95 緑の絨毯と咆哮と私
ギャギャギャ! ギャギャギャ!
殺気立ったゴブリンたちが、手に持ったこん棒を振り上げて咆哮する。17体のうち、既に7体のゴブリンが地面に倒れ込んでいる。
一番目立っているのは、スピーダーパンサーに乗ったモナリィ、そしてモナリィが弓で射抜いたゴブリンをレンがトドメを刺していく。他の冒険者たちも、2、3人で固まりながら、ゴブリンを一体ずつ確実に仕留めている。
「へえ、あの嬢ちゃん やるな」
私と同じようにひょっこりと茂みから顔を出したアリオスが、スピーダーパンサーに跨り走り抜けるモナリィを見て呟いた。
上下、左右に走るスピーダーパンサーの背の上で、大きく弓を弾いたモナリィが放つ矢は、的確にゴブリンの眉間を撃ち抜いていく。
「だから言ったじゃん モナリィは、目が良いって」
「アホ 目だけじゃねえ よく見ろ 身体の軸がぶれねえんだ あのスピードで矢を絞る瞬間 ピタッと身体が静止してるだろ あれが、すげえんだよ よほど体幹鍛えている証拠だ」
アリオスが、モナリィを素直に褒める。モナリィが、聞いていたら、ぴょんぴょんと飛び跳ね、サイドのツインテールが、ぴこぴこ揺らしながら喜びそう。
これは、是非ルーカスにしっかりと見てもらわなくては、辺りをキョロキョロ見渡すと、ちょうど良い感じに背後が岩壁のスペースがある。私は二枚の葉っぱがついた枝の先をぐぐっと前に出した。
「術式展開 絶対的安全スペース確保 結界全開」
ぶわんとドーム型のほんのり光を帯びた結界が展開される。
「術式展開 グロウ」
ハゲ散らかした土が見える地面に、緑の絨毯が芽吹いていった。その様子を大きくあんぐりと、口を開けたルーカスが呆然とする。
「あら、アルちゃん 素敵なスペースね 早速利用させていただくわ」
ジェシカが呆然と立ち尽くすルーカスの背中を押して、結界の中に入っていった。
「ルーカスさん モナリィ、頑張ってるからしっかり見てあげてね」
「ブハッ 嬢ちゃん モナリィってお前は良いのかよ」
アリオスが、私の発言に肩を小刻みに揺らして笑いだす。笑い声がちょっぴり小さいのは、ゴブリンとの戦闘中だという、アリオスなりの配慮だろうか。
「アリオスさんとアルが、緊張感なくてすみません」
バートが、何もかも諦めたような顔をして、ルーカスに向かって変な謝罪をした。アリオスはともかく、私は至って真面目だよ。バートと後でお話し合いが必要だと思った。
「もう、俺は、驚かない」
自分に何かを言い聞かせるように呟いて、ルーカスが緑の絨毯の上に座る。その背後に、難しい表情で立っている。
「まあ、意外とフカフカだわ」
ルーカスの隣で少し斜めに足を崩してジェシカが座る。そっと手のひらで緑の絨毯の感触を確かめた。
「若葉だから柔らかいでしょ?」
若い緑色の絨毯は、出来立てほやほや。だから、先っぽまで柔らかい。
「あら? アルちゃん 葉っぱの間にお花が咲いてるわ?」
お花と聞いて、ルーカスとバートが、ギョッとした目で私の杖っぽい枝の先に食いつくような視線を送る。杖っぽい枝にしっかりくっついている二枚の葉っぱ。その間にぴょっこりとピンク色の小さなお花が一輪咲いた。
「えへへ いい匂いでしょ?」
「ぶっ クククククッ 嬢ちゃん やめてくれ もう耐えられん」
ジェシカの隣に遠慮なく座ったアリオスが、緑の絨毯をバンバン叩いて笑い転げる。
「うわあ 師匠! 絨毯がハゲる やめて!」
慌ててアリオスの暴挙を止めようと、大声を上げた。
「お!ナイス ヘッドショット」
私の猛抗議をさらりと流し、アリオスは魔の前でモナリィが矢で撃ち抜いたゴブリンに視線を送る。
背中に背負った矢筒から、三本の矢を取り出し、同時に構え弓を弾く。ぎゅっと絞られた弓から同時に三本の矢が放たれた。
ギャギャギャ!
走り回るゴブリンの背に全ての矢が刺さる。たたらを踏んだゴブリンに、レンが片手に持った剣を両手に持ち替え、大きく振りかぶり、地に響くような大きな掛け声と共に振り落とす。
「どりゃあああ!」
お花が咲きました




