39 ポーションと変な筒とカップケーキ
ダンジョンは、生きている。冒険者たちが、そんなことを話しているのを聞いたことがある。ダンジョン自体が魔物とでも言うのだろうか?そんなわけないだろうと聞き流していた。
「ダンジョンってのは、生きていると考えろ」
SSSランクであるアリオスが、そう私に言った。そんな迷いごとをアリオスが信じていることに、驚きを隠せないでいるとバートまでもが、うんうんと首を縦に振りながらアリオスを行程する。
「潜るたびに、トラップは新設されるし、魔素だまりからは、魔物が生まれるし、前はなかった場所に宝箱が出現したりするからな」
「ダンジョンってのは、精霊の棲家っていう説もある だからかな、ダンジョンの階層の奥には祭壇が設置されているんだ」
アリオスが、長い指先で示す方向に視線を送ると、こじんまりした祭壇があった。
「人が設置したのか、元からあったのかわかんねえけど、祭壇があるってことは、何かを祀っているってことだろ?」
そう言ってアリオスは、自分の鞄からポーションを一つ取り出すと祭壇に供えた。
「お供えってのは、何でも良いんっすかね?」
「構わないんじゃねえか?俺も干し肉だったり、使い古した短剣を供えたりしてるからな」
「師匠、それってゴミをお供えしてるんじゃ」
「失礼なこと言うな!れっきとしたお供えもんだ」
アリオスにジロッと睨まれ、視線を逸らす。自分で言ったんじゃん、使い古した短剣って。干し肉だって、絶対余りもんだよね。私たちのやり取りを見ていたバートも、「よし」っと呟くと鞄から取り出した物をアリオスに倣い、祭壇にお供えをした。
「それ、バートの作った変な筒」
「変な筒っていうな 錬金術で作成したマジックアイテムだぞ」
ゴミじゃないかもしれないけど、お供え物としては、微妙じゃない?アリオスもバートもお供えをしたわけで、私だけが何もお供えをしないのもおかしな話だ。アイテムボックスに片手を突っ込み何か手頃な物を漁ってみる。アリオスの視線は、変な物を出すんじゃねえぞと訴えているのがわかった。サイクロプスとか魔物は出しませんよ。
「じゃーん アーくんお手製のカップケーキでどうでしょう?」
「お、美味そうだな……ってアーくんお手製?」
「そうだよ アーくんお手製 アーくんってお料理、何でも出来るんだよ」
「そっか、フクロウじゃなくて、本体はアークデーモンだったか」
『ホッホー』
私の肩で、胸を張ってアーくんが、良い顔をしている。バートには、ただのフクロウじゃないことは、バレているので問題ない。
『わふっ』
『ホッホッホー』
毛むくじゃらが、ひと吠えすると、アーくんが私の肩から毛むくじゃらの側に降り立った。何やら、従魔同士で相談ごとがあるらしく、『わふわふ』『ホーホー』と言葉を交わし始めた。この二人は、意外と仲が良く、このように会話を交わしていることがある。
「なんだ?ガル」
会話を終えた毛むくじゃらが、アリオスの元に行き、アリオスの鞄に鼻先を突っ込み始めた。アーくんが、一足先にバサリと翼を羽ばたかせ、祭壇に降り立つ。毛むくじゃらが、アーくんの後を追うように祭壇の前で並んだ。
アーくんは、嘴で翼の内側を弄り、隠し持っていただろう魔石を取り出してポトリと祭壇に落とした。続いて毛むくじゃらもアリオスの鞄から取り出した物を祭壇へ備える。
「あれ、毛むくじゃらのオヤツだよね」
「ああ、バッヘルムの骨だ」
「えっと、俺たちに倣って、お供えをしたとか?」
うちの従魔たち、可愛すぎでしょう!
『わふっ』
『ホッホー』
振り返ってドヤ顔の二人を見て、アリオスもバートも、もちろん私も声を出して笑った。
「二人ともえらいね きっと精霊さまたちも喜んでくれるよ」
従魔二人に抱きついて、私たちは頬を寄せ合った。
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次回予告 礼儀と幸運と私




