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元Sランク冒険者は、新人!?冒険者として、お一人様を満喫したいそうです  作者: 枝豆子


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76 敬礼とアリオスと私

 アクセス・ゲート、それは失われた古代魔法の一つで、座標さえわかっていれば任意の場所に転移することの出来る魔術だ。


「へえ、ここが【白銀の翼】か」

「もう二度と来る予定は、なかったんだけどね」


 十年以上もの間、奴隷として囚われていた。【白銀の翼】のギルドマスターの執務室の座標は、調べる必要がないほど、把握していた。


「な、なんだ貴様たちは!」


 突如現れた私たちに、驚きの声を上げたのは、ギルドマスターのゴーツクンだ。相変わらず、指や首にギラギラ、ゴテゴテの装飾品を大量に着けている。


「んー、んー、んー」

「おおおええええ」

「んぐっ」


 もれなく魔力酔いを起こしている三人。ヘルミナは、猿轡されているので、涙を流しながら、ゴーツクンに助けを求めて芋虫のように這っている。


「な、なんだ 汚らしいって …… へ、ヘルミナか?」

「よお ゴーツクン オマエんとこの娘が、ちょっとオイタが過ぎたんでな お灸を据えてやっただけだ」

「アリオス殿……が、なぜ」


 アリオスが、首を左右に振り、コキコキと関節を鳴らす。流石に、ゴーツクンもSSSランクのアリオスについては、面識があるのがわかる。アリオスも、最初に「嫌いだ」って言ってたしね。


「それと、そこのパンイチの男は、【白銀の翼】入団志望の男だ 好きにしてくれ まあ、存続出来ればの話だが」


 アリオスの言葉に大きく目を見開たゴーツクン。【白銀の翼】は、彼のステータスの一つだ。存続の是非を言われれば、心中穏やかではいられない。


「ど、どういうことですかな」

「それは、オマエとこの男がよくわかってんじゃねえのかよっと」


 アリオスが、未だに魔力酔いで嘔吐いているムガルの背中を蹴り飛ばす。ごろごろと転がりながら、ゴーツクンの前にムガルが押し出された。


「ムガル! ムガルじゃないか ま、まさか?」


 私は、ローブのフードを外し、アリオスの隣に立った。


「ア、アルデリア! 帰って来てくれたのか」

「本当に都合の良い頭だね 帰って来たじゃないよ もう二度と私の前を彷徨かないで」

「ま、そういうことだ 誘拐、監禁、傷害、殺人未遂、調べればもっと罪歴が出てくるだろう 筆頭魔術師だったんだろう 懐刀だったと聞いている ゴーツクン、オマエが何も知らない訳ないわな?」


 力が抜けたように膝から崩れ落ちるゴーツクン、そしてその目の前に、19号さんが静かに立った。足元から見上げるように上を向くゴーツクン。19号の顔を見て、少し希望を感じたのだろうか?


「19号 よく戻った 私を守れ 守ってくれ」


 ゴーツクンが、19号さんの足に縋り付く。全く、ムガルと同じ行動してるよ。19号さんは、静かに首から下げられてるタグプレートを外すと、ゴーツクンの両手に握らせた。


「たった今を持って、そのタグプレートは、お返しします もう、私も二度とここに戻って来ることはないでしょう」

「19号 19号 待ってくれ」


 くるりと踵を返し、ゴーツクンから離れていく。


「アル殿、他にも呪印を持つ者がいます 彼らも解放してもらえますか?」

「直ぐに解放ではないかもしれないが、取り敢えずここに連れてくれば良い」


 アリオスが、私の代わりに答える。「それでも、かまいません」と顔を綻ばせる19号さん。19号というだけ合って、他にも呪印で縛られている人がいることは、予想していた。

 

「終わりだ もう何もかも終わりだ」


 再会してから1時間も立っていないにも関わらず、ゴーツクンが一気に老け込んだように見える。背中を丸め、助けを請うヘルミナを見ることなく、ただ床の一点だけを見つめて呟いていた。


「すべて、自業自得 最後は、長として責任取るくらいの落とし前は、つけろや」


 アリオスは、執務机に置いてある通信機を使って、ゼブディア騎士団に連絡を入れた。騎士団って、こんなに行動早いものなの? 連絡を受けて、それほど待たずして騎士たちがやって来た。ザッザッザッと隊列を乱すことなく執務室に足並み揃え入ってくる。最後に入って来た人は、団服が他の騎士より豪華に見える。そして、アリオスの前に立つと、横並びの騎士が、その後ろに並んだ。


「敬礼!」


 掛け声と共に、騎士団全員が、アリオスに向かって背筋を伸ばし、踵を鳴らして揃えた後、バシッと右手をあげ手のひらを左下方に向ける。人さし指を被っている兜の右斜め前部にあてた。一糸乱れぬ動きに、思わず「おおっ!」と声を上げそうになる。


「いい、いい そんなん 要らんから、そいつらを早く連れてってくれ」


 少しバツの悪そうなアリオスが、右手をヒラヒラとさせながら言った。


「前列四名は、拘束されている三人を連行しろ 残りは、このまま捜索にあたれ」

「ハッ!」


 指揮官が指示を出すと、短い返事をして団員たちが各自持ち場の作業を始めた。その様子を見ていた指揮官が、改めてアリオスに向き直る。


「アリオス殿下 お久しぶりですな」

「殿下?」


 アリオスは、少し唇を尖らせ不貞腐れている。そういえば、ムガルがアリオスについて、元王族って言ってたっけ?


「んああ もう 俺はそういうしがらみを捨てている ただのアリオスだ 何度も言っているだろう」


 ガシガシと右手で銀髪を掻きむしるアリオスだった。

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