いんですよ……ただね…………」


「ただ……どうしたんだい?」


「いや……聡明な華炎さんならば、もう薄々気付いていらっしゃるでしょうが、漢王朝の衰退は既に手の施しようが無い程に進んでいて、今後そう遠くない未来に我々は血生臭い争いに、否応なく巻き込まれて行くでしょう」


「ああ、確かに今現在の状況を分析すれば、遅かれ早かれ何らかの形で争乱になる事は間違いないね。でも、それとこれとは別問題じゃあ……」


華炎さんは、その端正な顔立ちに疑問を浮かべながら、私の言った事に対する答えを問うてきます。


「全く別問題と言う訳でもないんです。我々の現在の立場はあくまでも袁次陽家の私的な集団でしかありませんよね。まあ、後ろ楯としての袁家の名は心強いですが、如何せんそれだけでは今後の事を考えて行くと非常に心許無いんですよ」


「だから、今後の非常時に備えての孫家の取り込み……と、言う事かい?」


「ん~それだけでは無いんですがね……でも概ね、華炎さんの考えている通りだと思って頂いて間違いは無いですよ」


「それだけじゃあないって?」


「曹家の重鎮であって、尚且つ、実際に伯符様と相対した華炎さんなら感じたでしょう? 孫伯符様は曹孟徳さんとは、また違った形での英雄となり得る資質を持った方だと言う事を……どうですか?」


華炎さんは我々「国家戦略情報室」のメンバーの中では一番頭の回転も速く、正に一を聞いて十を知ると言ったタイプの方です。私の見立てでは孟徳さんと比べても聡明さでは遜色無い程の逸材です。惜しむらくは孟徳さんと比較すると考え方や意見に柔軟性が乏しいと言ったところぐらいですね。そんな華炎さんであるので、当然、伯符様と殺気の遣り取りを交わした事で伯符様の資質を理解しているのは間違いない筈です。


「そっ、それは……」


「それに、ここ南陽を含んだ荊州と隣の揚州は今後非常に大事な場所に必ずなります。その時の事まで考えておくとなると、ここと、揚州の統治者は孫家の者でなければいけないのですよ。残念ながら公路様と張勲さんではねえ……」


私は華炎さんに対してお手上げのポーズをします。


「張魯殿や、劉表殿に良い様にあしらわれるだけと言う事かい?」


「ええ、そして二進も三進もいかなくなった所で便利屋の様に扱っていた孫家に謀反を起こされて、これですね……」


私は今度は右手で手刀の形を作り、自分の首を切る真似をします。


「流石に公路嬢ちゃんの首が晒されるのは見たくはないね……」


「でしょう……でも、今なら、今この機会で孫家と我々に何らかの同盟を結ぶ事が出来たなら、公路様も助ける事が出来るし、我々の味方を増やす事が出来るんですよっ!! だから、お願いです華炎さんっ! 私と共に伯符様に会って下さいっ! この通りです」


私は土下座をも辞さずといった覚悟で、華炎さんにむかって頭を下げます。


「ちょ、ちょっと愛将……いきなりなにするんだっ、こんな往来でっ!! 分かった、分かったから、その頭を上げたまえよ……まったく! 君は卑怯だよ。君がその様に頼んできたら、僕達が断れないのを分かってて実行するのだから……」


「では私と共に伯符様にお会いして頂けますね。華炎さん」


「はぁ~っ……全く君って男は………分かったよ。そうだね、取り敢えず今日の事の見返りに、君が僕に何か褒美をくれると言う事で手を打とうじゃあないか」


「はいっ?」


「だから、君の無茶なお願いを引き受ける代償に、僕は君に今回の件の報奨を要求するという事だよ。どうだい?」


「どうだい? と、言われましても……報奨、報奨ねえ……」


私が言葉に詰まって考え込むのを、悪戯が成功した時のような顔をした華炎さんが見ています。どうにもこうにも考えに詰まってしまった私は半ばヤケ気味に応えます。


「ならば、この改革が終了して時間がとれたら、南陽でも、洛陽でもどちらででも良いですから、華炎さんと二人きりで一日羽を伸ばして遊びましょうっ! 買い物でも御食事でも何処でも、華炎さんの好きな場所に御付き合いしますよ。どうですっ!! ハッハハ………ハァァ……駄目……です……よね?」


