表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真・恋姫†無双 ~司馬懿仲達の憂鬱~  作者: 堕落論
第一章  『南陽改革大作戦!!』
13/30

南陽改革 大作戦!! ――司馬懿 VS 孫伯符――

『司馬懿仲達の憂鬱』をご覧になって頂いている皆様。

あけましておめでとうございます。昨年後半はちょっと洒落にならなかった堕落論でございましたが、退院後には皆さまからの暖かい言葉を沢山頂く事が出来て非常に嬉しかった事も、また事実でございます。その節は皆様、誠にありがとうございました。


さて、この2012年も、早、正月三が日も過ぎてしまいました。昨年の大晦日に更新を予定してはいたのですが、仕事を開始した事で今迄の疲れが少し出た為に予定が大幅に遅れてしまって本当に申し訳ございませんでした。


今年こそは週に1~2回の定期的な更新ペースを維持して行こうと思っておりますので、今後とも『司馬懿仲達の憂鬱』を駄目作者、堕落論共々宜しくお願い致します。


―――荊州 南陽 滞在二日目 早朝――――





南陽入りをしてから二日目の朝です。今日、明日ぐらいは、ゆっくりと朝寝をするつもりであったのですが……やはり、洛陽の袁家での生活通りの時間に起きてしまうものなんですねえ。全く、一体何処まで私は年寄りなんでしょうかねえ……


華炎さん、春日さんの御二人は、一昨日迄の情報処理雑務の精神的な疲れと、昨晩、人の事を散々追掛け回した肉体的な疲れとが、かなり溜まっているのでしょう、隣の部屋で未だ眠ってらっしゃるようですね。私は物音を立てぬ様に、静かに寝台の上で着替えを済ませて足を忍ばせて部屋の外に出ます。旅館の入口で、宿屋の主人に朝の挨拶をして、そのまま城壁に向かって、ゆっくりと歩を進めます。


四半刻程は歩いたでしょうか……目指す場所が見えて参りました。昨日、城門から入った際に目を付けていた場所で、城壁に登れるうえに人目にもつき難いんですよ。『流星』を放つには絶好の場所じゃあないですか……私は人の往来を良く良く確認して、出来るだけ他の人に見付からない様に、気を配りながら城壁の上に登ります。


「しっ、しかし……高々、これだけの城壁に登るだけで足がふらつくなんて……私も一昨日迄の激務が相当堪えているのでしょうねえ……ええ、そうですとも!! 決して運動不足とか、体力が全く無いとか、そういうのでは絶対に無いんですっ!!」


はあ~っ……何か、物凄く虚しくなってきましたね……とっとと、密書を足筒に入れた『流星』を洛陽の優希さんの下に飛ばして、旅館に帰って朝食を食べましょう。いくらなんでも、華炎さんに春日さんも、もう起きてるでしょうしねえ……


「さあ、流星っ! 洛陽の優希さんの所に向かいなさいっ! 道中、気を付けて行くのですよ」


私がそう言って鳥籠を開くと、勢いよく飛び出した流星は、私の頭上を気持ち良さそうに何回か旋回した後に、洛陽方面に向けて甲高い鳴き声を残して飛び去って行きました。


「さてと……これで、優希さんからの返事が返って来る迄、多少の時間はありますね……取り敢えずは、南陽の「そこで、何をしてるのかしら?」…………へっ?」


確か、誰もいなかった筈ですが……私は声のした方に視線を向けて、声の主を探します。


「おやぁ……? おかしいですねえ? 声はすれども姿は……と、言う所ですかね?」


「何処見てんのよっ? こっちよ、こっちー」


自分が見ている場所より上の方から声がします。声のする場所を探れば、城壁の見張所の屋根の上で逆光になり此方からは見え難いのですが、女性のシルエットらしきモノが見えます。


