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元Sランク冒険者は、新人!?冒険者として、お一人様を満喫したいそうです  作者: 枝豆子


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86 いやんと絶叫と私

 私から大量の素材を受け取ったルーカスは、頬をひくひくさせながら、鑑定具を使って、査定を始めた。


「どうやったら、短時間でこの量を採取できんだよ」


 ぶつぶつと心の声を漏らしながら、ガリガリと査定結果を表にまとめていく。


 査定はお任せして、残るマジックマッシュ、ニードルチップとマンドゴラの採取に向かうとしますか。どうせなら、コンプリートしたい。


 ジュレルの丘に隣接する森は、森の恵みが豊富だ。次いでにメープールの樹液も採取しておこうかな。


 マジックマッシュは、薬の調合によく利用されるキノコだ。気をつけないといけないのは、マジックマッシュの胞子を吸い込まないこと。吸い込んでしまうと即座に酔っ払った状態になってしまうので、深い森の中だと、たちまち魔物の美味しいご飯になってしまう。お酒を買うより安く酔っ払えるとかで、特定の顧客に人気があるらしい。


 ニードルチップは、トゲトゲの木の皮だ。ニードルチップを使ってベーコンやソーセージなどの燻製を作るととても美味しいらしい。尖ってトゲトゲした硬い木の皮なので、剥ぎ取る時に、怪我をしやすい。


「あ、マンドゴラ発見! ふふふ」

『ホッホー?』

「そうだよ マンドゴラは、引っこ抜くと叫び声を上げるんだよ その声聞くと気絶しちゃうんだ」


 アーくんもマンドゴラの叫び声は知っているらしく、微妙な表情で私を見上げる。


「引っこ抜かなければ良いんだよ」


 手のひらを地面につけて、魔力を流す。マンドゴラがどのように根が張っているか土の中を確認。


「ウォーターボールの温度は、人肌よりチョイと高めにっと」


 ぼこりと土ごと浮き上がるマンドゴラ。アーくんが少し驚いて後ろに跳ねる。


 周りの土ごと掘り起こしたマンドゴラをウォーターボールの中に突っ込んで、周りの土を優しく落としていく。アーくんは、興味を持ったのかウォーターボールの中のマンドゴラをじっと観察している。


「引っこ抜いたマンドゴラって、干からびたミイラみたいな顔でしょ こうやって掘り起こして土だけ綺麗に落とすとぷりっぷりの可愛らしい表情のマンドゴラが採取できるんだよ」

『ホッホー!』


 ウォーターボールの中で、ゆらゆらと泳ぐマンドゴラ。泥水を入れ替えながら、マンドゴラに纏わりつく土だけを洗い流す。ウォーターボールの中が、最適なのか、マンドゴラがほんのりと桃色に頬を染めた。


『ホッホー』

「ね、超ベッピンさんのマンドゴラでしょ」


 幼い頃、何度も何度もマンドゴラの絶叫に苦労した私が見つけた採取方法だ。ぷりっぷり、つやっつやのマンドゴラを優しく柔らかい布で拭いていく。


『いやん』


 マンドゴラは、可愛らしい声で鳴いた。つぶらな瞳をぱしぱしとさせてアーくんが首を傾げる。


『いやん』『いやん』『いやん』


 アーくんが、そろりと翼で撫でるだけで、マンドゴラは、頬を染めながら可愛らしく鳴くのだった。これぞ、まさにフェザータッチ。





 マンドゴラ、マジックマッシュ、ニードルチップが大量に採取できたので、一旦ジュレルの丘に戻ってきた私たち。


 ルーカスとジャビルが待っているだろう仮設テントが見えて来た。


 タッタッタと軽やかな足音が聞こえてくる。


「あれは、スピーダーパンサーだね」

『ホッホー』


 スピーダーパンサーは、大きな体躯でありながら、人の50倍は早く走ることが出来るスピードタイプの魔獣だ。その素早さのため、討伐難易度が、とても高い。


『ホッホー』

「あれ、背中に誰か乗ってる?」


 スピーダーパンサーの背には、二人の冒険者の姿が見えた。ようやく他の冒険者たちが、到着し始めたようだ。てくてく、のんびりと、仮設テントへと歩いていく。


「どういうことだ? 俺たちが一番じゃないのかよ?」


 テーブルを両手でバンと叩いて、ジャビルとルーカスに噛みついている冒険者。聞き覚えのある声だと思ったら、レンとモナリィの二人組だ。


「モナリィ、どうしたの? 何かあった?」

「あれ、アルさん 今、到着? けっこう速いね」

「えっと」


 既にゴールしてますよ?とは、言いづらい雰囲気がする。


「私たちね、スピーダーパンサーに乗って来たんだけどさ、そこの職員さんが、二着だって言うのよ そんなのあり得る? スピーダーパンサーだよ?」


 二人でワンツーフニッシュを決めるつもりだったのにと可愛らしいほっぺを膨らました。スピーダーパンサーは、そんなモナリィに身体を擦り付け、長い尻尾を巻き付ける。


『にゃうん』

「おお、見事なもふもふ 抱きつきたい」

「でしょでしょ! 幼体の時から育てたの」


 モナリィが、首周りをガシガシと撫でるとゴロゴロと大きな音で喉を鳴らす。


「あー アル!聞いてくれよ 俺らより速くゴールした冒険者がいるって言うんだぜ」

「あー」


 それは、私ですと、言うべきか?


「レンさん、モナリィさん そのアルさんこそが、一着で、ゴールされました ちなみに、二つ目の課題も既にクリアされてますよ」

「ええ!?」

「なんだって?」


 取り敢えず、レンとモナリィに向かって、ピースサインをしてみた。


「レン、やばい こんなことで揉めてる場合じゃない!」

「お、おう 早く、次の課題よこせ これ以上差を広げられてたまるか!」


 一着が、私だと聞いて、文句の一つでも言ってくるのかと思えば、素直に負けを認めて気持ちを見事に切り替えた。


 そして、続々と冒険者たちが、ジュレルの丘に集まり始めた。


 

『いやん』

マンドゴラが、絶叫するとは限りません


まだまだ、お話し続きます

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