59 言霊と爆笑と私
言霊。それは、言葉に魔力を宿す能力のことだ。本来魔術は、呪文を介して発動出来るものだけど、言霊の場合は、呪文関係なく魔術が発動することができる。まだ幼いリズは、魔力の制御ができない。だから、感情が昂るだけで、魔術が発動し異常な現象が巻き起こる。
「あの嵐もそうなのか?」
「うん、マザーを傷つけたくない だから離れてって それが風を呼び突風を起こした」
だから、リズは一人暗い閉め切った部屋の中、誰にも近づかせないようにシーツに包まって引き篭もっていた。自分の意思と関係なく、誰かを傷つけてしまうのが怖くて仕方がなかったから。
「魔力が発散された今は、落ち着いているけど、魔力制御を覚える必要があるよ」
「魔力の制御か?」
「うん リズちゃんちょっといいかな?」
きょとんとするリズに、うりゃあと抱きついた私は、脇腹を思いっきりくすぐった。キャッキャと喜び手足をバタつかせるリズ。私はそれでも容赦せず、脇腹をくすり続ける。リズが、涙目になってきたところで、周りの反応が変わってくる。
「うおっ ぐふふふふ」
リズの隣りに座っていたジュジュが、悶えはじめる。身体を捩り、捻り、顔を真っ赤にさせる。
「なんだ? どうしたんだ?」
まだ、アリオスには届かないか。
「リズちゃん もうちょっと頑張ってね」
「ギャハハハハハハハハハ」
リズをさらに追い詰めるように、擽ぐる両手に強弱をつけつつリズの弱点を探していく。ビクンと身リズの身体が跳ね上がる。弱いのは、ここか!
「おりゃあああ」
「フン ガキめ……… グフッ」
私の行動を鼻で笑うアリオスだったが、突如、両腕で身体を抱きしめるように小さくなって、俯いた。今、グフッて言ったよね、確かに言ったよね。
「ア、……アル わ、わかった……ぐっ た、……たのむ」
身体を抑え込むように小刻みに震えるアリオスが、顔を真っ赤にしながら私を睨みつける。千切れそうになるほどほっぺを抓られた恨み、ここで晴らすべく私はリズを攻め立てた。
「お、お姉ちゃん もう、ムリ」
コテンと力尽きたリズ。私の腕の中で静かになってしまった。
「あ!」
「ふぅ ふぅ 覚悟はいいか?」
「師匠? ちょっとしたイタズラですよ?」
「知らん!」
因果応報。策士、策に溺れる。全くもって、先人のお言葉は、身に沁みる。本当に泣くまでするなんて、大人気ないったりゃありゃしない。
「アリオス、弟子ち戯れるのも大概にしな」
呆れ顔のマザーが、アリオスを嗜めてくれなければ、この生き地獄は、永遠に続いてたよ。一通り攻めて満足した師匠は、私の上から退いてくれる。足の裏って、こんなに擽ったかったとは。
いろいろなことがありすぎて、疲れ果て気を失うように眠りについたリズ。ジュジュが優しく抱き上げ、ベッドに寝かせると言って部屋を出ていった。
「言霊使いか ヤバイな」
身を持って体験したからこそわかるとアリオスが言う。マザーもアリオスの言葉に頷き、組んだ足を組み替えながら、顎を摩る。
「魔力を制御できるようになる必要があるね」
「取り敢えず、魔力過多にならないように魔力を放出できる方法が有れば、良いんじゃないかな?」
今日は、いっぱい魔力を発散することができたリズ。暫くは、身体の調子も戻り、他の子どもたちと一緒に過ごせるようになるだろう。だけど、魔力は増え続ける。
「うちに、魔力を注ぐ必要のあるマジックアイテムが有ればいいけどねえ そんな高価な物なんて置いてないんだよ」
「マジックアイテム それだ!」
「師匠、バート バートがいるよ」
私とアリオスが、パチンとハイタッチを交わす。私たちには、錬金術師のバートがいる。センスはないが、腕は立つ。収穫祭では、そのセンスの無さも払拭できた。
「マザー 俺、チームを組んだんだけどさ もう一人、押しかけてきた弟子と嬢ちゃんと俺の三人で、白雪っていうんだけど そのもう一人が、錬金術師なんだわ」
「センスはないけど技術力は、お墨付きだよ」
「へえ、アリオスが、仲間を集めたのかい」
チームアップの話に少し嬉しそうなマザーの顔。そういえば、アリオスは、ずっと一人だったとジェシカもエルビスも言っていた。過去をあまり語らないアリオスを知る人が、ここにもいた。
「師匠を心配してくれる人もいっぱいいるね」
「生意気だ!」
ごつんとゲンコツを落とされた。そっぽを向くアリオスの耳が、ほんのり赤くなっていた。
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