35 戦闘と罠と駆け抜ける私
私を先頭にダンジョンの奥へ奥へと歩を進める。私一人であれば、ペース配分など関係なく、思うがままに進んでいくが、今回はアリオスから先行としての役割を言い渡されている。
「前方から複数体 数3 スケルトン来ます」
私の声に合わせて、バートがショートソードを構える。私は、人差し指を前方に突き出しスケルトンが視認できるまで待つ。
「ホーリーランス」
聖属性の光の矢が私の指先から鋭く三射連射される。三体のスケルトンの頭蓋にヘッドショットが決まった。聖属性の効果でスケルトンは、頭蓋から霧のように霧散して消えた。
「ナイスだ アル その調子で行こう」
バートから明るく声をかけられるが、アリオスは一言も言葉をかけてはくれない。この程度は、出来て当然。笑みの奥に潜む厳しい視線が、全てを物語っている。アリオスに無言で頷き、私は前を向いてダンジョンの更に奥へと歩き始めた。
「両サイド 2体ずつ 警戒 コボルト来ます」
「おっし 右は任せろ アル左頼む」
「左了解」
任せろと言うだけあり、バートの動きに無駄はない。右は、バートに任せ、私は左に集中だ。
「ウォーターボール 展開」
コボルトの頭と同じくらいの大きさで、ウォーターボールを作り出す。私たちに向かって走り出したコボルト目がけ、ウォーターボールを動かしていく。
「位置固定 水量調整」
ウォーターボールでコボルトの頭を包み込むと、2体のコボルトが胸を掻きむしるように暴れ出す。目も、鼻も、口も、耳も全てウォーターボールで覆って逃がさない。ガバガバ、ゴボゴボとウォーターボールの中でコボルトたちが溺れていく。どんな大きな巨体の魔物であっても、呼吸が必要な魔物は、ウォーターボール一つで撃退可能だ。
呼吸が出来なくなり、もがきながらコボルトが、1体、また1体と倒れていく。完全に動かなくなってもウォーターボールの解除はせず、右方向を対応しているバートを見る。素早い動きを見せるコボルトの先回りしつつ、脚を中心に攻撃を仕掛けていた。
「ウォーターボール展開」
動きが鈍っているコボルトの頭をウォーターボールで包み込む。ガバババとウォーターボールで溺れていくコボルトたちに、バートがショートソードを突き立ててトドメを刺した。
基本一人で行動している私にとって、今回のように連携しながら魔物と戦うのは、初めてに等しい。アリオスと行動を共にすることは増えたが、アリオスが動くか、私が動くかのどちらかだ。私の依頼であれば、アリオスは基本動くことはない。
「アル フォロー助かる しかし、魔力操作にブレがないな 凄えわ」
ゴクゴクと喉を鳴らしながら水分補給をするバートは、私のフォローを褒めてくれる。嬉しい言葉なのに、何処か引っかかるのは、アリオスが一言も言葉を口にしないからだろうか?
「その先に6階層に続く階段がある 初心者向けは ここまでだ」
「6階層からは、中級者向けだったよね」
「ああ、ここからは、トラップなども設置されているから慎重に進んで行けよ」
慣れ親しんだダンジョンだからだろうか、幾つかの戦闘を終えてもバートは、余裕のある表情を崩さない。だけど、静かなアリオスが私の気持ちを騒つかせる。集中しろ、気を抜くな!私。両頬をパチンと叩き、次の階層へと意識を高めていく。
暫しの休憩を終えた私たちは、下の階層へと階段を降りて行った。
『ホッホー』
地下6階層にて、アーくんが私の肩で小さな声で鳴いた。脚を止め、周囲を見渡すも魔物の気配は感じられない。
「トラップ……」
『ホッホー』
私の呟きを肯定する様にアーくんが、再び鳴いた。強化した視力で、壁や床に視線を送る。不自然に浮いた床を見つけた。周囲の壁には、小さな穴が空いている。
「見つけた!」
勢いよく私は走り出し、思いっきり床を踏み抜いた。瞬時に放たれる数十本の矢が私に迫る。
「アル!」
大きな声でバートが叫ぶ。大丈夫、私には当たらない。背中に隠してある短剣を即座に握りしめ、私は降り注ぐ矢尻を狙って叩き落としていく。いつものように、トラップは、起動させて打ち破れば問題はない。
この先、幾つものトラップが仕掛けられていようとも、全て回避してみせる。
「先のトラップも全て無効化します」
「アル!ちょっと待て」
バートの心配する声に私は、大きく手を振って、答えた。
「安心して、全部解除できるから」
走る私の速度に合わせ、アーくんが翼を羽ばたかせ付いてくる。
「次は、あそこ ワイヤーフック」
張り巡らされた幾つものワイヤーにわざと手や脚をかけて全てのトラップを起動させる。噴射された毒ガスを風魔法で吹き飛ばし、飛び出す毒針は、氷魔法で凍てつかせてから叩き落としていった。
「このエリアも あそこで終わりだね」
最後のエリアは、7階層へ降りる階段の手前だ。このエリアのトラップさえ解除できれば、フロア全体が安全地帯になる。この場所の確保が、今の私のミッションだ。
目の前にある不自然な台座の上のボタン。台座の前で足を止め、右手で思いっきりボタンを押した。
『ホッホー!』
ひときわ大きな声でアーくんが、鳴いた。バサバサ翼を羽ばたかせ勢いよくアーくんが私を突き飛ばした。その場から思いっきり突き飛ばされた私の目に映ったのは、左の翼を振り下ろされた大きな刃物で切り刻まれたアーくんの姿だった。
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次回予告 暴発と悪魔と夜のお供




