60 リズとジュジュの決意と私
本日は、チーム白雪が全員揃ってマザーの管理する孤児院にお出かけだ。バートにリズについて事情を話すと、錬金術師として腕がなると魔力供給ができるマジックアイテムを幾つか作成してくれた。
「俺は、センスが無いわけじゃない 元から実用性のあるアイテムを作るのは得意なんだよ」
「おうおうおう オイラの主だぜ、素敵な魔筒なんて最高のアイテムじゃんか」
「イッチ それ元々微妙なセンスの変な筒だったんだよ」
バートの肩にちょこんと座っているノームのイッチが、残念な援護射撃をするもんだから、皆で笑ってしまった。
「お姉ちゃーん」
「リズちゃん おはよう」
孤児院の前で、ジュジュと並んで両手をぶんぶんと振るリズに、私が手を振って答える。待ち切れないとばかりに、リズは私に向かって走ってきた。どーんと勢いよく飛び込んでくるリズを両手で抱きしめる。うん、魔力の循環も悪くなさそうだ。
「すっかり、懐かれたな おはよう リズ」
「アリオスおじちゃん おはよう」
「おじ……まあいい」
五歳児に張り合っても仕方ないと、アリオスはリズの頭をぽんっと撫でる。横でおじちゃん呼びを聞いたバートは、顔を背けて肩を震わせているから、笑っているのはバレバレだ。
「リズちゃん はじめまして 俺はバート アルの仲間だ」
「う? お姉ちゃんのお友だち?」
「そうだな 仲間だから友だちだ よろしくな」
「うん バートさん よろしくね」
バートは、お兄ちゃんでもおじちゃんでもなかった。エプロン姿のジュジュは、今日も朗らかな笑顔で私たちを迎え入れてくれる。
「いらっしゃい 待ってたよぉ」
ジュジュの案内で、私たちはマザーの待つ執務室へと向かった。
「おや ガル 大きくなったね そっちのフクロウは、アルの従魔かい?」
『わふっ』
『ホッホー』
「はい、アーくんです」
さすがアーくん 強者がわかるのだろう ぺこりと頭を下げる。「ただのフクロウじゃないね」とマザーも呟くが、それ以上の追及はしないでくれるから助かる。
「さて、お前さんが噂の錬金術師かい?」
「はじめまして バートと呼んでください」
「おうおうおう オイラはイッチだ バートの相棒だぜ」
「おやおや 土竜の子かい? こりゃすごいね」
すごいと言われて嬉しそうに胸を張るイッチ。最近は、工房でバートのマジックアイテムの作製の手伝いもしているんだと誇らしげに言った。
「リズちゃん、この間はゴメンね 思いっきりくすぐっちゃった」
「アタシ、あんなに笑ったのはじめて アレから、変なこと起こらないんだよ」
思いっきり魔力を発散させた効果だろう。だけど、一時的に発散されただけでリズの魔力は増え続ける。
「リズちゃん ナイショにしててもわかっちゃうから、正直にいうね 今は、スッキリしてるかもしれないけど、リズちゃんの魔力は、これからも増え続けるの」
少し不安そうな顔をして、リズが私を見上げる。
「また、マザーを傷つけちゃう?」
「何もしなければ、傷つけちゃうかもしれない」
「私は、別に構わないんだけどね」
リズは、頭を左右に振る。そうだよね、もう誰も傷つけたくないよね。自分の制御できない力が、怖いだけだもんね。
「だから、私たちはここに来たの リズちゃん もう、一人で我慢しなくても良いんだよ」
「アタシがマザーを傷つけないように?」
「マザーだけじゃないよ ジュジュも、ここに暮らす他の子どもたちも傷つけたりしないようにできるよ」
リズが、私だけでなく、マザー、ジュジュ、アリオス、バートと一人一人の顔を見ていく。リズと目を合わせれば、全員が全員力強く頷いてみせる。
「アタシ、出来る?」
「お姉ちゃんと一緒に魔力の制御の練習する?」
「………する! お姉ちゃんが、教えてくれるなら、練習する!」
一番大事なのは、本人の覚悟だ。まだ、五歳のリズに自覚させることが一番大事だ。本来なら、他の子どもたちのように、のびのび遊んでいたい年頃だ。だけど、それでは、魔力の制御は儘ならない。本人が、意思をもって制御する必要がある。
「はい、僕もぉ リズと一緒に練習に参加してもぉ いいかなぁ」
おずおずと右手を上げて、ジュジュが発言する。のんびりとした話し方だけど、ジュジュの瞳には強い意思が表れている。腕を組んだままのマザーが、ジュジュに問いかけた。
「どうしてだい? 今まで、剣術も魔術も興味なかったじゃないか」
「うん、僕、お兄ちゃんだから、みんなのお兄ちゃんをやってれば良いって思ってた」
「ジュジュは、しっかりとお兄ちゃんをやってるよ」
魔力の暴走に苦しんでるリズのことも、優しく見守って、気遣ってあげていた。リズだけじゃなく、他の子どもたちにも良いお兄ちゃんをしていた。
「僕ね 最近、魔力を自分の中で感じるんだぁ」
15歳のジュジュは、これから成長期を迎える。もっと身体も大きくなって、身長も伸びていくだろう。大人になっていくにつれ、自分自身の将来についても考え始めたらしい。
「マザーは、僕の好きにしたらいいって、いつも言ってたね」
「そうさね ジュジュのやりたいことをやればいい」
「僕の夢は、ヒーラーになること この場所で、これからもずっと みんなのお医者さんになりたいんだぁ」
ただ、見守るだけのお兄ちゃんじゃなく、マザーや子どもたちを支えて、さらにマローの住人たちも往診したい。ジュジュが、ゆっくりと将来の夢を語った。
「ハハッ デカい夢だ さすがマザーの孫だな」
アリオスが、ジュジュの頭をぽんと撫でる。えへへとジュジュが笑顔をみせた。
「私より、遥かにしっかりしてるよ!」
お姉ちゃん丸潰れだと思います。
「リズ、だから僕と一緒に練習しよ?」
「うん! ジュジュと一緒に練習する!」
アリオスが、ニヤリとしながら「頼むぜ、先生」と私に声をかけた。
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