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元Sランク冒険者は、新人!?冒険者として、お一人様を満喫したいそうです  作者: 枝豆子


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51 ギルドとヘルミナと私

 収穫祭も無事終わり、マローの街にも普段と変わらない日常が戻ってきた。私は、今日も今日とてジェシカの元へ通う。


 ギルドの受付で、ジェシカへの取次を頼んでいると、背後から聞きたくもない金切り声が聞こえてくる。


「どうしてですの?私が、誘っているにも関わらず、【白銀の翼】への異動を拒否するなんて、正気の沙汰とは、思えませんわ」


 毎度、毎度、冒険者たちに【白銀の翼】への勧誘を行なっては、けんもほろろに断られているのは、【白銀の翼】に所属しているSランク冒険者のヘルミナだ。早く、諦めてゼブディアに帰ればいいのにと思っている。因みに誘うのは、全て男性冒険者らしく、性別的に私は対象外なので、ほっとしている。


「アルさん、ギルドマスターもお呼びですので、このままギルドマスターの執務室までお願いします」

「はい、わかりました」


 念のため、ローブのフードを目深に冠り、騒ぐヘルミナの横を通り過ぎる。身体のラインから、女と判定されているためか、私には、やはり声がかからない。


「おう、アルちゃん来たな すまんな、面倒なのがいただろう」


 相変わらず、ギルドマスターのエルビスは、筋肉モリモリだ。私が、【白銀の翼】を避ける理由を知っているため、ヘルミナの在中に詫びを入れてきた。


「ギルマスのせいじゃないことは、わかってるよ」

「あの女、マローの冒険者を【白銀の翼】によこせと言いに来たんだ」

「引き抜き?」

「引き抜きならまだ可愛い 本人たちの意思を無視した異動だとよ」


 馬鹿馬鹿しいとソファーにどかりと音を立てて座った。ジェシカもトレイにドリンクを乗せ、私とエルビスの前に置くと、ゆっくりと私の隣に座った。


「依頼の失敗が続いて、スポンサー離れが加速してるらしい 手っ取り早くランクの高い冒険者を集めたいんだろうよ」

「あんなんじゃ、集まるものも集まらないと思うけど?」

「エルビスも欲しけりゃ自分で交渉しな 俺は手を出さんなんて言うから 躍起になってんじゃないかしら?」


 そんなこと言ったんだ。ヘルミナって、プライドだけは、高そうだもんね。早く、諦めて帰ってくれないかなあ。


「関わりたくねえだろうけど、とりあえず事情は伝えとこうと思って、執務室に来てもらったわけだ」

「ごめんなさいね 彼女が帰るまでは、お腹に蓄えている高ランクの魔物の買い取りを停止させてもらうから」


 魔物の買い取り停止なんて、気にしなくてもいいはずなのに、わざわざ声をかけてくれる。最初の宣言通り、私を守ろうとしてくれる優しさが堪らなく嬉しい。


「ギルマス、ジェシカさん 気にかけてくれて、ありがとう 私、マローに居ても良い?」

「何言ってんの! 当たり前じゃない 黙ってここから去ったりしたら、それこそ説教しちゃうわよ」

「アルちゃん そうだぞ くれぐれも馬鹿な考えは起こすな 俺たちだけじゃなく、アリオスだって、お前さんを家族同然に思ってるはずだ」

「か、家族同然!?」


 孤児の私にとって、家族なんてものいたことがない。物心ついた時は、【白銀の翼】の奴隷として買い取られ、いつ死のうが構わないとダンジョンや魔物の巣窟に放り込まれていた。ただ、死ぬことが怖くて、必死に抗って生きてきた。


 ジェシカの細い腕が、私に絡みつく。そして、そのまま優しく私を引き寄せ、柔らかい胸に抱かれた。真綿で包み込まれたように、私を優しく包み込んでくれる。今の私の居場所を作ってくれたのは、間違いなく、エルビスとジェシカだ。


「ちなみに奴らとは、面識はあるのか?」


 私は、ふるふると首を横に振る。アルデリアとして過ごしてきて、Sランクとして冒険者登録をしていたが、唯々ひたすらに魔物を狩っていただけだ。


「ゴーツクンに娘が、いたことも知らなかった 私は、ただの所有物として扱われてただけだったから」

「なら、奴らは、アルデリアを知ってる可能性は、無きにしも非ずってとこか 嫌なこと思い出させて悪かったな」


 エルビスが、よしっと膝を叩いてソファーから立ち上がる。同時にけたたましく叩かれる執務室の扉。慌てて、私もソファーから立ち上がった。


「アルちゃん、これ付けてみよっか」


 ニッコリと微笑みながら渡されたのは、顔半分が隠れるアイマスクだ。渡されたアイマスクを装着するとジェシカがローブのフードも冠るようにと言った。いまだ鳴り止まないドンドンと叩かれる扉の音の主が、誰だかわかった。


「うるさい!聞こえている」

「いつまで待たすのですわ! これだから田舎者は嫌いですわ」


 蹴破りそうな勢いで扉を開け、執務室に入ってきたヘルミナとそのお供たち。アイマスク越しにお供の顔を見たが、やはり記憶には残っていない。


「おう、もう行っていいぞ」


 エルビスもジェシカも私の名前は、呼ばなかった。フードをさらに深く冠り、一礼をして私は、ヘルミナの側を通り過ぎる。私と入れ違いに執務室へ入っていくヘルミナは、興味がないのだろう、私には見向きもしなかった。後ろ手でバタンと扉を閉め、私は大きく息を吐いた。


 



 

モチベーションにつながりますので、

楽しんで頂けた方、続きが気になる方おられましたら、

評価、ブックマーク、感想、宜しくお願いします!


次回予告 レッドボアと悪魔と私

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