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元Sランク冒険者は、新人!?冒険者として、お一人様を満喫したいそうです  作者: 枝豆子


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70 シャボン玉と花束と私

 里親の試験期間は、一週間の予定のため、後三日ほど残っている。リズの警戒心は、最初の頃と比べて薄まっているけれど、急激に距離感を詰めたりとか変わった動きは見られない。


「仕掛けてくるとしたら、残り三日のうちどこかってことか」

「リズちゃんは、ムガルを里親としては、どう思うの?」

「うーん アタシに優しいけど それだけ」


 優しいけど、それだけ? ってどういうことなのだろう。私たちが、首を傾げるとジュジュがリズを抱き上げ、質問を重ねる。


「ムガルのおじちゃんはぁ、頭を撫でてくれた?」

「ううん 一度もないよ」

「じゃあ、リズの将来の夢を聞かれたりした?」

「ううん 聞かれたことないよ」

「そっか、ムガルのおじちゃんはぁ、いつも誰を見てたかなぁ?」

「えっとね お姉ちゃん いつも、お姉ちゃんばかり見てた!」


 その答えを聞いて、思わず背筋がゾクリとした。私ばかりを見てた? 気持ち悪い!


「おいおい それは、マジか?」

「アタシね、ジュジュに言われた通り、アタシからアタシのことをムガルのおじちゃんに話さなかったの それと、ジュジュがね、ムガルのおじちゃんが誰を見てるかよく見ておくようにって言われたから、ずっと観察? っていうのしてた」


 ふと視線を上げれば、ムガルと目が合っていた。微笑むというか、気持ちの良い視線じゃなかったので、基本的に無視をしていたけど、リズが指摘するくらいに見られていたとは。


「ますます バートの予測が正しく思えてくるな」

「我を忘れて、師匠グッズを買い漁った自分を叱り飛ばしたい」

「おい 俺のグッズなんて捨ててしまえ」

「絶対にヤダ ジェシカさんにも見せる」

「クッソ 誰だ んなもん許可したの」

「エルビスじゃないか? 笑ってハンコ押したんだろうよ」


 ギルマスかあ。企画書見て、爆笑しながら許可してる姿が、想像できちゃうね。「あのハゲ!」とか言ってアリオスは、文句言ってるけど、私はギルマスを応援するよ。


「それで、孤児院は、何もない?」

「ん? 特にこれといった変化はないな」

「そうだね、魔獣が数体現れたけど、ガルとアリオスが蹴散らしてくれたしね」

「魔獣が出たの?」


 孤児院は、マローの街外れにある。そのため、たまにだが魔獣が出現することがあるらしい。元冒険者のマザーからすれば、よくある事で、いつもはマザーが、討伐していると言った。


「訓練がてら、弱い魔獣なら子どもたちを連れて行くこともあるさ」

「みな、冒険者の子どもたちだしな」


 アリオスもマザーも大したことないと笑い飛ばしていた。


 五日目。中央広場に連れて行かれる。


「今日は、ここでヘルミナさまが、実演販売をしていますので、それをご覧になっていただくのも面白いのではと」


 ムガルが言う通り、中央広場で子どもたちを集め、背中に翼を背負ったヘルミナが踊っていた。ステッキからシャボン玉を振り撒き、そのシャボン玉を子どもたちが追いかける。


「コーザ、そのステッキは、いくらだい?」

「あー 500ダリルだ」

「じゃあ、翼もつけてくれ」

「なら、1500ダリルだ 毎度あり」


 街の住人と顔馴染みのコーザが、取り仕切って販売しているよ。アリオスに脅されて、【白銀の翼】に移籍するつもりなのだろうか。私たちの姿を見て、バツが悪そうに視線を下に向けている。


「ヘルミナさまに、連れて行ってくれとお願いされてましたよ」

「へえ、そうなんだ」


 どうでもいい情報だったけど、コーザがそう決めたのなら、止める気はない。もともとマローでも肩身の狭い冒険者だったし、新天地で頑張れば良いと思う。


「本日のお土産に、ステッキと翼を5セットほどお譲りしましょう 子どもたちを喜ばせてあげてください」


 子どもたちが喜ぶ。実演販売の様子を見ても、その言葉は嘘ではないと思った。だけど、正直なところいらないな。帰りの馬車の中で、ムガルがリズにステッキの使い方を教えてくれた。馬車の中で、シャボン玉が発射され、甘い匂いで鼻が曲がりそうだった。


「嬢ちゃん、臭えな」

「言わないで 知ってるから シャボン玉の匂いだよ」

「ヘルミナって人の香水と同じ匂いなんだって」


 子どもたちには、ステッキは絶対に外で使うようにと伝えた。毛むくじゃらが、私のローブに鼻を近づけ、くんくんと匂いを嗅いだ後、鼻筋にものすごい数の皺ができた。


「ガルが臭いってよ バートの洗濯機で洗って来い おっと、その前にエンブレムも外せ バートが磨いてくれる」

「あ、洗濯機 使いたい! ジュジュ 使い方教えて」

「良いよぉ」

「アタシも アタシも!」


 ローブから【白雪】のエンブレムを外し、バートに「綺麗にしてね」と言って渡して、ジュジュとリズと一緒に、脱衣所に向かった。バート印の洗濯機は、乾燥機能まで付いていて、リズと二人、衣類が回る様子をずっと見ていた。


「今日もねぇ 魔獣が出たよ アリオスさんがいっぱい狩ってくれたから 当分お肉には困らないよぉ」


 魔獣討伐は、アリオスのストレス発散にもなっているらしい。バートは、丁寧にエンブレムを磨いてくれたらしく、以前よりもピカピカになっていた。


 六日目。今日の目的地は、植物園だ。可愛らしいお花がいっぱい咲いていると、リズが大喜びだ。


「アルデリアも花が好きですか?」

「嫌いじゃない」


 リズに言われて、改めてムガルが私の機嫌をとっていることが、よくわかる。どんなに素気ない返事をしても 目を細めて口角を上げる。振り向けば、リズではなく、私を見ている。後一日、後一日で、試験期間が終わる。それまでの我慢だと、自分に言い聞かせた。


 今日のお土産は、花束でした。少し香りの強い花だったが、リズが喜んでいたので、良しとしよう。

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