白川康太はおしゃれになりたい
なんだよ…これ…!!
俺は届いた通販の商品見て絶望していた。
嘘だろ?なんだこの薄っぺらい生地!
そして、この丈!全体的に安っぽいデザイン!
あの写真とぜーんぜん違うじゃん!!
愕然としながら、絶望する。
実際にお店に行って商品選ぶのは試着込みでハードル高いし、1人で行くのとか無理だと思って通販してみたのに…。
ゴミみたいな商品を売られた…。
折角、黒波さんと釣り合う男になるために努力しようとしたのに…。
…こんなことなら黒波さんに選んでもらえば良かった。
すると、部屋の扉がゆっくりと開く。
そこに立っていたのは我が妹であった。
妹の名前は菫。
現在中学3年である。
「…ドタドタうるさいんだけど。何してんの?」
かなり生意気ではあるが、兄の目から見てもかなり可愛い見た目をしている妹…。
こいつに彼女ができたとバレたら…いいことはないな。
「…別に。ちょっと…ね」
「てか、何その服…ダッサ。まさか、通販で買ったの?」
「お前には関係ないだろ」
「いやいや関係あるから。私の友達が家に来た時にそんな格好で出てきたら私ごとまとめてバカにされるわ」
「…うっせ」
「何その態度。どうせ、安さだけで選んだんでしょ。いつも私が使ってる通販のサイトはちょっと値は張るけどセンスいいの多いから、そこ使え。メンズもあるから」
すげー上からの目線…。
実際、可愛い上に文武両道で本当、昔から俺のようになるなと言われてきた結果がこれだからな。
失敗作の兄にも意味はあるのだ。
「…はいはい。ありがと」
「一生できないと思うけど、彼女ができた時のためにおしゃれは磨いておいた方がいいから。それじゃあ」
少しして妹から招待コード付きのサイトが送られてきた。
あいつ…このために俺を使いやがったな…。
そんなことを思う白川康太であった。
◇それから数日後のこと
「…嘘…でしょ?」と、震え上がる菫。
「初めまして!こうくんの彼女の黒波唯で〜す!って、妹ちゃんめっちゃ可愛いじゃん!!えー!いいなー!妹ー!」と、2秒で抱きつく黒波さん。
家に遊びにきたいとのことだったので、誰もいない日を選んだはずだったのに…その日に限って予定が変わった妹が家にいたのだ。
最悪だ…。
「…彼女とかありえないでしょ…何?その年で結婚詐欺とかにあってる?もしくはパパ活?」
「…パパって年齢じゃねーだろ」
「あははw妹ちゃん面白いこと言うねーwちゃんと、彼女だよ?」
「…ありえない」と、完全に固まる。
「と、とりあえず…部屋行こう」と、声をかけると妹も連れて行こうとするので、「妹は置いていってください」と言うと口を尖らせる黒波さん。
そして、ニヤッと笑うと「あー分かったー。ウチにエローいことしたいから妹ちゃんが邪魔なんだー。うわー、えっちーw」とか言ってくる。
「しないから…」
「え!?しないの!?私はしたいよ!?」とか言ってくる。
ようやく時々タメ口で話すのに慣れてきたぐらいなのに…。
「こうくんはあれだよね。早漏顔だけど遅漏のタイプだよね?絶対」
「…知らないですよ//」
相変わらず俺をいじるの好きだなぁ…。
それから2人きりになると、部屋を漁り始める。
「ほほーん?なんかさー、アルバムとかないの?中学の!あー、そうそう!初恋の相手とか!」
「えー…あんまりみられたくないんですけど…」
「いいじゃんいいじゃん!ね!」
こうなったら多分、奥底に置いてあるエロ漫画を見つける勢いで探すだろうしなぁ…仕方ない。
「あんまり面白くないですよ。ほとんど映ってないし」
「まーまーとりあえず見せなさいな」
「…はいはい」
仕方なく中学の卒アルを取り出し、開く。
まさかこれを開く時が来るとはな。
中学時代は相当にやさぐれていたというか…何というか…あんまり思い出したくもないんだよな。
「ほほーん?さぁーて、こうくんはどこかな〜?」と、写真を指で追っていく。
「…んー、このページにはいない?」
「いますよ」
「え!?マジ!?どこ!?」
「…ここ」と、後ろ姿の写真を指差す。
「後ろ姿!?それは分かんないよ!」
「だから、写真が好きじゃないので…。向けられると大体そっぽついたりしてたから」
「えー!まさか…クラス写真も?」
「流石にそれは正面向いてますよ」
「だよねーww」
それから各イベントごとの写真を見ていき、写っていたのは隅っこだったり、顔が半分隠れていたりとか、そんな写真ばかりだった。
「だから言ったじゃないですか。つまらないって」
「いやいや、結構おもろいよ!ウォーリーを探してる気分!!」
「ウォーリーは見つけやすい格好してますけどね」
それから、各クラスの写真を眺める。
俺のクラスになるとすぐに俺を指差す黒波さん。
「あ、いたー!こうくんー!!かわいいー!」と、なぜかなぞり始める。
「点字ブロックじゃないので凹凸とかないですよ」
「何ぃ!?」
「なんでそんなに驚くんですかw」
それから、俺の初恋の子を当たるゲームが始まる。
「このクラスにいるの!?待って待って!当てるから!こうくんの好きな人当てるから!…これは!?」
「違います」
「こっちは!?」
「違います」
「じゃあ、この人だ!」
「違います」
見当違いな人を指差す。
「…ぐぬぬ。じゃあ、この子!」
そう、名前は金倉梨央奈。
顔はやや地味めで、無口で、真面目で…。
まぁ、顔だけなら俺と比較しても釣り合っていると言えなくもない感じの普通の女の子。
懐かしいな。
特に何かあったわけでもない。
むしろ、何もしなかった。
中学で何もしなかったが故に、高校では勇気を出そうと思ったきっかけになったのだ。
「…そう、その子」
すると、黒波さんの指がピタッと止まる。
「…へぇ〜、そ、そうなんだー…ふーん。私とは全然違うね」
「そうだね、似てないかな。性格も見た目も素朴な感じの普通の女の子…。特に話したこととかないですけどね。告白なんてもってのほかですし、何もない初恋だったけど」
「…ふーん…そっかー…。れ、連絡先とかは…知らないの?」
「知るわけないじゃないですか。女の子の友達とかいないですよ。男友達すらいないのに…」
それからの黒波さんは若干テンションが落ちた感じがした。
あんまり俺の卒アルは面白くなかったのだろうか。
そんなことを考えながら、1時間ほどして黒波さんは帰ることとなった。
「楽しかった!じゃあ、また来るね!あ、すみれちゃんも今度いっぱい話そうね!」と、手を振りながら帰っていった。
「…マジで彼女なの?ドッキリとかじゃなくて?」と、妹に言われる。
「…ドッキリではないと思う。周りが止めてるくらいだし」
「だとしたら…絶対に流すんじゃないわよ。あんな可愛い子、二度と現れないんだから」
「…分かってるよ」
そんなことは俺が一番よく分かっていた。
◇
1人で帰りながら、心の中は少しモヤモヤが残っていた。
そっかー、ああいう子が好きなんだねー。
そうだよねー。
見た目のタイプはそういう感じが好きだよねー。
あーやば…結構傷ついたかも。




