38 眠れぬ夜と目覚めの朝と打ち合わせ
ジェシカおすすめのテントの中は、思った以上に広く、大人4、5人なら余裕で一晩過ごせそうだ。どうしても、アリオスとバートは、小さなテントで夜を過ごすと言って、こちらのテントには私と毛むくじゃらの二人だけだ。アーくんは、私の従魔だから、別にこっちで良いのにと思うのだけど、それだけは、二人が許してくれなかった。アーくんが、アリオスに悪戯ばかりするからだろうか?
既に寝そべっている毛むくじゃらの側でゴロンと横になる。真っ黒でツヤツヤな毛並みは、アリオスがマメにブラッシングをしているからだろうか?毛むくじゃらの首に両腕を回し、首元に顔を埋めもふもふした毛並みを堪能する。
「毛むくじゃら、お前のご主人さま、凄いね」
平常心のつもりではいるけど、精神的には、まだ興奮状態が続いている。休もうと目を閉じても、未だあの時の光景が鮮明に蘇ってしまう。本日、私の行動は、全てに於いて大失敗だ。一人だけの時と、仲間と一緒の時と、こんなに違うなんて思いもしなかった。
「おはよう……ございます?」
「……おう」
「……うっす」
翌朝、眠れぬ夜を過ごした私は、早めに起きテントから出た。まだ起きてこないアリオスとバートの朝食準備でもしようかな。アーくんが、全て準備してくれていたものなので、私はアイテムボックスから出すだけなんだけどね。
「二人とも 物凄く疲れた顔なんだけど」
「気にするな あれだ な」
「えっと そうだ アル あれだ、あれ」
あれ…って意味わかんないです。アーくんを見るとアーくんもそっと私から視線を逸らす。朝から仲間はずれな感じがして、不安な心が膨れ上がる。
「も、もしかして、昨日私が暴走したから?私は、もう、役に立たない?要らない?」
ローブの裾をぎゅっと握りしめて、溢れそうになる涙を堪える。
「ち、違うぞ アル」
「嬢ちゃん、誤解をすんな、誤解を」
「でも……」
「あれだ、男同士、語り合う必要があったんだ」
「アルが必要ないわけ、ないじゃないか」
アリオスとバートが、肩を組みながら、ぎこちない笑顔を見せる。「男ってね 単純だけど 面倒くさい生き物なのよ」ジェシカの言葉が脳裏に浮かぶ。
「おし、飯だ飯!嬢ちゃん 朝からありがとうな」
「俺、腹減りました 俺の食料も出しますね」
この話は、ここで終わりと打ち切られた気がするけど、これ以上詮索は、してくれるなと言うこと何だろうか?
「今度、ジェシカさんに聞いてみる」
私の独り言を拾い上げたアリオスが、それだけは、絶対にやめてくれと懇願されてしまった。
朝食を食べ終えた後、私たちは、地下7階層の地図を広げ、今日の行程について打ち合わせを始めた。何度も潜っていると言うだけあって、バートの持ってきた地図は、とても緻密だ。
「へえ、よく出来てんな マッピングの基本をしっかりと押さえている 嬢ちゃん、しっかりと勉強させてもらえ」
アリオスが褒めるとは、よほど精度の高い仕上がり何だろう。聞けば全階層の地図を作っているとのこと。冒険者は、いつでも生と死が隣り合わせの職業だ。些細な積み重ねが、生存率を向上させる。昨日の私とは大違いだ。
「嬢ちゃん 視野を広く あらゆる可能性を考えろ 先行は、仲間の命を預けられてるんだ 昨日のことでわかっただろう」
「はい」
「なら良い それを踏まえて打ち合わせをしていこう」
大きな手のひらで、頭を撫でられる。少しくすぐったくて、嬉しくて、今日も頑張ろうと思った。
「ここの採取ポイントが今日の目的地です」
「ここは?」
「ストロンチウム、ナトリウム、銅、バリウム、リチウム、カリウム、炎症反応を構築するための金属が多く含まれた鉱石が採取できるんだ」
「専門的過ぎて解らん」
「これと掛け合わせて、品評会に出品する物を作ろうかと考えてるんで」
ぽとんと私たちの目の前に置かれたのは、昨日バートがジュレルの丘から土竜の巣まで、道すがら拾い集めていたフラムの実だ。
「フラムだよね」
「ああ、投げるとバンって大きな音を出して爆発する」
フラムは、別名『癇癪玉』と呼ばれる木の実だ。叩きつけるように投げつけると、大きな音を出して爆発する。威力こそないが、音に敏感な魔物には、陽動させるのに効果的なアイテムでもある。
「昨日、アルとアリオスを見て、思いついたんだ」
「笑顔になるもの?」
「そうだ!協力してくれるか?」
何を作るのか?と尋ねてみても、バートは、お楽しみだと教えてくれない。アリオスが何か知っているのかと思い、視線を送ってみたが、肩を竦めるだけだった。
「俺は、お前も笑顔にしたいんだ」
そんな事を言われ、ちょっぴり恥ずかしい気持ちになってしまった。
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