近所に住む清楚な美人人妻が過去にAVに出ていたと聞いて悶々とする男子大学生の話
全年齢でAVネタ…
大学二年の春だった。
アパートの隣に住む女性――宮坂千春は、いわゆる「理想の人妻」だった。
朝はきちんと挨拶をするし、回覧板を持ってくれば「ありがとうございます」と微笑む。
例えるなら清原果耶のような派手さはないが清潔感があって、買い物袋を提げて歩く姿は妙に絵になった。
近所の小学生にも人気があり、野良猫にまで懐かれている。
そんな人だった。
だからこそ、その噂は衝撃だった。
「宮坂さんって、昔AV出てたらしいぞ」
大学の友人・田辺が、深夜のコンビニ前で缶コーヒーを飲みながら言った。
「は?」
「いや、マジで。商店街のクリーニング屋の息子が言ってた」
「いやいやいや…あの宮坂さんが?まさかぁ〜!」
「いやぁ…案外ああ言う清楚な女だから売れたんじゃねぇ?」
「いやいや…ないでしょ。」
思わず笑った。
だが、その日を境に、妙な意識をしてしまう。
ゴミ出しで会うたび、
「昔AVに……?」
と頭をよぎる。
スーパー帰りに会えば、
「どんな作品だったんだ……?」
と勝手な妄想が暴走する。
しかも千春は、こちらが挙動不審になっても相変わらず優しい。
「大学、大変ですか?」
「は、はい」
「ちゃんとご飯食べてます?」
「た、食べてます」
余計に気になる。
気になって気になって、講義にも集中できなくなった。
そして数日後。
俺はついに、アパートの廊下で千春本人に聞いてしまった。
「あ、あの!」
「はい?」
「突然なんですが、変なこと聞いていいですか!?」
千春はきょとんとした。
「昔……AVに出てたって、本当ですか?」
沈黙。
終わった。
人生終わった。
大学生が近所の人妻に何を聞いているんだ。
穴があったら入りたい。
だが、千春は怒るでもなく、
「あぁ〜」
と、あっけらかんと言った。
「出てましたねぇ」
「えっ」
肯定!?
脳が止まる。
「え、えええ!? ほ、本当に!?」
「はい」
あまりにも自然な返答だった。
俺の心臓が一気に跳ね上がる。
「じゃ、じゃあ旦那さんは……!?」
「知ってますよ?」
「ええっ!?」
「むしろ主人、当時すごく応援してくれてました」
情報量が多い。
俺の頭の中では、勝手に昼ドラみたいな修羅場が展開されていたのに、本人は麦茶でも勧めるみたいなテンションで話している。
「い、いやでも、その……抵抗とか……」
「楽しかったですよ。動物いっぱい触れましたし」
「……動物?」
「はい?」
千春は不思議そうに首を傾げた。
「AVって、“アニマルビデオ”の略ですよね?」
「…………は?」
「ケーブルテレビの動物番組で、レポーターやってたんです。『アニマル・ビジョン』って番組」
「…………」
「アルパカ牧場とか行きましたねぇ。あとカワウソ特集とか。あ…あと近所の地域ネコ特集とかも可愛かったですねぇ…。」
俺は数秒、完全停止した。
そして理解した。
全部、俺の勘違いだった。
「あっ」
千春もようやく気づいたらしい。
「あーっ、もしかして“そっちの方面”のAVだと思ってました?」
「い、いや、あの、それは、その……!」
顔から火が出そうになる。
千春は
「ふふっ」
と吹き出した。
「やだもう、大学生って面白いですねぇ」
「すみませんでした……」
「いいですよ。でも主人に話したら笑うだろうなぁ」
「やめてください本当に」
その日の夜。
俺は布団の中で枕に顔を埋めながら、自分の浅はかさを全力で反省した。
そして翌日。
千春の旦那さんとアパート前で鉢合わせした瞬間、
「君かぁ! “AVの件”聞いたの!」
と満面の笑みで肩を叩かれ、俺は苦笑するしかなった。




