90 オシャレと乙女心と私
新しい朝が来た。素晴らしい朝が来た。
テントの外から、ピピピ、チチチと小鳥の囀る鳴き声が聴こえる。両手を真っ直ぐに上に上げて大きく伸びをする。
『わふっ』
「おはよう 毛むくじゃら 今日は、とっても良い天気だよ」
真っ黒なふさっふさでもふもふな毛並みのガルの首元に抱きついて、顔を埋めぐりぐりする。相変わらず、アリオスがマメにブラッシングをしているのか、柔らかい毛並みで、お日さまの匂いがする。
今回の夜営もアーくんは、何故かアリオスたちに強制的に連れて行かれてしまった。その代わりにアリオスの従魔のガルを置いて行ってくれたので、ガルと一晩を過ごしたわけだ。
いやだ、いやだとアーくんは、首を左右に振って、翼をバタバタさせて猛抗議をしていたが、残念ながらアリオスたちは、許してくれなかった。
「なんかね、男同士の話し合いって言うものがあるらしいんだよ 何だろうね?」
『わふっ?』
レンとモナリィも誘ったけれども、合同演習中にそこまで馴れ合うわけにはいかないとお断りされた。結局、ジェシカおすすめのこの広々としたテントは、未だに私一人でしかお泊まりを実施してないのが現状だ。
手早く身支度を整え、テントからひょこり外に顔を出す。ジュレルの丘にぽつん、ぽつんとまばらに設置されたテント。中には、テントもなく、持ってきた毛布にくるまって眠っている冒険者もいる。
「はいはーい アルさーん おはよう!」
「モナリィ おはよう」
元気よく手を振りながら、従魔のスピーダーパンサーと一緒に走ってくる。
「朝から元気だね んん? 何だろうね 昨日と違う気がする 気合いが漲っている?」
「アリオスさまとご一緒するんだから、あったり前じゃない!」
アリオスと一緒だからって何で?昨日は、ただのツインテールだったのに、今日は、サイドが複雑に編み込まれてる。
「モナリィ 髪の毛が昨日と違う?」
「髪の毛って ヘアスタイルって言ってよ アルさん どうどう、どうですか? めちゃくちゃ可愛くできてますか?」
私の前でポーズを決めながら、モナリィがくるくる回る。小動物みたいで、可愛い。
「うん 可愛いと思うよ?」
「って、アルさん 寝癖ピンピンじゃないですか あーあ、素材はいいんだから、もっとオシャレしてくださいよ!」
「いつもは、アーくんが、髪の毛してくれるんだよね 今日は師匠のとこだから、今いない」
フクロウが、ヘアケアやセットできるわけないと、モナリィが大笑いする。いや、うちのアーくんは、何でもできるよとは言えなかった。
「ふふふ じゃあ、今日は、私が可愛らしくしてあげるね」
手を取られてテントの中へ引き摺り込まれた。私を目の前に座らせて、ポーチからブラシを取り出すと、私の髪を丁寧に梳かしてくれる。されるがままの私は、アイテムボックスから手鏡を取り出した。
「便利だね アイテムボックス 私も覚えたいな」
「そう言えば、バートは魔術店で、魔導書を買って覚えたって言ってたよ」
私は、自分の力で覚えたため、一般的な覚え方を知らない。モナリィは、私の髪の毛のサイドを指先で少しずつ摘んで、器用に編み込み始めた。
「そっか、そうやって覚えたら良いんだね アルさーん、ありがと」
「うわぁ、私が、私じゃなくなってきた」
「へへへ 上手いもんでしょ うん アルさん とっても可愛い」
今まで、こんなに可愛らしくしてもらったことがなくて、とっても照れてしまう。アーくんぐらい、大袈裟に褒められると、はいはいって受け流すことはできるけど、手鏡に写る今日の私は、私が見ても可愛らしく見えた。
「モナリィ ありがとう 私、おしゃれってよくわからないから嬉しい」
「どういたしまして」
スズラ草の髪飾りを取り出して、サイドにパチリと止めた。綺麗に編み込まれたヘアスタイルを鏡の角度を変えながら、何度も何度も見て嬉しくなった。
「おはよ…………」
アリオスが、私を見て固まった。
「アル〜 アリオスさんが酷いんだぜって アル!?」
バートが、私を見て硬直した。
「アルちゃん おはよう あらまあ、今日は一段と可愛いじゃない」
「ジェシカさん おはようございます 本当に私、可愛いですか?」
「とっても可愛いわよ どうしたの?」
アリオスとバートを指差して、ジェシカを見上げる。いまだに二人は、私に声かけたまま、カチンコチンに固まったままだ。それを見たアーくんが、バサバサと翼を羽ばたかせ、アリオスとバートに嘴をどすどすと突き立て始める。
「うわぁ イタタタ このクソ悪魔 何しやがんだ」
「アーくん アーくん 落ち着いて 俺らが悪かった!」
『ホッホー! ホッホー!』
アーくんの怒りは治らず、アリオスとバートをこれでもかと突きまくる。
「本当に男ってダメね 女心がわからないなんて」
アーくんの報復を見て、ジェシカは、ふうっとため息を吐く。うん、せっかくモナリィに可愛くしてもらったのに、一言も褒めてもらえなかった。
「大丈夫よ 二人とも、ただアルちゃんが可愛くなってびっくりしちゃっただけだから」
「ほんと?」
「アルちゃん とっても可愛い」
アリオスとバートが何も言ってくれなかった分、ジェシカは、私を可愛い、可愛いと、たくさん言ってくれたのだった。
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お気づきになられた方もいるかもしれませんが、
全話タイトルを『〇〇と〇〇と私』に統一しました!記念に星やブクマをいただけると、語彙力がアップします!
これからも感謝の気持ちを込めて、
執筆邁進していきます!
引き続きアルたちの物語をお楽しみください