「やっと、気付いたみたいねえ……それで、貴方は此処で一体何をしているのかしら? どう見ても、のんびりと御散歩って感じには見えないわよ……それっ!」


若い女性らしき人は、そう言うと今いる場所から私に向かって飛び降りて来ます。


「うわっ……何するんですかっ!? 危ないじゃあないですかっ!」


その女性は空中で、どの様にしたのか、私の目の前に着地をした時には抜刀した刀を私に突き付けて、凄味のある笑顔を向けて来ます。


「う~ん……この程度の脅しで腰が引けるなんてねえ………唯の一般人よりも臆病じゃあない……」


「いやいや、初対面の女性に、いきなり長剣を目の前に突き付けられて驚かない方が、絶対どうかしてますからっ!! ってか、一体、何なんですかっ!! 全く…………えっ? あっ、貴女は……」


私の目の前で仁王立ちされている女性の方は、この南陽の地に居ても全く不思議ではない、いや、寧ろこの時期には南陽に居なくてはならない人物なのです。が、しかし我々が南陽入りした翌日に出会えるとは微塵も考えてなかった女性であった為に、心の準備が出来ていなかった私は、驚愕で、一瞬言葉を失うと言う大失態を犯してしまいました。


「ふぅ~ん……貴方。その驚き方は、どうやら私の事を良く知っているみたいな様子ねえ。でも、残念ながら私、貴方に見覚えなんて無いのよねえ……」


私に向かって話しかける口調こそ穏やかですが、そんな口調とは裏腹に、目の前の女性は一瞬にして殺気に近い雰囲気を身に纏います。あれ? 何でいきなりこの女性と出会った瞬間に、私、命の危機なんでしょうか? 昨晩といい、今朝といい、私に微妙に女難の相が出ているのは気のせいでしょうか……?


「ちょっ、ちょっと待って下さい。私は別に怪しい者じゃあありませんよ……」


「あ~っ……大体怪しい奴は、皆同じ様な事を言うのよねえ……」


「いや、だから、決して怪しい奴じゃあ無いんですって……うわぁっ! 不必要に、その『南海覇王』をの刃先を、此方に向けないでくださいっ!! ……さ、さ、刺さるぅぅぅぅぅっ!!」


「驚いたっ……この長刀の銘が『南海覇王』って事まで知ってるなんて……貴方、益々怪しいわね。取り敢えず拘束して屋敷に連れ帰って、祭と冥琳に相談するべきかしらね」


ああ……どんどん悪い方向に話が突っ走って行ってますねえ。これはもう、手っ取り早く真実を話すべきでしょうねえ……この方、何気で、真剣に私を拷問に掛けそうですものねえ……


「え~、誠に申し訳ないのですが、貴女が今現在、私に対して御考えになっている事を実行に移されるとですねえ……十中八九は貴女、御友人の周公瑾殿や、宿将の黄公覆殿に説教を喰らいますよ、それでも宜しいのですか、孫伯符様?」


いきなり、私に名前を呼ばれた彼女は、一瞬ではありますが顔を歪めた様な素振りを見せましたが、直ぐに何事も無かったような顔に戻って私に問いかけます。


「あら? 曲者さん……貴方、本当に私の家の事情に詳しいのね……ひょっとして、袁術ちゃんの所の手の者かしら?」


若干、先程より、殺気に近い雰囲気は緩和された様に思えますが、それ以上に此方の事を警戒する様な素振りが強くなりましたねえ。


「ん~、惜しいですねえ……袁家は袁家でも、私はこう言うものですよ」


私は未だ剣を突き付けたままの女性……孫伯符さんに、懐から取り出した『刺』と呼ばれる、この時代での名刺の様な物を手渡します。


「何よ……これ? 何々……司徒 袁次陽付 私設秘書官筆頭 司馬仲達……え~~~っ! 貴方、中央の役人だったの?」


伯符様は驚いた様な顔をして、私に向けていた『南海覇王』を慌てて鞘にしまいます。まあ、今更突き付けられていた刀を降ろされても、私では無く普通の役人なら色々遅い様な気がするのですけれどねえ。


「それも惜しいですねえ……確かにお仕えしているのは司徒の袁隗様にではございますが、それも公的にお仕えしている立場ではありません……飽くまでも、私的にお仕えしている身でありますから厳密に言えば私は役人ではありません。故に、貴女が、私に対して畏まる必要は全くありませんですよ」


