63 洗濯機とアイスと私
いつものように孤児院の庭先で、リズとジュジュの魔力制御の特訓をしていると、孤児院の中から両腕を伸ばし、ストレッチをしながらバートが出てきた。
「おお、いたいた ちょうど声をかけようと思ってたんだ」
「バート、お疲れ様」
「で、アリオスさんは、何やってんだ?」
私の隣にバートが、腰を下ろす。リズやジュジュたちと混ざって、一緒に魔力制御の練習をしているアリオスを見て、不思議そうに首を傾げる。
「魔力制御の基本訓練を一緒にやりたいんだって」
「SSSランクの冒険者なのに?」
「そう、相変わらず脳筋だから、訓練とか特訓とか大好きなんだよ 要するに、暇なんだよ」
五歳児のリズと張り合って、魔法陣に嬉々として魔力を流すアリオスは、SSSランクとは、程遠い姿だ。
「それで、バートはどうなの?」
「そうだそうだ、マジックアイテムの調整がしたくて、呼びに来たんだった」
「出来た? 出来たの?」
「フン 俺を誰だと思ってんだよ」
フフンと胸を張って、鼻を鳴らすバート。彼には、リズの魔力暴走を抑えるためのマジックアイテム作成を頼んでいる。既に、最終調整の段階までできたからと、私たちを呼びに来たらしい。
「師匠! リズちゃん! バートがマジックアイテムの調整がしたいんだって」
「んお? じゃあ、ちょいと休憩だな」
「おやつ?」
「それもある!」
ワイワイ、ガヤガヤと楽しく訓練をしているからだろうか、リズもあまり疲れた様子は見せてない。アリオスのおかげなのか、ジュジュは、集中して訓練ができている。休憩と聞いて、ジュジュが肩を回しながら、身体を伸ばす。彼の魔法陣の前に置かれたコップには、ほんの少し水が溜まっていた。さすが、マザーの孫だけあり、潜在能力は、高かったらしい。休憩がてら、私たちはバートに連れられて、孤児院の中に入っていく。
なんだか、子どもたちが、興奮しながら走り回っている。マザーも少し困ったように眉毛を下げて笑っていた。
「おうおうおう やってきたか 野郎ども」
「イッチも いっぱい手伝ってくれたんだってね ありがとう」
「おうおうおう よせやい オイラは、バートの相棒だぜ 舐めてもらっちゃあ困るぜ」
イッチの手のサイズに合ったスパナを持って、くるくると回しながら、嬉しそうに悪態を吐く。精霊ノームは、どうやら照れ屋さんの集まりらしい。
「なんだか、めちゃくちゃ明るくなってない?」
「おうおう よくぞ気づいた さすがだ」
いや、イヤでも気づくって。天井や壁面に照明がずらっと設置されてるじゃん。全部の照明が点灯されてるし。
「へへん それだけじゃないぜ オイラに着いて来るがいい」
「バート?」
「まあまあ、見てのお楽しみ」
まず最初に案内されたのは、風呂場だ。脱衣所には、子どもが一人入れそうな大きな箱が置いてあった。
「おうおう 驚くなよ コイツは、洗濯機っていう主婦が泣いて喜ぶ代物だぜ」
「洗濯機?」
「そうだぜ! 汚れた服を大量に自動で洗うことが出来る!」
ん!?リズの魔力暴走対策のマジックアイテムを作ってたんじゃないの?何故に洗濯機?私だけでなく、アリオスも何とも言えない表情をしているので、私の疑問は、不思議じゃないはず。イッチが嬉しそうに、その洗濯機が、いかに優れた代物であるか、熱く語る。
「おお!嬉しいなぁ 子どもたちは、すぐ泥んこになるから、洗濯大変だったんだよなぁ」
ジュジュは、両手をパチンと合わせて、洗濯機たる物に大喜び。マザーは、苦い表情をしているが、何も言わない。そこに、ブオンと音を立てて、足元を動く機械が、私たちの横を通り過ぎた。
「何? 箱が、勝手に動き回ってる」
「おっと、ソイツも主婦が泣いて喜ぶ一品だ 勝手に動き回って、部屋中の埃を吸い取ってくれる掃除機だ」
「いやあ、これだけ子どもが多いと掃除も大変だろうと思ってな、作ってみた」
何だろう。便利は便利だろうけど、私が思っていた方向性と違う。便利アイテム紹介されているが、リズに結びつかない。マザーの微妙な表情の理由がなんだかわかった気がする。
「おお!これもスゴイなぁ 掃除も一苦労だから、助かるなぁ」
うん、ジュジュは、間違いなく喜んでるね。
次に連れて行かれた先は、台所。なんだか、大きな三段式の扉が付いた大きな箱がある。子どもたちが、扉を開けたり閉めたりしているが、大丈夫なのだろうか?
「あ!アルちゃん アリオスさん この箱スゴイよ 中が冷んやりするよ!」
「こら、そんなに扉を開けたり閉めたり繰り返したら、中のアイスクリームが溶けちまうぞ」
「ごめーん バート兄ちゃん」
アイスクリーム?夏の定番スイーツの代表格のアイスクリームですと?スイーツ好きの私としては、聞き捨てならない情報じゃないか。
「バート?」
「ん?これ? 冷凍冷蔵庫だけど?」
「いや、アイスクリームって?」
「食べる?」
「……食べます」
説明されるより、アイスクリームを選んだ私。おやつタイムだもんね。先に食べても良いよね。
「リズちゃんもアイスクリーム、食べたいよね」
「うん 食べたい」
アイスクリームを器に装い、食堂に持っていき、テーブルに座る。甘い!冷たい!バニラアイス、最高です。
「バート兄ちゃん アイスクリーム美味しい」
「スゴイなぁ アイスクリームが溶けないなんて」
ジュジュとリズは、喜んでるね。でも、そろそろ突っ込んでも良いかな?
「バート リズちゃんの魔力制御のアイテムは、どこ?」




