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元Sランク冒険者は、新人!?冒険者として、お一人様を満喫したいそうです  作者: 枝豆子


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74 地獄の扉とヒーローと私

 地面から迫り上がって現れた真っ黒な扉が、ゆっくりと開いていく。隙間から蒸気が溢れ流れてくる。


「な、何が起きた 何だっていうんだ どうして、呪印が刻まれない」


 ムガルは、今しがた目の前で起きたことが、信じられないようで、喚き散らす。そして、扉の奥から二人の見慣れた人影が現れると同時に、黒い塊りが飛び出した。


『わふっ』

「毛むくじゃらぁ」


 ガルが、私を守るようにムガルと私の間に立った。抱きつきたいけど、両腕、両足を縛られ拘束されている今は、それも出来ない。だけど、この後現れてくれるであろう待ち人が来ることが判るだけで、涙腺が緩みそうだ。


「あ、あり得ない 私の計画は、完璧だった どけぇ それは、私の物だ! 犬風情が触っていい物ではない!」


 ムガルがゆらりと立ち上がり、脇に挿した剣を抜いて鬼のような形相で、ガルに向かって大きく振りかぶる。


 ガキン


 振りかぶった剣は、現れたアリオスによって軽く受け止められた。ムガルの剣をはね上げると、アリオスが剣を持ったままの拳を顔面にめり込むように打ちこんだ。


「あぶへっ!」


身体を回転させながら、ムガルが壁に激突する。私の目の前に、待ち望んでいた大きな背中が、目の前にいた。


「嬢ちゃん 待たせた」


 後ろを振り返り、アリオスが笑みを浮かべる。


「アリオスさんだけじゃねえぞ 俺も来た」


 私の背後から声をかけてくれたのは、バートだ。身体を起こしてくれ、胸までたくし上げられた衣服をそっと直してくれ、脱がされたローブを肩にかけてくれた。


「し、師匠 バート 迎えに来てくれると信じてた」


 馬車の中で、ムガルに襲撃を受け、薄れる意識の中、アリオスの「待ってろ 必ず迎えに行く」と叫んだ声は、しっかり届いていた。信頼しているからこそ、私は、私で、あり続けられた。


「我が姫、作戦だとはいえ、直ぐに助けてあげられず申し訳ございません」


 アーくんもフクロウから人型に戻っちゃってる。ずっと私を見守ってくれてたもんね。アーくんが、私の両腕を取り、拘束している錠を無効化していく。バラバラと腐るように塵になる。両腕の次は、両足の錠だ。私を拘束する物は、全て消え失せた。


「我が姫、おいたわしや 今すぐに私めが、治療をして差し上げます」


 胸元から取り出した柔らかい布で、ポーションを振りかけながら、私の額から流れる血を拭っていく。やはり悪魔だから、聖属性の治癒魔法は使えないんだね。


「あり得ない あり得ないぞ! なぜ、貴様がここにいる ここにいてはならないんだあ!」

「フンッ 俺らが、ヒーローだからじゃねえか?」


 おおっ、自分でヒーローって言っちゃった。鼻を鳴らしながらアリオスは、胸を張って答える。バートに手を差し伸べられ、その手に私の手を重ねると、ぐいっと立ち上がらせてくれた。


「バート、本当に、どうやってここに来たの? あの黒い扉は何?」

「ああ、アレか? アリオスさんだけが使える 地獄の扉(ヘルゲート)らしい 俺、初めて地獄っての見たわ すげえぞ SSSランクってダテじゃねえぞ」


 地獄の扉(ヘルゲート)って使用するには、地獄の門番(ケルベロス)の許可が必要なはずなんだけど?


「毛むくじゃら殿は、お父様が、ケルベロスで、お母様が、聖獣フェンリルという由緒あるお生まれなのです」

「何? アーくん どこ情報?」

「従魔同士、語らうこともあるのですよ」


 意外に意外、アリオスの従魔であるガルと私の従魔であるアーくんは、実は仲良しさんだったらしい。よく、フクロウの姿で会話しているなとは思ったけど、そんな会話をしてたんだね。


 怒りに我を忘れ、アリオスに襲いかかるムガルの剣は、何度も何度も、軽く受け流されては、上から叩きつけられ、切り裂かれ、挙句の果てには、蹴飛ばされ、みるも無惨なぼろぼろの姿に変わり果てていた。


 ふう、ふう、と肩で息をするムガルが叫ぶ。


「19号 もういい 私を守れ、奴らを殺せ!」


 今まで部屋の片隅で、ずっと立ったままだった、無表情な黒いローブの男が、ムガルとアリオスの前に立ちはだかる。そうか、もう一人のお供も、過去の私と同じだったんだね。私は、ゆっくりとアリオスの隣へ移動した。


「嬢ちゃん 休んでいて良いんだぞ」

「もう、平気 大丈夫」


 アリオスの隣に立つ私を睨みつけるムガル。


「アルデリア 貴様ぁ 貴様ぁ」

「だから 帰るって言ったじゃん ムガル、貴方に格の違いってもの見せてあげる」


 19号と呼ばれた男が、ゆっくりと剣を抜いて、上段に構える。ムガルが、その後ろにたたらを踏みながら、隠れるように背後へ後退りする。私は、大きく息を吸い込んで、両手を前に出した。


「術式展開 解呪!」


 19号と呼ばれた男が、赤い光に包まれる。そして、上段に構えた剣が、手から離れ、カランと床に落ちた。


「19号 何をしている!」


 ムガルが、喚き散らすが、19号は動かない。そして、赤い光が消えると同時に、糸が切れた操り人形の如く、その場にへたり込んだ。


「ア ア ア アルデリア! 何だ さっきといい、今も 何をやった!」

「だから、格が違うって言ったじゃん 三流魔術師さん」

「この役立たずがあ!」


 ムガルが、19号の背中を蹴り飛ばそうと、右足を大きく上げた直後、19号が腕を振り上げ、ムガルの右足をさらに跳ね上げた。


 バランスを失ったムガルが、ドシンと尻餅をついた。


 

毛むくじゃら ガル ケルベロスとフェンリルの子ども やっと書けました

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