「司徒の袁次陽様って……袁術ちゃんや、河北の袁紹の保護者だったかしら?」


「まあ、その様なものですね……厳密に言えば、その御二人の真の保護者は司空の袁逢様であって、我が主の袁隗様は本初さんと公路さん、御二人の御目付役……と言うところでしょうかね」


「ふうぅ~ん…………まあ、どっちでも良いわっ。袁家の事なんて全く興味ないもの……」


「まあ、孫家の貴女の立場から見れば、そうでしょうねえ……では、そろそろ私も御暇させて頂きましょうか……宿に戻って朝食が待っていますしね」


私はそう言って、踵を返し、この場を立ち去ろうとした、その時。


「あらぁ……私は袁家の事には全く興味は無いけれど、司馬仲達……だったわね。貴方には凄ぉ~く興味があるんだけどなぁ~」


伯符様は、そう言いながら、さり気無く私の退路を断つように、私と往来へ通じる道との間に場所を移動します。


「はいぃ……?」


「貴方、さっき鷹を空に向かって放した時に、書簡の様な物を鷹に装備させていたでしょう。その鷹は、何処へ向かって飛んでいったのかしら? それと、袁家の私設秘書だって事だけれど、高々、袁術ちゃんの所の客将である私達、孫家の事情に随分と詳しそうねえ……私が言うのも何だけど、亡くなった、お母様の事では無く、私達の事を詳しく知っているなんて……一体、貴方、何者かしら?」


「いやいや、だから、何者かと仰られても、先程御渡しした刺に記していた通りで、何の変哲も無い普通の文官なんですよ。決して、貴女の様な英傑の方の興味を引く様な人物じゃあ無いのに、何故、私などに…………」


「そうねえ、何故…………って言われると、一種の勘って所かしら?」


ああ……確かにゲーム内でも、この方はそうでしたね。夏侯惇さんほどでは無いにしても、大事な場面では、かなりな頻度で直感的に動かれる方でしたよね。


「それにね、私達、孫家のこれからには、どうしても貴方の力が必要になって来る様な気がするのよねえ……だから、袁家の小間使いなんか止めて、私達の所へ来ないかしら」


「来ないかしらと、急に言われても困ります。私は現在、仕事として此処、南陽に赴いている訳でありまして、まだまだ袁家の小間使いとしてやるべき事が沢山ありますので……」


「全くその通りだね……それに頼り無さそうには見えるが仲達は僕達の主なんだ。孫家とやらの都合で、僕達を無職にしないでほしいものだね」


「この声は……子孝さん??」


私が伯符さんに対して意見を述べた後に、思いもしなかった方の声が私の後方から聞こえてきました。それと同時に先程収まっていたと思われる伯符様の殺気が、また充満してきたのが分かります。


「誰よ、貴女?」


「今は落ちぶれて客将の立場に甘んじているとはいえ、元は長沙太守の家柄の孫家の現頭首様に名乗る程の立派な名前は持ち合わせてはいないんだけどね……どうしてもって言うのであれば御教えしよう、我が名は曹子孝。不本意ながら、未だそこの司馬仲達とは同僚でしかない間柄だよ」


いやいや、華炎さん……貴女のその応え方は、何処か変じゃあ無いでしょうか?


「ふうぅ~ん……貴女、中々良い度胸ね。それに腕の方もかなり使えそうじゃないの……でも、私に対して今の安っぽい挑発は頂けないわねえ、それは命が要らないって言ってるのと同じ事よ」


「ふん、あれしきの言葉ぐらいで、我を忘れるなど、なんとも堪え様の無いお嬢様だ……それでは、この朴念仁と一緒に仕事は出来ないよ。なんせ仲達は筋金入りの朴念仁だからねえ」


お~いっ!! ちょっと、御二人とも、何でその様な素晴らしい笑顔で、お互いに言葉のビンボールを投げ合うのですかあ? 後、華炎さん……貴女、何気に人を酷く悪しざまに言っておられませんか? そして、今一番の問題は、何故、御二人は腰の長刀に手が掛かっているんですかっ!! 


