30 錬金術師と品評会と私
今まで、「坊主」「坊主」と私の性別を勘違いしていたことを本当に申し訳なく思っているのだろう、青年は、何度も何度も頭を下げる。
「いや、私は、本当に気にしてないし、逆にいつ気づくんだろうとか、気づいたらどんな反応するんだろうとか、悪戯心もあったというか……面白かったんで大丈夫!」
「あぁ、本当に悪かった」
取り敢えず、誤解も解けたし改めて自己紹介でもしておこうか?名乗りと挨拶は、自分から。ジェシカからもコミュニケーションの基本だからとそう教わった。
「はじめまして 私は、アル この街で冒険者をしてます」
「ご丁寧にどうも 俺は、バート 錬金術師だ まあ、冒険者登録もしているが、本業はコッチだ」
「おもちゃのお医者さーん」
「お医者さーん」
「ちげえよ! 錬金術師だよ」
ウーバとイーツに慕われている様子から、いつも壊した玩具を持って来られては、文句言いながらも修理してあげているのだろう。ガシガシと兄弟の頭を撫でるバートの表情は、とっても優しい。兄弟たちは、一騒ぎして満足したのだろう、修理してもらったばかりの玩具を持って、大きく手を振りながら帰っていった。
「この露店の商品って、全部バートさんが作成したの?」
「バートでいいぞ かしこまったのは、苦手だからなぁ アルが言った通り、全部俺の作品なんだけどなぁ」
よくわからない商品がほとんどだけど、ミニチュア人形は、頗る精巧な作りをしているのに、なんだか満足はしていない様子だ。アーくんなんて、いまだに人形に魔力を流して遊んでいる。
「いやな、収穫祭の夜間の部でな、錬金術師の品評会をやるんだけどさぁ、イマイチなんだよ」
「イマイチ?」
イマイチの理由が解らなくて聞き返すと、ばつが悪そうに理由を教えてくれる。
「もちろん、品評会に俺も出すんだけどさ、アイデアが煮詰まっちまってな まだ何も出来てない」
どんと開き直るバート。
「出ないもんは、出ないんだよ 気晴らしに露店を出してみてもさっぱりさ」
いわゆるスランプってことだとケタケタ笑い出した。思い詰めるより、お気楽に構える方が良いとは思うけど、この調子じゃ絶対に品評会には間に合わないと思ってしまう。
「錬金術師の品評会って楽しそうだね」
「おう、すげえ盛り上がるぞ 毎回、コイツらどこでこんな発想出来んだ?って感心しまくってる」
錬金術師たちが、腕を競い合う夢の祭典なのだと教えてもらった。
「ちなみに品評会には、毎回お題が決められてる 今回のお題は【笑顔になる物】だ」
「ほう、それでバートは、今のところ何を出すつもりなの?」
「うっ これ」
言葉に詰まりながらバートが指を差したのは、カラフルな炎を灯すロウソクだ。
「うわぁ イマイチだ」
「言うなよ 判ってんだから」
カラフルなロウソクの炎は、確かに綺麗だろう。明かりを見た人たちも「キレイだね」と感想を言ってくれるかもしれない。だけど、ただのロウソクじゃないか。
「まだミニチュア人形のほうが、笑顔になるよ」
「俺も、今はそう思ってるけど、それじゃあダメなんだよ」
アーくん今も遊んでるくらい面白がってるよ?
「あー 俺じゃあ、あそこまで動かせない」
「え?」
「俺じゃあ、アルやあのフクロウみたいに動かせないんだ」
そう言えば、普通は歩くだけだと言ってたような気がする。
「この人形はな、本物の魔物の核を使ってるだけどな、普通は、こんなふうに歩くだけなんだ」
試しにバートがサイクロプスのミニチュア人形に魔力を流すと、トコトコと台の上を歩くだけだ。私の時には、表情も変わったし、色んな動作もしていたよ。アーくんだって、同様だ。
「俺が思うに、本物を知っているかどうかなんだと思うんだ アル、お前、サイクロプスの本物見たことあるだろ」
一瞬ドキリとした。サイクロプスだけじゃない、グリフォンもサーペントも台の上にある魔物は、全部知っているし、討伐したことがある。
「このサイクロプスやグリフォンとかは、最近ギルドから卸された魔核を使って作ったんだ」
「へーソウナンダ」
心当たりがありすぎて思わず片言になってしまう。その魔物をギルドに買い取ってもらったのは、私なんですとは、絶対に言ってはいけない。
「あのフクロウもアルの従魔だからなぁ 会ったことあるんだろ?」
やだ、もう確定事項になってませんか?
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