82 ランクと合同演習と私
冒険者には、ランクというものが設定されている
Eランクは新人。Dランクは、初心者。Cランクは、中堅。Bランクは、ベテランでAランクが上級者。
そして、Cランクまでは受注した依頼や、採取した素材や討伐した魔物の売買などの実績で自動でランクアップする仕組みだ。私は、登録して二日目にして、サイクロプスを買い取ってもらったことで、不本意にもランクアップしてしまった。
家に帰ると作業場でバートとイッチが、食堂で休憩していたので、ジェシカから言われた合同演習について、話をした。
ジェシカに渡されたチラシをバートに見せると、アリオス同様に「面白い」と呟く。
何が面白いのかわからず、首を傾げるとバートが尋ねてきた。
「アルがメインで受注している依頼って確か、屋根の修理や清掃活動とかで、極々稀に低ランクの魔物の討伐を受けてたんだっけか?」
「うん ジェシカさんが、新人らしい新人冒険者として振る舞えるように選んでもらってた」
「へえ、ならアルの実力をほとんどが知らないんだな」
Cランク限定、新人王決定戦。冒険者として実力を皆に知らしめることができるギルド主催のイベントだ。Cランクといえば、冒険者としてひとり立ちできるランクでもある。より、高みを目指す冒険者は、この新人王決定戦に心血を注いだいるらしい。
「そんなに注目されたいものなの?」
「そりゃそうさ 高ランクへのランクアップ目指すにしても、指名依頼を増やしたいにしても、有名処のパーティに入るとしても、名前を売ってなんぼじゃねえか 俺だって、錬金術師として成功したいから、毎年品評会に参加してたわけだし」
そうだ。バートは、今年こそ優勝して実力者として名前を馳せたけど、去年までは、技術はあるけどセンスがないと微妙な立場だった。
「アル そんな可哀想な子みたいな目で見るのやめてね」
「おうおうおう、娘っこ 今のバートは、やるんだぜい」
イッチもバートの実力を認めているけど、本当に残念な錬金術師だったんだから。
「ジェシカさん曰く、私は、たいした依頼も受けてないのに、Cランクってのが気に入らないって言われたらしい あと、【白雪】のメンバーということが、ずるいんだってさ」
「うっへぇ めんどくさ」
だよね。バートの意見に激しく同意だ。
「合同演習ね」
バートがテーブルに置いたチラシをズズッと指先で引き寄せ、改めて目を通す。
Cランク限定 合同演習
心技体を極めろ 新人王決定戦
日時:12の月 10の日 午前10時
集合場所:ギルドマロー支部 訓練所
参加資格:本年度Cランク認定者
演習内容:実践形式での魔物討伐、素材採取
総合ポイント上位4名による模擬戦
持ち物:制限なし
武器 防具 飲料水 ポーション類各種
必要性あると判断するアイテムは、各自持参
「このチラシから読み解く情報もあるからね」
ジェシカは、そういって手を振りながら去って行ったことを思い出す。何度も何度も読み込んで、チラシの隠された意味を考える。アリオスとバートが、「面白い」と言った意味もそこにあるのかも知れない。
12の月、10の日。結局、何が「面白い」のかわからないまま、合同演習の日がやってきた。
「師匠、チラシには、保護者同伴とは書いてないよ?」
「ああん 誰が保護者だ 俺だって巻き込まれたんだよ」
「だからって、俺まで巻き込まなくても良いじゃないっすか」
そう、Cランク合同演習にも関わらず、アリオスもバートも連れだって側にいる。
『わふっ』
『ホッホー』
毛むくじゃらは、お散歩気分で尻尾を振りながらアリオスの側を歩き、アー君はフクロウの姿で私の肩に乗っている。
「おはよう アリオス、バート ご協力感謝するわ」
「ジェシカさん おはよう 協力って?」
「あら、アリオスから何も聞いてないの?」
ギルドの訓練所に着くと、ジェシカから声をかけられる。
「ああん お前が言うなって言ったんだろうが」
「あら、約束守ってくれたのね 感心感心」
「師匠、声大きい みんな見てる」
アリオスが、大きい声をあげるから、本日合同演習に参加するだろう冒険者たちが、私たちを注目している。
「女狐め 何が感心だ」
「アルちゃん ギルド人手が足りないから、今日の合同演習に【白雪】に応援要請しちゃった」
パチンとウィンクしてくるジェシカ。
「どうせ、こっそりアルちゃんの様子を見るつもりだったんでしょ それなら堂々と運営側として私たちを手伝いなさいよ」
「いや、ジェシカさん そんなストーカー紛いな事するのはアリオスさんだけであって、俺は大人しく留守番できるっすよ」
「ごめんね、アリオスがバートも一緒じゃなきゃ手伝わないって言うもんだから」
「結局、俺を巻き込んだのは、アリオスさん アンタじゃないっすか!」
「うるせぇ 文句を言うな リーダーの命令だ」
遠巻きに見ている冒険者たちが、私たちを見て、ヒソヒソと囁いているのが聞こえてくる。こっそりと聴力強化して聞き耳を立てた。
「アリオスさんとバートさんも運営スタッフとして参加するって」
「やった お近づきになれるかしら?」
「私、アリオスさまに守られたい」
「バートさんだって好物件よ」
「あのちんちくりんが、アリオスさまの弟子ですって」
「ふん 私の勝ちね」
「私の方が、絶対可愛いわよ」
「俺、あの娘でもいい 付き合ってくれないかな?」
聞けば聞くだけ、げんなりしてきた。よし、アリオスとバートは、生け贄として差し出そう。
「ジェシカさん 師匠とバート 好きに使ってください」
「あら、話が早くて助かるわ」
大きく目を開いたアリオスとバート。私の平穏のために、運営スタッフとして頑張ってください。