「ちょ、ちょっと、お待ちくださいっ!! 御二人とも控えてっ、控えて下さいっ!! 伯符様、子孝さん御二人とも街中で朝っぱらから何をなされるおつもりですか? それに、万が一にでもこんな事が街の警備隊にでも知れれば、お互いに面倒な事にしかなりませんよ」


「「……………ちっ!!」」


ええっ? 何で一触即発状態の二人の仲裁に入っただけで、私が御二人から睨まれた上で、二人同時に舌打ちまでされるのでしょうか? 私、間違った事言ってませんよねえ……


「曹……子孝だったかしら? 貴女達とは、またすぐにでも会えそうな気がするわね……」


「ああ、僕もそう思うよ、孫伯符殿。だけど、次回御会いできる時は、もう少し穏やかな応対をしてくれる事を望むけれどね……そうでないと僕も手加減が出来そうに無いからさ」


「さあ? それは約束しかねるわね……尤も、そこにいる仲達と共に、貴女も私達の下に来るんだったら考えて上げても良いわよ……それじゃあ、また会いましょうっ! 司馬仲達っ!」


そう言うが早いか、伯符様は城壁から往来に向かって飛び降りました。此処って、そこそこ高いのに大丈夫なんでしょうか? 私がその様に考えて、城壁から伯符様が飛び降りた後を確認する為に移動しようとすると


「何処に行くつもりなんだい、愛将? 君は、まず僕や、春日に言う事があるんじゃあないのかい? 全く君ときたら……昨晩、春日と二人で言い含めた事を、ちっとも真面目に聞いていなかったみたいだね……」


顔には作り笑いを張り付け、地獄の底から響いて来る様な声で、華炎さんが私の側に近付いてきます………何故でしょうか? 物凄く私の身の危険を感じるのですが……でもこれって、伯符様と遭遇したのって不可抗力ですよねえ……


「さあ、宿に帰って、僕と春日と君との三人で、今後の事を色々と相談しておこうね。南陽の街の事、公路嬢ちゃんの事、その他色々とねっ、勿論、君に反論や弁解の余地は無いし、言い訳も一切、聞かないと思っておいてくれたまえ」


笑顔の割には全く目が笑っていない華炎さんの言葉を、まるで、最高裁での最終判決で重刑を聞く被告人の様に虚ろな目で耳にした私は


「うう……不幸だあ……」


右手に特徴のある、ツンツン頭の男の子の様な台詞を一人で呪詛のように何度も何度も呟いていました。

どうも、今回も最後まで御読み頂き誠にありがとうございます。『司馬懿仲達の憂鬱 南陽改革大作戦!! VS 孫伯符』を更新させて頂きました。

今後の予定としてはこれを含めて後三話程、南陽編が続いて最後に黄巾の乱へと巻き込まれて行く話のサブタイトル『拝命』を持って第一章が終了する形となります。

まだまだ先は長そうですが、読者の皆様と共に進んで行く事が出来たら幸いだと考えます。

どうか今後とも駄目駄目作者の堕落論を宜しくお願い致します。


あっ、それと一つご報告ですが、おかげ様でお気に入り登録が1000件を超えていたりしまして、駄目作者にとっては驚喜していいのか、はたまた恐怖するのか難しい所でありますが(笑)、取り敢えずは目出度いと言う事で何かリクエストでも御請けさせて頂こうかなと考えています。

作者の力量の無さ故に、このss絡みでの話しだけ(仲達君を中心に、今現在迄に登場した人々のみの絡み)とさせて頂きます。駄目作者に何処まで掛けるかは全く保証が出来ませんが(オイオイ)頑張ってみようかなと……(笑)

ですので、こんな話が見たいなあと思われた方、感想欄でもメッセージボックスにでも良いですから、御意見や、御要望御座いましたらどんどん御便り下さい。


今年2012年も健康に十分注意して、定期的に更新して行きたいと考えておりますのでどうか宜しくお願い致します。


それでは次回の講釈で……堕落論でした。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 能書きが多い
2021/10/25 01:27 ローライト
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