半ばヤケ気味だったとはいえ、あまりにも馬鹿げた提案をしてしまった事で、私は恐る恐る華炎さんの方を見ます。


「………………本当かい?」


其処には酷く驚いた様な顔をしてはいますが、御顔の色は熟れたトマトよりも真っ赤になった華炎さんの、非常にレアな姿がありました。


「ええっ? どうしたんですか、華炎さん?」


「本当に、本当に……僕と一日一緒に居てくれるのかい?」


ええ? 華炎さん……そこ食いつく所なんですか? 私、苦し紛れで貴女にデートを申し込んでいる様なもんなんですよ? 其処は、どちらかと言えば「何言うてんねん!!」ってな感じでツッコム所なんじゃあないんですか? ってか、本当にそんな乙女乙女した状態で良いのですか? 等と、私は心の中で突っ込めるだけ突っ込んでしまいました。


「は……はあ、華炎さんさえ良ければ、一向に私は構いませんが……」


「よ、よしっ! 約束だよ、愛将。必ず朝から晩まで、ずっと一緒だよ。うん、そうと決まれば手っ取り早く、孫家との話を終わらそうじゃあないかっ! ああ、それとこの報奨の約束は春日や、優希には内緒だよ……絶対に内緒だからねっ!!」


華炎さんは、今迄の思慮深い智将の顔は何処へやらとなってしまったかのように、嬉々として私の腕を掴み、厳めしい顔をした門番が立っている孫家の屋敷に向かって突っ込んで行きました。





―――― 同日、同時刻 南陽城内「国家戦略情報室 南陽支部」 ――――






「むっ!!」


「どうかしたの、優希?」


「誰か良く知る人物が幸せになっている予感」


「何それ?」


「安心して、春日……では無い」


「そりゃあ、私じゃあ無いでしょうよ……現に今、華炎が急にいなくなるから書類がこんなに溜まっている状態を幸せとは言わないわよ」


「ならば……華炎?」


「さあ、どうかしらねえ……ところで華炎の幸せって何よ?」


「知らない……興味ない」


「馬鹿な事言ってないで、ちゃっちゃと仕事を片付けましょう」


「了解……」









―――― 同日、同時刻 孫策邸内 執務室 ―――――





「んふふっ………」


「どうした、雪蓮? 思い出し笑いなぞして……何か良い事でもあったか?」


「ん~、良い事かどうかは分からないけれど…………ねえ、冥琳、ここ数日、何かと私達の周りが慌ただしいって事を気付いていたかしら?」


「ああ、私達の周り……と、言うよりも袁術や張勲の周りを……という所だがな」


「なあんだ、つまんないの……冥琳も知ってたんだ」


「当たり前だ……恐らく黄蓋殿も気付かれているさ。一昨日辺りから穏を連れて、街での情報収集をされているよ」


「え~~っ、祭や穏もなのぉっ!」


「何を驚いている。現在の我々の不安定な立場ならば、情報収集は当然の事だと思うが……」


「ふぅ~ん……なぁ~んか、つまんないわねぇ……」


「先に言っておくが、雪蓮、お前が街に行くのは駄目だぞっ!」


「はいはい、分かってるわよ。冥琳に言われ無くたって、今回は屋敷でジッとしてるわよ」


「……………………………」


「どうしたの、冥琳? 鳩が豆鉄砲喰らった様な顔して……」


「驚いた……雪蓮が街に行くのを禁止されたのに文句を言わないどころか、屋敷からも出ないなんて……一体どうしたの? 体調でも悪いの?」


「何よぉ~っ、私が屋敷で大人しくしているのは、そんなにおかしい事なの?」


「ああ、天変地異の前振りかと思うぐらいの出来事だ……」


「ひっどぉ~~いっ!!」


「いつもの雪蓮を見ていれば、誰でもこの様な考えを持つと思うがな……」


「はぁ~っ………もういいわ……街に行かないって言ったのは、なんかそうした方がいいって思ったからで、他意は無いわ」


「いつもの勘と言うやつかしら?」


「そうねえ……それはそうと冥琳。この前に頼んだ袁家の……ほら、何て言ったっけ? ちょっと面白そうな奴だったから、冥琳に調べて貰おうと思ってアイツの『刺』を渡したじゃない」


