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元Sランク冒険者は、新人!?冒険者として、お一人様を満喫したいそうです  作者: 枝豆子


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9 究極のパンケーキを求めて

 ジュレルの丘は、マローの街の北門から出てから半日ほど歩いた場所にある。そこは、色とりどりの花が咲き乱れる美しい場所で、特に春になると、その景色はまるで夢の中のように幻想的な場所で、冒険者達の憩いの場所としても人気があるらしい。


 マロー支部のギルドで冒険者登録してから初めての街の外へと遠出をする。川のせせらぎ、小鳥の鳴き声に耳を傾けながら、てくてく歩く。


 ・ハニービーのハチミツ採取

 ・ジュレルの丘に咲くスズラ草の採取

 ・ゴードンビートルの討伐


 今回、受注した依頼は、この三つ。二日もあれば達成可能な内容だ。【白銀の翼】にいた頃であれば、ただただ魔物の討伐を繰り返す日々だった。ジェシカが提案した依頼は、美味しいティータイムと究極のパンケーキを求めることが出来る内容だった。ご褒美だと言われはしたが、依頼は、こうやって受けるんだよと改めてジェシカに教わった気分だ。


 途中休憩を挟みながら歩いていたため、最初の目的地 ジュレルの丘に到着したのは昼過ぎだった。一面に咲き乱れる色とりどりの花がより幻想的な世界を思わせる。両手を広げゴロリと大の字に寝転がり、雲一つない青空を見上げる。ずっと、この穏やかな日々が続きますようにと願った。


 スズラ草の採取は、至極簡単だ。ジュレルの丘で、サーチの魔法を展開すれば、お目当てのスズラ草が淡く光り出す。その中から蕾が綻びかけたもう直ぐ花が咲く頃合いのスズラ草の根本をナイフでカット。切断面を水を含ませた綿で覆えば良いだけだ。10本を1束にして取り敢えず、10束程採取した。


 依頼は3束だが、お土産用と自分用に少し多めに採取したのは、ご愛嬌。だって、リラックス効果満点の茶葉には興味があるから。


 当たりを見回せば、花の間をハニービーが花の蜜を集めるために、ブーンと羽音を鳴らしながら飛び回っている。ハニービーは、親指ほどの大きさの虫系の魔獣だ。蜜蜂より体躯が大きいため、耳元をブーンと掠めると「うわぁ」と驚いて悲鳴をあげ刺される人たちもいる。ジュレルの丘は、色とりどりの花が咲き乱れているため、ハニービーもちょくちょく現れるのだ。スズラ草の採取をしている合間に、手頃なハニービーに私の魔力を纏わせる。こうすることで、私の魔力を纏ったままハニービーは巣に戻って行く。ハチミツは、一匹ずつ採取するより、巣を見つけて採取するのが効率が良い。20匹程度に当たりをつけ魔力を纏わせた。ハチミツの採取は、ハニービー達が巣に戻った夜からだ。究極のパンケーキを想像しては、私のお腹は、グルルと音を鳴らしてしまうのだった。


 ハニービーのハチミツ採取準備が終わり、次の行程は、メープールの樹木探しだ。樹木は、ジュレルの丘に隣接する森にもあるらしい。真っ赤に燃えるように鮮やかな赤色の葉っぱが目印だ。少し森の奥まで歩を進めると見事なまでに真っ赤な葉を纏った樹木を発見した。そうっと耳を押し当てれば、幹の中をコポコポ流れる蜜の音。たっぷりと樹液が溜まっている証拠だ。手に持ったナイフで少しばかり樹皮を剥ぐ。筒状の金属製の管を幹に打ち込むとコポリと音をたて、蜜がとろりと垂れてきた。さっそく、用意してきたガラスの瓶に溢れる蜜を集めていく。


 シロップにもなるというメープールの樹液。琥珀色のまったりとした樹液に指を潜らせ、私の唇の中に押し込む。


「んんんんん!!!」


 これは、これは、けしからん程の甘さだ。パンケーキに垂らしても美味しいだろうし、アイスクリームにかけても美味しいだろうし、ケーキに練り込んでも絶対に美味しいだろう。思わずわっしょいわっしょいと一人お祭り状態になってしまった。持ってきた瓶全てに樹液を溜めると、差し込んだ管を抜く。ポカリと空いた穴からは蜜がまだまだ溢れている。垂れ流しは、勿体ないので、管と同じサイズの線をしておいた。


 きっと明け方には、この樹液を求めてゴードンビートルが集まってくるはずだ。


 全ての準備を整え終わった私は、ジュレルの丘まで戻ることに。目的は美味しいパンケーキを焼くためだ。パンケーキの作り方は、あらかじめジェシカに教えて貰い、材料の小麦粉、卵、砂糖、牛乳も揃えてある。ふっくらと焼き上げるために、べーきんぐぱうだーなるものも用意した。もちろん、フライパンも持ってきた。


 大きな木の下の木陰で、まったりとティータイム。なんて素敵なことだろう。るんら、るんらと鼻歌混じりに目的の場所まで戻ってくると、既に先約がいらっしゃるではないか。真っ黒なガーディアンコートを身に纏った、青みがかった銀髪の男性が、すうすうと寝息をたてて眠っている。私よりも少し年上だろうか?傍らには可愛らしい犬型の獣魔も寝そべっている。獣魔は、私の気配に気づき、片目を開けてこちらを見たが、敵意が無いことがわかるや否や、ご主人様であろう男性の長い足に顎を乗せて再び目を閉じた。


 ジュレルの丘は、冒険者達の憩いの場。残念ではあるが、少し離れた場所で、パンケーキを焼くことにしよう。


 

モチベーションにつながりますので、

楽しんで頂けた方、続きが気になる方おられましたら、

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