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元Sランク冒険者は、新人!?冒険者として、お一人様を満喫したいそうです  作者: 枝豆子


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65 来訪者と孤児院と私

 リズとジュジュに魔力制御と魔術について、指導するため私は、毎日のように孤児院へ通っている。


「なんか見慣れない馬車がある」

「そうだなぁ ん? あいつは、ギルドで見かけたことがある気がするぞ」

「……コージ? 違う コーザ コーザだ 娼館狂いのコーザだ」

「なんだ その恥ずかしい二つ名は」


 馬車の側に立っていたのは、私がマローに来て冒険者ギルドの新人講習会で声をかけてきた男、コーザだ。


「ギルマスとジェシカさんから教えてもらった 穴があれば何でも突っ込みたくなる人で、Fランクの冒険者らしい」

「穴って……嬢ちゃん、絶対意味をわかってないだろう まあいい あいつ、だれか連れて来たんじゃないか?」


 アリオスが、顎をしゃくりながら馬車を指す。孤児院には、バートもイッチもいる。だれが何の目的で来たかは、情報が入るとして、コーザがいるのは、嫌な予感しかしない。


「げっ アル とアリオスさん」


 お前が、「げっ」とか言うなよ。それは、こっちのセリフだよ。


「だれだ、テメエ 人の名前を言う前に、自分の名を名乗るのがマナーじゃないのか?」

「し、失礼しました コーザです 初めまして オレもマローで冒険者やってます」

「冒険者ねえ で、ランクは?」

「うっ それは その……F です」


 私から聞いて、彼のランクを知っていたにも関わらず、敢えて自分で言わせるなんて、性格悪いなぁ。絶対的な強者と弱者というものがありありとわかってしまう。


「それで、そのFランクさんが、孤児院に何の用だ? そのランクじゃ、護衛依頼でもないよなあ」

「あ…… うぅ…… その…… ヘルミナさまが、孤児院にご興味を持たれ……まして」

「ちょっと ヘルミナ! ヘルミナって言った?」

「な、なんだよ おまえ おまえ、あん時の新人だろうが! 先輩をなんだと思ってやがる」


 ヘルミナの名前を聞いて、思わずコーザの胸ぐらを掴んだ。ガクガクと揺さぶる私に、不愉快極まりないといった表情で、コーザは強気で唾を吐きながら文句を言う。先輩だろうが、知るかそんなもの。


「おい、アルは、オメエよりもランクは、上だ オメエが、敬えよ」

「ひっ し、失礼しました!」


 確かに、ギルドではなるべく目立たないようにしていた。受注する依頼だって、ポイントが低い案件ばかりだし、冒険者のタグプレートもいまだにピカピカだ。アリオスに凄まれるだけで、私への態度も一変するコーザ。


「へ、ヘルミナさまが、【白銀の翼】に孤児を迎え入れたいと 希望されたもんで、それならとオレが、ここに連れて来た いや、来ました」

「なんてことを」

「ぐあ 何しやがんだ」


 掴んでいたコーザを投げ捨てると、その勢いのまま尻もちをついたコーザが、私に文句をいう。そんなの知ったこっちゃない。私は、孤児院のマザーのいる執務室へ走っていった。


「どうやら、テメエは、マローで冒険者を続けていく意思は無えようだなあ」

「ひっ オレは、ランクアップして、【白銀の翼】に移籍させてくれると ヘルミナさまが声をかけてくれたので」

「フン 好きにすりゃあいい ただ、マローにはもう席がないと思っとけ」

「そ、そんなぁ」


 呆然とするコーザを見下ろし、アリオスも私を追って孤児院へと入っていった。


「おうおうおう 娘っこ こっちだ こっち」

「イッチ!」


 走る私の前に、イッチが姿を現す。一旦足を止めた私は、イッチから状況を確認する。


「ヘルミナが、来てるって聞いたけど?」

「おうおう、勝手に孤児院に入ってきて、マザーに挨拶もせず 子どもたちを物色し始めたんだぜ」

「それで、子どもたちは?」

「おうおう 無事っちゃ無事だな だけど、ジュジュとリズが案の定目をつけられちったなあ」

「練習の様子でも見られたか?」


 アリオスの質問にイッチが、コクンと頷いた。だめだ、【白銀の翼】に二人は、行かせられない。


「待て 嬢ちゃん」

「待てない!」


 アリオスの静止を無視して、私はマザーの執務室の前に立つ。


「なんでですの 私の申し出を断るなんて おかしいんじゃないの!」


 ヘルミナの大きな声が、扉の外まで聞こえてきた。迷っている場合じゃない、私は勢いよく扉を開けた。


「マザー!」

「ああ、よく来たね 話が終わったところで、お客さまがちょうどお帰りになるところだよ」

「あなた 失礼ですわ まだ、話は終わってませんわよ!」


 ソファーに座るマザーの後ろで、リズを守るようにジュジュが庇い立っている。リズも不安そうな表情で、ジュジュにしがみついている。マザーの対面のソファーにヘルミナが座り、背後にお供の二人が立っている。そのうちの一人が、私を見て大きく瞳を開いた。


「あら、あなたはギルドでもいた冒険者ですわね 私、まだ、この管理者と取引が終わってませんの 席を外していただけます?」

「マザーは、終わったと言った 帰るのはヘルミナ、あなただよ」

「あなた如きに 私の名を呼ぶ権利は差し上げてませんわ 出て行きなさい」


 ヘルミナが睨みつけるが、私は引く気は全くない。リズが、私の顔を不安そうに見ているが、大丈夫だと頷いてみせる。


「もう一度言うわ そこの少年と少女を【白銀の翼】で引き取るって言ってるのですわ もちろんただではございません 500万ダリルでいかがと思うのですわ」


 ヘルミナが、お供に顎をしゃくり指示を出す。お供の一人が前に出て、テーブルの上に札束をドン、ドドンと積み上げた。リズが、ぎゅっと瞳を閉じて、ジュジュの腰に巻き付くように抱きつく。


「さあ、この孤児院にとっても悪い取引ではないでしょう? お返事を聞かせてくれるかしら?」


 ヘルミナは、右手で綺麗に縦巻きに巻かれた後ろ髪を首元で掬って後ろに流し、マザーに返事を求めた。

お読みいただき、ありがとうございます。

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