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「付き合っても良いけど多分私浮気しちゃうよ」と言ったビッチで有名な彼女が一途すぎる  作者: 田中 又雄


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13/13

卒業

 卒業式の体育館に、歌声が響いていた。


「なーがれるきーせつのまんなかでー」


 俺、佐藤康太は、壇上の前列で声を張り上げていた。


 周りのクラスメイトたちも、涙を浮かべながら歌っている。


 校長の長い話が終わり、証書授与が済み、最後に歌を歌っていた。


 制服が少しきつくなり、色んな意味で3年間の成長を感じる瞬間だった。

でも、俺の視線は自然と、隣の列にいる唯に向かっていた。


 黒髪のロングが優しく揺れ、彼女の横顔が少し涙で濡れている。


 あれから、約2年近くが経過した。


 あの事件の後、2年生の間は、噂のせいでクラスメイトから敬遠される日々が続いた。


 文化祭では、俺と唯で小さな模擬店を手伝ったけど、雑用を押し付けられたり、体育祭はリレーで唯さんがアンカーを走ってくれたけど、俺以外の声援はなかった。


 修学旅行では、自由行動の時間、俺たち2人で京都の寺を回った。


 他のグループは賑やかだったけど、俺たちは手をつないで静かに歩いて、それがすごく楽しかった。


 唯はいつも「こうくんと一緒なら、何でもいいよ」って笑ってくれた。


 その間、俺はひたすら唯に勉強を教えた。

彼女の志望校は俺と同じ大学。


 毎日放課後、図書室や俺の家でノートを広げて、問題を解く。


 最初「わかんないー!」って投げ出しそうになったけど、俺が「一緒にやろう」って言うと、頑張ってくれた。


 大変だったけど、あっという間だった。

夜遅くまで勉強して、疲れて唯が俺の肩に頭を預けて寝ちゃう日もあった。

そんな時間も俺の宝物だ。


 そして、3年生のクラス替えで、また同じクラスになった。

今までと同じかと思ったけど、運が良かった。


 他のクラスから唯の親友が居て、彼女は「唯ちゃんはいい子だよ、噂なんか信じないで!」って周りを巻き込んでくれた。


 そして、クラスメイトは噂ではなく、自分の目で判断する人が多くて、徐々にみんなが話しかけてくるようになった。


 唯は昔みたいに明るく笑うようになり、女子たちと一緒に弁当を食べたり、放課後におしゃべりしたりするようになった。


 俺も、少ないながら友達ができた。

サッカー部の奴が「佐藤、勉強教えてくれよ」って声をかけてきて、そこから少しずつ輪が広がった。

3年は、楽しく過ごせた。


 とはいえ、基本的に勉強漬けだった。

自分の受験勉強、唯に教えること、それでデートらしいデートもほとんどせずにこの1年を走り抜けた。


 結果、無事二人とも志望校に合格。

俺と唯は同じ経済学部。

大学も同じキャンパスで、一緒に通えることとなったり


 そんな思い出を、歌いながら振り返っていた。


 式が終わり、教室に戻ると、クラスメイトたちがわんわん泣いていた。

女子たちは抱き合って、

「卒業したくないよー!」

「ずっと友達だよ!」

って声を上げている。


 唯も、親友の女子たちに囲まれて、涙を拭きながら抱きつかれていた。


「唯ちゃん、大学でも連絡してね!」

「うん……みんな、ありがとう」


 唯の黒髪が、みんなの肩に混じって揺れる。

俺は少し離れたところで、それを見守っていた。


 すると、友達である岡田恭平が、肩を叩いてくる。

「佐藤、お前も泣けよ」

「いや…そういうタイプじゃないからなー」

「冷めてんな〜!今生の別なんだぞ!」

「お前、大学も学部も一緒だろ」

「そだっけ?w」


 でも、心の中は少し温かかった。


 最後のホームルームが終わると、担任が「みんな、卒業おめでとう」って声を詰まらせた。


 それから、クラスメイト全員でカラオケに行くことになった。


 駅前のカラオケボックスに30人近くがなだれ込み、部屋を2つに分けて大騒ぎ。


 唯は女子たちと一緒にマイクを回し、AKBの曲を歌ったり、友達が俺を引っ張ってきてデュエットさせられたり。


「康太、結構上手いじゃん!」


 そして、唯が笑って手を叩く。

俺は赤面しながら、でも楽しかった。

最後の瞬間を、みんなで共有している感じがした。

カラオケが終わり、外に出ると、夕陽が街をオレンジに染めていた。


 クラスメイト達とは駅前で解散。

みんなが「じゃあね」「またね」って手を振る中、唯が俺の手を引いた。


「ね、行きたい場所があるの」

「ん? りょーかい」


 唯は俺を連れて、近くの服屋に入った。

カジュアルな服のコーナーで、上下のセットを選んでくる。

俺にはシンプルなシャツとパンツ、唯さんには可愛いワンピース。


「これ買って、そのまま着替えてきて」

「え? なんで?」

「いいからいいから!」


 何が何だかわからないまま、唯の言う通りにして、店内で着替えた。

制服を袋に入れて出てくると、唯がニコニコ待っている。


「かわいい!じゃあ、行こ〜」


 そして連れて行かれたのは……ラブホだった。


 街の端にある、派手なネオンが光る建物。

俺は足を止めた。


「ちょっ……ここって……//」


 唯は俺の腕を引っ張りながら、笑った。


「そ、ラブホ。だから着替えてもらったの。約束したでしょ? 卒業まではしないって。私、もう1秒だって待てないから」


 そうだ。

結局、俺たちは2年近く付き合って、未だにキスまでしかしたことがなかった。


 唯が「絶対一回したらしまくっちゃうから…ちゃんと卒業してからしたい」って言い張ったためだった。

でも、今……ここで。


 部屋に入ると、柔らかい照明が俺たちを包む。

唯はドアを閉め、俺の胸に飛びついてきた。


「こうくん……好き」


 俺は唯を抱きしめ返した。

心臓が早鐘みたいに鳴っている。


「唯……俺も、好きだよ」


 唯は俺の顔を両手で包み、目を細めた。


「もう一度、ちゃんと告白して?あの時みたいに」


 俺は深呼吸して、唯の瞳を見つめた。


「あの……黒波さん。好きです。付き合ってください」


 唯はくすくす笑って、涙を浮かべた。


「うん、いいよ? 今ちょうど、かれぴがいないところだし。けど、きっと浮気しちゃうけどいい?」


 懐かしい、最初の言葉。

でも、今は違う。

俺は唯の手を握り、強く言った。


「浮気なんてさせないよ」


 唯は頷き、俺の唇に自分の唇を重ねた。


「私も……こうくんだけ」


 その夜は、本当に…すごかった。

きっと、卒業式以上に忘れられないと思う。


 お互いに貪るようにお互いを求め、そして俺たちの新しく大学生が始まろうとしていた。


 一緒に歩く道が、まだまだ続く。

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