50 白銀の翼と白雪と私
品評会の参加者たちによる、マジックアイテムのお披露目は、全て終わった。司会者と共に舞台上に参加者が揃う。会場中から惜しみない拍手が、参加者へ贈られる。
「グスタフ爺さんの演出する若いカップルのプロポーズから始まり、最後は夜空に大輪の花が咲き誇りました そして、ヘルミナ嬢は、ダンスで会場を沸かせてくれて、ありがとうございます」
司会者からお礼を述べられ、嬉しそうに胸を張るヘルミナ。もっと賞賛して欲しいのだろうが、司会者は、正面を向いた。ヘルミナは、少し不服そうな表情になった。
「今年の品評会もとても素晴らしかった 本当に名残り惜しいのですが、結果発表とまいります」
司会者はゆっくりと歩き、まずは、グスタフの前に立った。
「若いカップルの新たな門出を、私たちも笑顔と共に祝うことが出来ました 素晴らしい瞬間に立ち会うことができ、喜ばしい限りです」
司会者とグスタフが、固く握手を交わす。そして、その足で司会者は、トニーの前に立った。
「娯楽の少ないこの世界 トニーは、音楽と木偶人形の踊りを融合させ、類い稀なる技術力の高さを笑いと共に私たちに示しました 会場中が、笑顔で溢れました」
次に向かうは、レイラかと思いきや、バートの前をも通り過ぎて、ヘルミナの前に立った。
「特別参加ということもあり、緊張もなさったでしょう 可愛らしいダンスをありがとう」
「あら、もっと褒めていただいても良いですわよ」
司会者は、ニッコリと微笑みヘルミナの前を去る。そして、バートの前を通り過ぎて、レイラの前に立った。
「レイラさん 私たちを見たこともない世界の旅へ招待していただきありがとうございます ここに集った観客全て、忘れられない、一生に残る想い出が刻まれました」
司会者が、一人一人の所感を述べながら、参加者を労っていく。最後に残されたバートの前に立った。バンと大きな音を立てて、司会者がバートの背中を叩いた。
「おめでとう!今年の優勝は、バート、君だ」
参加者一人を除いて惜しみない拍手が贈られる。信じられないと言った顔をしているのは、ヘルミナだ。あれで、優勝できると思っていたのだろうか?
「君の作品は、私たち観客だけでなく、マロー全体、いや近隣の地域一帯を巻き込んで笑顔にしたよ 本当に素晴らしい作品だった」
「ありがとうございます 皆が俺を支えてくれたから、この栄誉をいただくことができました」
大きく拳を上げ、吼えるバートに盛大な拍手と声援が湧き上がる。そして、さも当然のようにバートの前に立ったのは、ヘルミナだ。
「まあ、私の元に来るのなら、優勝ぐらいはしていただかないといけませんものね」
なんという高飛車な発言に、お祝いムードがぶち壊しだ。
「バートが、どう返すか見ものだな」
面白がっているのは、アリオスだ。私としては、【白銀の翼】とあまり関わりを持って欲しくないんだけどね。
「せっかくだけど、俺、浮気はしない主義なんで」
「言ってる意味がわからないですわ」
「アンタのとこには、死んでも行かねえ これで理解できるか?」
「んま!」
みるみる顔が赤く染まっていくヘルミナ。両手をきつく握り、肩を震わせている。
「よ!バート よく言った」
「お前は、マローの錬金術師だ」
会場からもバートに声援が上がる。その声援に両手を上げて、バートが答える。
「俺は、マローを愛してるからな」
「最高だ!」
司会者も他の参加者も惜しみない拍手を贈る。ごめんね、ヘルミナ。バートは、あげないよ。
「バート!やったね おめでとう」
私たちは、舞台から降りてきて真っ直ぐに私たちの元にやって来たバートとハイタッチを交わす。
「応援ありがとうな 全て、アリオスさんやアル、イッチたちと出会えなければ、ここまでの結果は出せなかったよ あー、やっと一つ夢が叶った」
「とりあえず、白雪の席が無くならなくてよかったんじゃね?」
アリオスも相変わらずな悪態を吐くが、仲間の優勝は嬉しいらしく、バートとグータッチを交わしていた。
「ちょっと、待つのですわ 私との話は、終わってませんことよ」
ヒステリックに金切り声を上げて、バートを追って舞台から降りてきたのは、ヘルミナだ。公衆の面前で、ハッキリと断られたのにも関わらず、諦めていないのだろうか?万が一を考え、私はローブのフードを目深に冠る。
「アンタも頭が悪いな 俺は、このチーム白雪が、大事なの いい加減解れよ」
バートは、アリオスと私の肩を組んで、キーキー言っているヘルミナにハッキリと断る。
「アナタ、舞台では、私の手を取りましたわよ あれこそ交渉成立の意味ではなくって?」
「ハンッ 気持ち悪いこと言うな 品評会を台無しにされたくなかったんで、無難に握手をしたまでだ」
「私への無礼を今なら許してあげますわ 何ならアナタのお仲間全員をお父様に言って【白銀の翼】へ所属することも許してあげますわ」
「冗談じゃない!…っあ」
思わず声が出て、慌てて両手で口を抑えた。せっかく【白銀の翼】から逃げ出したのに、何でまた【白銀の翼】に戻らなくてはならないんだ。戦慄の走る悍ましい提案に対して、反射的に言葉が出てしまった。
「なあ、お嬢さんよ 俺たちは、マローの冒険者であること、白雪の一員である事に誇りを持ってんだ 今更【白銀の翼】のギルドに興味はねえんだ さっさと親父の元に帰んな」
アリオスが、私の頭を優しくぽんぽんと撫でて、私の拒絶を和らげてくれる。悔しそうに唇を噛んで、身体を震わせるヘルミナを置き去りにして、私たちは会場を後にした。
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次回予告 ギルドとヘルミナと私




