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元Sランク冒険者は、新人!?冒険者として、お一人様を満喫したいそうです  作者: 枝豆子


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79 名もなき青とカップケーキと私

 聞き慣れた子どもたちの騒ぐ声が遠くに聞こえる。ゆっくりと目を開けると、にっこりと微笑んだマザーの顔が見えた。


「お帰り アル」


 その言葉だけで、私の涙腺が緩む。ドンとマザーの胸に飛び込むと、それに応えるようにマザーに両腕が優しく私を包んだ。


「ただいま ただいま マザー」

「お姉ちゃん! よかった 帰ってきた!」


 マザーに抱きついた私に、背後からリズが飛びついてきた。


「アリオスのおじちゃん お姉ちゃんを連れて帰ってきてくれてありがとう」

「ああ、約束しただろう 任せろって」


 ズビズビと私の後ろで鼻を啜るリズの頭をアリオスが、ぽんぽんと優しく撫でた。



「はい、どおぞ アルさんの好きな スズラ草ハーブティーだよぉ」


 エプロン姿のジュジュが、コトリと私たちの前にティーカップを並べてくれる。一通りの抱擁と挨拶?終えた私たちは、ことのあらましを報告するため、食堂へ移動した。19号さんや連れてきた子どもたちもいるからね、なにかと大人数だとマザーの執務室では、手狭だ。そして、お茶とは別に、子どもたちにカップケーキを用意してくれるジュジュ。


「うわぁ」

「いい匂い」

「おいしそう」


 子どもたちは、カップケーキに視線が釘付け。ジュジュが、食べていいよと伝えると、皆が皆、カップケーキを手に取って、大きな口を開けて齧り付く。ふも、ふも、ふもってなりながら、食べてるよ。


「この子たちに親はいないのかい?」


 マザーが、カップケーキを頬張る子どもたちを見ながら、19号さんに聞いた。


「はい この子たちは全て孤児院からムガルが連れて来た子たちです 多かれ少なかれ、魔力が発現しているため、術式に魔力補填をする道具として扱われていました」

「酷い 道具だなんて」

「ムガルは、その程度の価値としか見ていませんでした」


 だから、名前すら与えられていないのだと19号さんは、付け加えて言った。


「ふうん じゃあ、僕が名前をつけてもいいかなぁ」

「なまえ?」

「わたしも?」

「うん、みんなの名前だよぉ」


 ジュジュが、子どもたちの頭を撫でながら、微笑んだ。じっと子どもたちの顔を見て、にっこりとジュジュが一人、一人に優しく声をかけていく。子どもたちが、嬉しそうに笑うと、ジュジュが、「そうだなぁ」と少し首を傾げながら考える。


「三人とも綺麗な青い色の瞳だねぇ そうだ、アクア、ラピス、そして女の子は、マリンってどうかなぁ」

「アクア?」

「僕、ラピス?」

「わたし マリン?」

「そう、ぜーんぶ、綺麗な青い色を表す名前だよぉ」


 子どもたちが、お互いにお互いを指差しながら、自分たちの名前を呼び合う。


「ジュジュ、とっても素敵な名前だよ」

「えへへ、喜んでもらえたら嬉しいなぁ」

「嬢ちゃんよりネーミングセンスが良いな」

「し、師匠 酷い」

「そうか? 結構可哀想な名前をつけられた奴知ってるけどなぁ」


 アリオスの視線を追うと、アーくんで止まる。


『ホッホー?』

『わふ?』

「確かに アルのネーミングセンスは、ないわ〜 ガルもいまだに毛むくじゃらって呼ばれてんもな」


 毛むくじゃらって、可愛いじゃん。もこもこ、もふもふの名前だよ。アーくんだって、可愛いじゃん。


「アーくん、毛むくじゃら〜 可愛いよね」

『ホッホー』

『わふっ』

「可愛けりゃ良いってもんじゃねえと思うけどな」


 頬を思いっきり膨らますと、アリオスに生意気だと頬を指で突かれ、潰された。


「じゃあ、僕は、子どもたちを紹介がてら、中を案内してくるよぉ」

「ジュジュ 頼むよ」

「はーい アクア、ラピス、マリン 一緒に行こうか」


 ジュジュは、子どもたちと手を繋いで、食堂から出て行った。本当に、優しくて素敵なお兄さんだと思う。ジュジュがいれば、三人ともすぐにここの子どもたちと仲良くなれるだろう。


「子どもたちを受け入れてくれて ありがとう 改めて礼を言う」


 19号さんが、椅子から立ち上がると、深々と頭を下げた。


 アリオスからも、マザーが子どもたちを引き受けるつもりでいることを聞いていたが、19号さんも無条件に受け入れてくれるとは、思っていなかったらしい。


「子どもたちに罪はないだろう どちらかといえば、被害者じゃないか」

「確かに、そうだとしても」

「良いんだよ 子どもたちに道を示すのが、大人の役割ってもんだ」

「マザー カッコいい」

「ありがとよ」


 食堂の扉の向こうから、子どもたちの笑い声が聞こえる。マザーやジュジュという立派なお兄ちゃんに見守られて、この先、幸せになれると思えた。


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