「袁次陽家、家令の司馬仲達殿の事か?」


「ああ、それそれ。でもどうしたの冥琳? 態々あんな奴の名に殿なんてつけるなんて……」


「雪蓮……それについては今一度、確認をしたいのだが、お前に城壁で『刺』を渡した者は本当に司馬仲達と名乗ったのか?」


「ええ、それがどうかしたのかしら? 冥琳」


「お前にその『刺』を渡したのが、本物の司馬仲達殿であるのならば、今、南陽で起きているドタバタ騒ぎは、その男が此の地に齎したものだ」


「それって……本当なのかしら?」


「司馬仲達殿……袁次陽家家令であり、私設秘書官筆頭でもあり、司徒である袁次陽様の懐刀とも言われる程の者だ。噂では『国家戦略情報室』なるものを作っていて、今後の漢皇室の行く末をも握るのではないかとも言われているらしいが……まあ、この辺りの話は眉唾ものだな。まあなんにせよその司馬仲達殿が洛陽からの査察団として此の地に乗り込んできてから、諸々が慌ただしくなっているのさ」


「へぇ~~っ……面白そうな奴だとは感じたけれど、アイツってそんなに凄い奴だったなんてねえ……どう見ても冴えない風貌の頼り無さそうな男にしか見えなかったのにねえ」


「まあ、私は雪蓮の様に実際に会ってはいないので何とも言えんが……それ程の者が我々孫家の事を知っているというのも気になるな。よもやとは思うが我々の動きを気取られているのかもしれぬし、用心に越した事は無い」


「用心ねぇ~……ん~、その辺りは大丈夫だと思うなぁ……」


「それも、お前の勘か?」


「勘……と言うよりは、確信……かな。まあ、何にせよ、間違い無く、ここ数日の間に件の人物には会う事が出来ると思うわ。だから私は此処で、それを待つ事にしたのよ。その時は冥琳、貴女も一緒に会ってくれるのよね」


「ああ、その時には雪蓮が興味を持った、司馬仲達という男を観察させて貰うとしよう。我等孫家の悲願の為に……」


「ええ、今は袁術の客将に甘んじてはいるけど……乱世の兆しが徐々に見え始めた今、彼と出会えた事を、一刻も早い孫家独立の足懸かりにしなければね」








―――― 同時刻 南陽 孫策邸門前 ――――





「え~誠に申し訳ないのですが、手前は洛陽の司徒袁次陽配下の者で司馬仲達と申す者ですが、此方の屋敷の主人である孫伯符様に御取次をお願いしたいのですけれど、宜しいでしょうか」 


そんなこんなで華炎さんと共に、孫家の館の門番の方達と相対していますが……うわあ、ガン見されてますね……そんなに不審人物に見えるのでしょうか、私の風体?


「あっ、あのお~、決して怪しい者ではないんです。ほら私、こう言う者でございます」


数日前に城壁で伯符様に渡したモノと同じ『刺』を門番の方に手渡して


「その『刺』を孫伯符様に、御見せ頂ければ宜しいかと……」


私の差し出した『刺』に目を通した門番の方の一人が


「失礼ではございますが、我が当主、孫伯符に如何なる御用向きか、お聞かせ願いますか」


「はい、本日お伺い致しましたのは、御当主、孫伯符様に我々の話しを聞いて頂きたく思いまして、参上仕りました」


「分かり申した……では只今、奥に取り次いで参りますので、暫く此処でお待ち下され」


そう言って門番の方は、奥に向かって足早に駆け去って行きました。伯符様に取り次ぎに行かれる為の後ろ姿を、私はこれから始まるであろう大改革の嵐や、それ以降の諸事の事を考えながら暗澹たる気分で眺めていました。

うぅ~んっ………おかしい……本来なら、もう大改革も終了してなきゃいけないんだけどなあ……


どうも! 自分の文才の無さから目を背ける様にしている堕落論ですww


いやまあ、予定ではもうちょっと御話が進んでいる筈だったんですよ……それが何処をどう間違えたもんだか……トホホ

取り敢えず頑張って行きたいと思いますので、どうか宜しくお願い致します。


それでは次回の講釈で……堕落論でした。

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