62 魔法陣と四属性と私
ジュジュとリズの魔力制御特訓を始めて数日経ち、二人とも体内の魔力を循環させることは、できるようになった。最初は、私の補助の元、循環させていたが、補助をやめ、瞑想しながら身体中に魔力を行き渡せる。
手、足、指先、爪先、自分の身体の部位に隙間なく魔力を流していく。二人の魔力の流れをみると、ジュジュは、薄く均等に魔力を流すことができるが、リズは、大きな魔力の塊が手や足を覆っている感じで、均等に魔力を巡らせるのが苦手なようだ。
「ジュジュもリズも、上手に魔力が動かせるようになったね」
「えへへ」
「一緒に頑張ったもんなぁ」
嬉しそうに笑うリズの頭をジュジュが優しく撫でる。ダメなことを、出来てないことを指摘するよりも、出来たことを褒めてあげる。ジェシカから、私が教わったことの一つだ。
「これからも 毎日魔力を動かす練習は、続けていこうね」
「はーい」
ジュジュもリズも魔力を動かせるようになったため、第二段階に進む頃合いだね。
「じゃあ、今日から新しい練習を始めるよ ジャジャーン」
取り出して見せたのは、四枚の魔法陣を描いた紙だ。
本来なら、魔術を覚えるのには魔導書を読み込むのが一番だ。マザーに魔導書があるか尋ねたところ、元々剣士のマザーは、魔導書なんて持っていなかった。アリオスにも聞いてみたが、やはり持っていないらしい。バートは、錬金術の専門書しか持っていなかった。
「嬢ちゃん 一応、魔術師じゃねえか」
「全て独学の魔術だから そんなの持ってない」
基本を教えるのに教科書がない。しかもリズは、言霊使いだ。そんなレアな教科書なんて、近場の雑貨屋にあるわけない。
「四属性の基礎魔術を教えたいんだけどなぁ」
「火、水、風、土の四属性か?」
「そうそう さすが師匠 物知りだね」
「それくらい知っとるわ」
ぽこんと頭を小突かれる。こういう時、相談できる相手がいるのは嬉しい。
「あー 魔法陣を補助に使うってのはどうだ?」
「バート すごい それ採用!」
魔導書がなければ、作ればいい。錬金術師ならではの発想に頭が下がる。照れた様子で頬を指先で掻きながら、バートは笑っていた。
「お姉ちゃん その紙なぁに?」
「おほん この紙は、魔術の四属性の火、水、風、土の基礎魔術の魔法陣です」
魔法陣は、全て私の手書きだ。魔法陣に満遍なく魔力を流すとそれぞれの基礎となる魔術が発動するように、魔法陣を描いた。バートから貰い受けた微妙なロウソクを一本取り出し、火属性の魔法陣の前に置いた。
「まずは、お手本ね」
私は魔法陣の両脇に右手と左手の手のひらを置いた。二人が見守る中、魔力を魔法陣に流していく。魔力を受け取った魔法陣が、徐々に光出す。魔法陣が全て光ったところで呪文を唱えた。
「ファイヤー」
微妙なロウソクに火が灯る。このロウソクは、緑だね。
「うわぁ、不思議な色」
「普通のロウソクじゃないんだなぁ」
ジュジュとリズが、不思議そうに微妙なロウソクに注目した。
「二人とも 見て欲しいのは、ロウソクの炎の色じゃないよ 魔法陣に魔力を流すところだよ」
「あ!」
「不思議なロウソクがぁ 気になっちゃったぁ」
水属性の魔法陣の前には、コップを置いた。風属性の魔法陣の前には、旗を立てる。そして、土属性の魔法陣の前には、土を入れた植木鉢を置く。
「ファイヤー ウォーター ウインド アース それぞれの基本魔術の呪文だよ」
お手本がてら、二人の前で四属性の魔術を展開して見せていく。コップに水が入り、旗が風ではためき、植木鉢の土がもっこりと盛り上がる。
「おお!」
「お姉ちゃん スゴーイ」
「これを二人にやってもらいます」
ジュジュとリズが、お互い見合って、うんうんと頷き合う。話し合いの結果、ジュジュが水属性、リズが風属性からチャレンジするようだ。
「魔法陣を光らすんだよ」
「ぬぅ」
「ほう」
二人は、おかしなかけ声を出しながら魔法陣に向き合い、魔力を流す。
「手のひらから、魔力を押し出すように放出してみて」
悪戦苦闘する二人。身体の中で魔力は動かせても、魔力の放出は、勝手が違うようだ。とにかく練習あるのみ。頑張れ、頑張れと応援する。
「できた!」
声の聞こえる方を向くと、暇だったアリオスが火の魔法陣を使って、密かに魔力操作の練習に参加していたらしい。私の顔を見て、ドヤ顔をしながら、ロウソクに火を灯していた。
「師匠? 基本魔術使えたでしょ 何一緒にやってるんですか」
「いや、俺も基礎を鍛えようかなと」
嬉しそうな顔をして答えられても。あなた剣士でしょ。今から、魔法剣士にジョブチェンジですか?とりあえず、ふうっと息を吹きかけてロウソクを消してやった。
「ああ! 嬢ちゃん ひでえな せっかくできたのに」
そう言って、アリオスは、再び魔法陣に魔術を流し始める。気がつけば、何故か、生徒が、二人から三人になってしまった。
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