29 人形と大運動会と私
面白かったんです。可愛かったんです。興味が湧いちゃったんです。でも、お兄さんも自由に見ていい、触っていいって許可くれましたよね。
台の上では、魔物のミニチュア人形たちの大運動会が、始まっている。私とアーくんが、次から次へとミニチュア人形に魔力を流しまくった結果なんだけどね。グリフォンのミニチュア人形なんか、低空だけど空も飛べちゃうんだよ。他のミニチュア人形だって、どんな動きをするのか気になっちゃうよね。青年が、大きく目を見開いて、ミニチュア人形の大運動会を凝視しているけど、その表情は怒ってるようには見えなかったので、セーフだろうか?
「俺は、歩くくらいの動作しか出来ないと思ってたんだが、魔力の質によって性能が変わる?いや待てよ材料に魔核の欠けらを使用したことが要因……か?」
なんだか、お兄さんは、ぶつぶつとミニチュア人形を手に取って、片手で顎を摩りながら独り言を呟き始めた。その瞳は真剣で、研究者のような表情だ。
「このミニチュア人形は、お兄さんが作ったの?」
「ああ、俺が作った 魔力操作を練習できる子供の玩具だったんだがな」
たしかにこれだけ動けば、子供は大喜びするだろうね。
「坊主、ちょっとこれも魔力流しちゃくれねえか?」
「別に良いけど?」
青年が、ゴソゴソと背後の箱から取り出したのは、サーペントのミニチュア人形だ。ぽとんと手のひらに乗せられると、他のミニチュア人形と同様に私の魔力が吸い取られる。そして、淡く光った後、手のひらでウゴウゴ動き始めた。サーペント種の特徴である長い舌をチョロチョロ出したり、手のひらの上でとぐろを巻いたりしている。うん、ミニチュア人形なら、可愛いかも。
「おお!坊主、すげえな 想定外の動きをしやがる」
青年は、私の手の上のミニチュア人形を上から、下から、右から、左から、ありとあらゆる方向から観察していく。いつか、私の手を捻り出すんじゃないかと思うくらいに真剣なのに、相変わらずの坊主呼び。
「兄ちゃん!兄ちゃん!取りにキタァ」
「取りにキタァ!」
後ろからパタパタと足音が聞こえたので、振り返れば、馴染みのあるウーバとイーツの兄弟が駆け寄ってきた。兄弟は、両親とも仕事があるため、よくギルドに子守の依頼をしてくれる。やんちゃ盛りな元気いっぱいの仲良し兄弟だ。兄のウーバは、面倒見が良く、弟のイーツはいつでも兄の後を追って、真似っこ発言をよくしている。
「おうおう、俺を誰だと思ってんだ?出来たに決まってんじゃねえか」
青年も顔馴染みなのだろう、挨拶もそこそこで兄弟たちに声をかける。
「ほらよ」
先程までガチャガチャ触りまくっていたガラクタらしき物を兄弟に渡した。
「すげー!兄ちゃん ちゃんと直ってる」
「直ってる!」
「どうよ、俺にかかれば、こんなもんよ」
どうやらガラクタだと思っていたのは、兄弟の玩具だったみたいだ。すっかり元通りに戻ったらしい玩具を手に持って「ブーン」とか「どーん」とか言いながら遊び始めた。青年も兄弟が嬉しそうに遊ぶ姿を優しい瞳で見ている。
「あんまり激しくすっと、また壊しちまうぞ」
「ウヘヘ そしたらまた兄ちゃんに直してもらうー」
「もらうー」
「ったく 仕方ねえなあ」
短く刈り上げた赤い髪の後頭部を摩りながら、青年は嬉しそうに笑った。
「ども!」
一息ついた頃合いを見て私は兄弟に声をかける。ウーバもイーツもようやく私が側にいたことに気付いたのか「あー」と二人揃って指を挿してきた。
「アルちゃん、久しぶりー こんにちわー」
「こんにちわー」
「こんにちわ 相変わらず元気いっぱいだね」
両手で兄弟の頭をワシワシ撫でてやると、キャッキャ、キャッキャと大はしゃぎし始める。いつも兄弟だけで遊んでいるからか、誰かに構ってもらうのが大好きなんだよね。
「坊主もこの兄弟と知り合いか?」
「ぼうず?」
「ぼうず?」
見事にオウムのように重ねるね。兄弟が、私の顔を見て不思議そうに首を傾げる。
「アルちゃん、男の子なの?」
「なの?」
「違うよ、私は女の子だよ」
「え?」
初めて青年とまともに目があった気がするね。そんなにびっくりすることですか?私の性別をウーバとイーツから聞いても信じられませんか?
青年は、ばつが悪そうに顔を歪めるとパチンと両手を合わた。
「すまねえ!俺の露店に来る奴は、大抵ガキか男だからよう、てっきり坊主だと思い込んじまったみたいだ」
「いいよ 私もいつ気づくんだろうと黙ってたし」
「本当にすまねえ!作業に集中すると周りが見えなくなるって、いつも注意されてんだけどな」
私にしこたま誤り続ける青年を ウーバとイーツは、「いけないんだぁ」「いけないんだぁ」と青年に指をさしながら揶揄い続けた。
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