37 テントと食事と反省会
小さい。絶対に狭いってば、バートのテント。セーフティエリアに並べて設置した二つのテント。明らかに大きさが異なる。アリオスもバートもどちらも体格は、そこそこ大きい。なのに、小さなテントで二人とも夜を明かすのだと譲らない。
「せめて、私がバートのテントを使うから、二人は大きい私のテントを使ったら?」
「それは、やめてくれ 男臭いテントにアルを放り込むわけにはいかん」
「テントが臭い?」
どう見ても普通のテント見えるけどね。私だって、今でこそ新人冒険者として扱ってくれてるけど、幼い頃から冒険者として生活してきた。臭い、寒い、危ないなどの経験はしこたましてきている。今更、多少の臭いくらいは、平気なんだけど、バートはどうしてもダメだと言い張った。
「じゃあ、師匠だけでも……」
一緒に住んでいるんだし、同じテントで夜を過ごすことくらい平気だよねって聞いたら、バートが物凄い勢いでアリオスに食いつき始めた。
「どういうことっすか!アルと毎晩……まさか!」
「アル!余計なことは言うな バート!お前も変な想像するな!同じ家に住んでいるだけだ!部屋は別々!何もないし、してもいねえ!」
「え? アリオスさん ヘタレですか あれだけ見せつけておいて」
「バッ!バカヤロウ そんなんじゃねえ ただの師弟関係だ!」
何だろう、この置いてけぼり感。私とアリオスは、師弟関係でしかないのにね。見せつけるも何も、暴走した私を諌めてくれただけじゃんか。もう、めんどくさいから、アーくんの作ってくれたお弁当でも食べよう。
喧しいアリオスとバートをほっといて、アイテムボックスからアーくんの作ってくれたお弁当を取り出す。コカトリスのもも肉を焼き、甘辛い照り焼きソースで絡めてふわふわパンに挟んだボリューム満点なサンドイッチだ。ウォーターボールで汚れた手をしっかり洗い、いざ実食。
「うんまーい 甘辛いソースが絶妙だよ アーくん」
『ホッホー』
シャキシャキするレンタースの葉が、いい仕事をしてますね。シャクシャク、モグモグと咀嚼しながら、アーくんお手製のサンドイッチを堪能する。
「おい、何呑気に一人で飯を食ってんだ?」
「俺たちの苦労、何もわかってないっすよ」
「えっと……食べる?」
一応二人のお弁当もあるわけで、アーくんのお手製サンドイッチを差し出すと、盛大にため息を吐かれた後、無言でサンドイッチを受け取った。
「嬢ちゃん どうしてトラップを踏み抜いて行ったんだ?」
「先行とは、チームを危険に晒さない そのための役割だと思ったから」
「そうだ、先行は、あらゆる危機察知を事前に回避するために魔物の気配や位置を察知し把握した上でチームに指示を出したり、トラップの仕掛けを看破し、仲間を守る重要な役割だ」
ジュレルの丘から土竜の巣まで先導していたアリオスを思い起こす。常に私やバートの状況を把握しつつ、周囲の気配を気にかけ、魔物の存在を確認すれば身を潜めるように指示を出したり、極力体力温存を考慮した行動を示していた。
「バート お前もだ チームのペースを全く省みない嬢ちゃんに対して、褒めるだけ褒めやがって なぜ、諌めることをしなかった」
そうだ。先行なんて軽い気持ちで挑めば良いとお気楽な雰囲気で、私の先行を進めたのはバートだ。アリオスの機嫌が悪くなった理由は、全員の命を預かる重要な役割について、私とバートが軽くみ過ぎていたことに対してだったんだ。
「し、師匠 私、トラップは全部突破さえすれば脅威ではないと考えてました」
「俺も…俺も慣れたダンジョンなんで、大したことはないと……考えが浅はかでした」
もし、アーくんがあのまま戻って来なかったら、あれがアーくんでなくて、アリオスだったら……悔しい、自分の不甲斐なさが悔しくて、涙が堪えきれない。
「わかったか アル 俺の元を去っていくのは、まだまだ先だな」
「ハイ 師匠」
「えっと、俺も その、師匠って呼んでもいいっすか?」
「え? ヤダよ」
けんもほろろに弟子入りを却下されるバート。アリオスも錬金術は、専門じゃないしね。勝手に弟子入りを強行してきそうなバートを見て、私は声を出して笑った。
ああ良かった。私は、まだまだ、アリオスの弟子でいていいんだ。
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次回予告 眠れぬ夜と目覚めの朝と打ち合わせ




